人のプライベートスペースは勝手に見ちゃいけません
「着いた着いた~!あーっ、疲れた・・・・」
「疲れるほど歩いてないんじゃない?」
「気疲れってやつよ!」
「ええーっ、どちらかと言うと、私の方が・・・・」
「何?」
「なんでもない!」
「あっ、そうだ!私さ、あのお菓子食べたいんだけど、まだある?」
「あっ、この前食べた和菓子?」
「そうそう!綺麗だし美味しいからさ。確かあれ、ここじゃ売ってないんだっけ?」
「うん。親戚のおばさんが来た時に持って来てくれてね、こっちでは売ってないみたい」
「そっか・・・・それは残念だなぁ・・・・」
美香はそう言いながら、私の勉強机の引き出しを開け始めた為、私は慌ててそれを阻止する。よりにもよって、一番見られてはいけないところなのに・・・・。
「えっとさ、何やってるの?」
「え?引き出しを開けようかな~って」
「そうじゃないでしょ!もう!勝手に机の引き出し開けないでよ!」
「どうして?」
「見られちゃいけないものが入ってるの!」
そう正直に言ってしまった自分を私は思い切り責めた。嘘をつくのは物凄く苦手な性質の人間だけど、ここまで素直に白状するとは自分でもびっくりだ。
出来れば聞き逃してくれていたらいいなぁ~と思いながら、チラッと美香達の方を向くと、三人はとても楽しそうに満面の笑みを浮かべていて、私は深いため息をついた。こればっかりは、自分が悪いとしか言いようがない。誰かのせいにしようとしても、それすら出来る余地がないもん。
「・・・・見られちゃいけないものって・・・・何?」
「えっ!?えっと・・・・とっ、友達と撮ったプリクラだよ!」
「嘘!そこまで必死に隠そうとするようなものには思えないし、見られちゃいけないってことは知られたくないはずだから、素直に白状するのはおかしい!」
「うっ・・・・」
優奈の言葉は最もで、私はそれ以上何も言えなくなる。・・・・でも、絶対見られたくない。
「見せなさい!」
「ダメ!人権があるから!」
「どっ、どう言う意味なのかさっぱりわからないんだけど・・・・」
「とにかくダメ!絶対絶対、ぜーったいダメ!」
「・・・・珍しく友美が強い口調だね」
「そうね。よっぽど見られたくないものなのね」
「それじゃあ、無理に見るのは悪いか」
三人がそう小声で会話しているのが聞こえて、私はゆっくりと首を縦に振った。ようやくわかってくれたのかと思って、私は嬉しかったんだ。
「わかった。もう開けようとはしないからさ」
「そっか、よかった」
「うん。あっ、そうだ。喉が渇いちゃったんだけど・・・・」
「あっ、じゃあ、今何か持ってくるね!」
私はそう言うと、急いで階段を下りて行って紅茶をいれると、こぼさないように慎重に階段を上って来た。
「遅くなってごめんね、慎重に上って来たら・・・・」
そう言ってドアを開けた途端、私はおぼんを落としそうになった。だって、美香達が私の引き出しを開けて、中を見ていたんだもん。
「ちょっ、ちょっと!何やってるの!!」
「あっ・・・・」
「酷い・・・・」
「とりあえず、閉めて!」
私は何とかお盆を床に置くと、固まっている三人の間から手を入れて引き出しを閉めた。
「今ここで見たことは内緒ね!」
「うっ、うん・・・・」
「絶対誰にも言わないこと!いい?」
「わっ、わかったって」
「うん、それならよかった」
私がそう言ってみんなに紅茶を配っていた時、今までずっと鳴らなかった私のケータイが鳴り出して、三人の興味は引き出しから私のケータイへと変わる。
「伊織君から!?」
「うっ、うん・・・・」
「見せて見せて!」
「えーっ・・・・」
私は何だか嫌な予感しかしなかった。と言うのも、小さくなった伊織君は、私に敬語を使ってた。だから、メールの文面も敬語のような気がしてならなかった。それだと色々ややこしくなるから、見せたくなかったんだけど・・・・。
そう思いながらもメールを開いてみる。
「えーっと、『どなたか存じませんが、僕は違います。失礼しました』・・・・って、何これ?」
「わっ、わからない・・・・」
「暗号?」
「じゃないんじゃない?」
「・・・・返信したら?」
「うっ、うん・・・・」
優奈達に言われて戸惑いながらうなずくものの、なんて返信したらいいのかわからなくて、とても困る羽目になった。