それも彼のいいところです
「・・・・もしかして、怒ってる?」
私は、さっきからずっと黙り込んでいる亜修羅が気になって仕方が無かった。もしかしたら、凛達が全部話したかもしれない。それで不機嫌になってるのかもしれないと思ったんだ。
「怒ってない。なんでそんなこと聞くんだよ?」
「えっ?凛達から聞いてないの?」
「何も聞いてない。あいつら、俺達の記憶がない間は子供になっていたという意味のわからないことだけを言って、どっか行った」
「・・・・そうだったんだ」
ほっと胸を撫で下ろす。多分凛達のことだから、私のことを気遣って言わないでくれるかと思ってた。・・・・でも、やっぱりさっきは心配だったんだ。だって、私のせいで子供になっちゃった訳だしね。
しかし、そうして安心出来るのもつかの間。亜修羅に今までどこにいたのかと聞かれて、私は再びドキドキする。
「えっ、えっと・・・・あれから篠崎さんと色々話してたの」
「どこで?」
「うーんと、ちっ、近くの喫茶店?」
私はそう言った直後、まずい!と思った。これは絶対に怒られちゃうだろうなと思った。だって、約束をほっぽりだして、友達と喫茶店に行ってるなんて・・・・物凄く心の広い人じゃなきゃ許してくれないと思う。そして、亜修羅はあんまり心が広くないから・・・・うん。
「俺を置いてか!」
「ああっ、ごめんごめん!ほんと忘れちゃってて・・・・」
「・・・・」
案の定、亜修羅は不機嫌になってしまって、私が慌てて謝ってもぶすっとした顔を崩さない。でも、私は少しだけ嬉しかった。だって、これって、ちょっとした嫉妬ってやつじゃないかなって思ったんだ。でも、怒らせちゃったことは事実だから、とりあえず真剣に謝る。
「ほっ、ほんとにごめんね?」
「・・・・別にいい。もう、怒ってない」
「ほんと?」
「・・・・またやったら怒る」
「やらないからさ?」
「じゃあいい」
ようやく機嫌を戻してもらえたようで、私は安堵のため息をついた。亜修羅はすっごく謎だ。もう何百年と一緒にいるのに、亜修羅のことが全然わからない。同じような状況であっても、こうやって嫉妬してくれる時もあれば、普通に、「別にいい。気にしない」って言われてしまうこともある。そこが難しいんだ。そして、予想が出来ない。だから、いつも戸惑うことになってしまう。
でも、私はそこも好きに思える。だって、いつも冷たいのに、たまに優しくしてくれたりすると、凄く嬉しいんだもん。
「で、これからどうするんだ?もう夕方だぞ?」
「・・・・そうだね。ごめんね、ほんと」
「もういい」
「うん。わかった。あっ、そう言えば、篠崎さん達は?」
「ああ、あいつらなら、さっきもめながら公園を出て行ったぞ。どうやら、女に文句を言いにいくとかどうたらこうたら」
亜修羅のその言葉を聞いて、私は、その様子を見てみたいと思った。覗き見することはいけないことだけど、花恋さんがどんな風に決意を見せるのかを見てみたかったんだ。
「ねぇ、二人の後を追いかけてみようよ?」
「・・・・マジかよ。もう疲れた」
「でも!もうちょっと頑張って!」
「・・・・はぁ。なんでそんなことわざわざ・・・・」
「いいの!」
私はそう無理やり言い聞かせると、亜修羅の腕を引いて公園の外に出た。