思い続ける心、そして何より、諦めない心が大事なのです
「おねえちゃーん!」
「あっ、玲奈!」
「ごめんね、遅くなっちゃって・・・・」
「いいの。二人の分もある?」
「うん、お兄ちゃん達の分もあるよ。こっちの薄茶色いのがお兄ちゃん達のね。それで、このうす紫色のがお姉ちゃん達の。間違えないように飲んでね、それじゃ!」
「あっ、ちょっと玲奈!」
玲奈はそれだけ言うと、私が呼び止めているのが聞こえているのかいないのかわからないような状態で走って行ってしまった。
聞きたいことが色々あった。どうしてそんな人と友達になってるのかとか、危ない人じゃないかとか、とにかく聞きたいことが山積みだった。でも、玲奈は走って行ってしまったんだ。
私は少し不安に思いながらも、とりあえず、みんなのもとに走って行った。とりあえずはみんなの体を元に戻して、それから、瑞人に聞かなきゃいけないこともあるんだ!
「もらって来たよ」
「おおっ!マジですか!えっ、持って来たのは妹さん?」
「そう。友達が作った薬品らしくてね。とりあえず元に戻る薬はもらえたことだから、安心して」
私はそう言って、栞奈さんに紫色の薬を渡す。すると、栞奈さんは少しためらいがちに受け取った。
「どうしたの?」
「うん・・・・どうせなら、もう少しこの体のままでいて、修の気持ちを聞きたかったなって思って」
「・・・・確かにね。私も、あいつの考えが知りたいわ。だってあいつ、あんぽんたんなんだもん。何考えてるのかわからないし、馬鹿だし、女の子が大好きで・・・・」
「うん。でもさ、なぜか、出来るだけ早く元の体に戻った方がいいような気がするんだよね。これはあくまでも私の勘なんだけどさ、あんまり長い間このままの姿でいると、戻れなくなっちゃいそうで・・・・」
「そうね。確かに。それじゃあ、早く元に戻りましょう」
「そうだね」
「あっ、そうだ。この茶色いのは、二人が元に戻れる薬なんだけど、二人に飲ませておいてくれる?」
「わかったよ!有澤君が僕の言うことを聞くかどうかわからないけど、頑張る!任せて!」
「うん。それじゃあ栞奈さん、行こう」
「えっ、どこに行くんですか?」
「二人は事情を知らないから、私たちが急にいたらきっと困惑すると思う。だから、一端ここから出て、偶然を装って出会うわ。じゃあ」
「そう言うことみたいだから、また後でね!」
「はいはい、またね~!」
そう言って見送ってくれる三人にお辞儀をすると、栞奈さんと早足で公園を出る。
「・・・・それにしても、綺麗な色してるね」
「そうね。宝石みたいな色してるわね」
「・・・・反面、もう一つの方の薬はあんまりいい色してなかったね。まるで、酢醤油みたいな色してた」
「うん。そっくり。きっと酢醤油が 入ってるのよ」
「それはないんじゃないかな・・・・」
「ふふっ、そうね。何言ってるんだろうね、私」
「・・・・そう言えば花恋さん、さっき有澤君のケータイを見てから何だか不機嫌そうだったけど、どうかしたの?」
そう栞奈さんに言われて、私は再び思い出す。そして、栞奈さんに相談してみることにした。
「実はね、知らない女からメールが来て、これから会えないかって内容の文面だったの」
「なるほどねぇ・・・・」
「それでね、もし栞奈さんだったらどうする?」
「うーん、私だったら・・・・修になりすましてOKのメール送って会って、相手に宣戦布告して帰って来るかな?」
「そうなの!?」
「うん。ライバルって言うよりは、強気に言って帰って来るって感じかな?恋人がいるとか嘘はつかないけど、とにかく、自分の気持ちがいかに強いかってことや、負けないって気持ちを伝えるの。もし、相手の気持ちが本当だったら、自分も負けじと言い返してくるだろうし、もし、そんなに気がなければ、諦めちゃうと思う。その反応で、相手がどれほど強い気持ちを持ってるのかって試してる」
「・・・・そうなんだ」
私は、栞奈さんの気迫に気圧されそうになった。そして、それだけ修さんのことが好きなんだなってことがとてもよく伝わった。私が宣戦布告をされている訳でもないのに、そんなような気になって来る。
「・・・・まぁ、私の場合、長かったからね」
「何が?」
「うーん、なんて言えばいいのかな~。私は、小さい頃からずっと修が好きだったんだけど、修は他に好きな人がいて・・・・片思いだった。それを・・・・多分、100年以上は続けたと思うよ。だから私は、誰にも負けない自信がある。絶対に」
「・・・・そっか」
「ただでさえ寄ってくる子は多かったしね。だから、花恋さんの気持ちも痛いほどわかる。だけど、そう言う人を思い続けるには、強い心を持ち続けることしかないんだよね・・・・。だけど、それだとやっぱり辛いから、そんな風に相手に自分の気持ちがいかに強いかって言うことを伝えて、退いてもらうことも大事だと思う」
「・・・・わかった。私、宣戦布告して来る」
「うん、その意気だよ!『絶対負けない!』って強く思えば、きっと叶うだろうからさ!」
「わかった、ありがとね」
私はそう言うと、玲奈から受け取った薬を飲み込んだ。その途端、目を覆うほどの光がさして、私は目をつぶる。そして、光が止んでから目を開けると、視線はいつもの高さになっていた。
「よしっ!」
「ほっ、ほんとに元に戻れたね・・・・」
「うん。じゃあ私、瑞人のところに行くから、栞奈さんも頑張ってね!」
「あっ、うん・・・・頑張って!」
まだ薬を飲んでいないから、小さな体のまま見送ってくれる栞奈さんに手を振ると、私は決意を固めて、瑞人達のいるところに向かって歩き出した。