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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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休憩タイム 何だかんだでデパートへ

「ねぇ、僕決めたさ。自分の正体も見せないし、亜修羅にも言わさない。あやふやなままで終わらせるだ」

「おい、話し方がおかしいぞ。普通、『ねぇ、僕決めたよ。自分の正体も見せないし、亜修羅にも言わせない。あやふやなままで終わらせるよ』だろ?」


「実はさ、考えてた時に本を見つけてさ。その本の通りにやろうと思う。それでさ、主人公が変な話し方で。うつっちゃっただけだよ」

「あやふやなままって何をするんだ?」

「まずは、とにかく高い建物のある場所に呼ぶ。僕は、二階からバイオリンを弾く。それで終了」


「いいのか?そんなんで」

「うん、大丈夫。僕も、そんな凝ったこと出来ないしさ」


きっと一睡もしていなかったのか、俺に言葉を伝えた途端、バタリと倒れるように眠ってしまった。決め方はあまりにも単純すぎるが、凛にはそれが精一杯なんだろう。


「簡単に決めすぎだ」


死んだように動かない凛を小突く。しかし、全く凛は動じない。


ため息をつくと、取りあえず布団を畳む。それから、何をしようかと考えながら、窓の外を覗く。大して変わった物はない。


凛の言っていた本ってなんだろうと思ったけれど、大して気にしないことにした。しかし、そうすると、することがなくなってしまう。


何かないかと窓の外をチラチラと見ていると、コンビニを発見した。そのコンビニをジッと見ていると、扉から慌てて逃げる奴が見えた。その後ろから、店員が走って追いかけている。きっと、万引きか。


することもないから、近くにあったペットボトルを犯人の走路に向かって投げた。そのペットボトルは犯人の走路に見事転がって行き、犯人がずっこける。店員は、見事にそれを捕まえ、ペットボトルが飛んで来た俺の方向を見てお辞儀をした。


一安心した様子で犯人をコンビニに連れ入る店員を眺めながら、そのままボーッとしていると、不意に肩を叩かれた。


「あのさ、今日は学校行かなくていいよね?ちょっと休憩しようよ。僕さ、冥道から帰って来てから、全然息抜きしてないのを思い出してさ。ショッピングに行こうよ」

「ああ、俺はいいけどな。つーか、お前は女か?その発想は?」


「ショッピングの後は、ゲーセンに行って遊ぶんだよ」

「誰の金を使うんだ?」


大体と言うか、絶対俺の金だろうなとわかっていたが、一応聞いてみた。


「決まってるじゃないか!」

「人の金を使うのに、当たり前とか言うな!まぁ、いいか。今日ぐらいは」

「やった!桜っちに教えて来よう!」

「おい、待て!金は温存しとくのが一番なんだぞ!」


俺の言葉は、むなしくも凛のバタンというドアを閉める音にかき消された。


しかし、すぐに凛が桜木を連れて入って来る。


「それじゃあ、早速行こう!」

「おい、まだ六時だぞ。どこの店も開いてないはずだぞ」

「いいの、電車で都心まで行くんだから。こんな山奥から行ったら足りないぐらいだよ」


凛に速く速くとうるさいくらいに急かされ、何とか着替えが終わったかと思ったら、今度はそのまま外に連れ出されそうになる。


「おい、ちょっと待て、外で待ってろ!」

「わかった、三秒だけ待ってあげる」


朝だと言うのに、大声で三秒を数える凛。恥ずかしくなって、二秒で何とか全てを終わらせた。


「じゃっ、行こう!」


ドアから出て来た途端、階段の方向に引き摺り下ろされる俺って・・・・。


「おい、買い物ってどれくらいかかるんだ?」

「知らないよ。僕だって、そんなこと知らないし、お金を払ってるところも見たことないもん」


「多分、そんなにかからないと思いますけど・・・・」

「取りあえず、十万持って来たが・・・・」


俺の言葉に、目を丸くして驚いた後、異常なぐらいに肩をグラグラと揺すって来る桜木。言葉すら出ないのか、口をパクパクさせるだけで、何も聞こえない。


「そっ、そっ、そっ、そっ・・・・そんな大金、持って来ちゃいけませんよ!!!?」


珍しくも、町中に響き渡るような大絶叫を起こす桜木。俺は、何とか耳を塞いだが、凛は間に合わず、気絶をした。それほど桜木の声がデカかったんだ。


「大金じゃない。家にはまだあるから大丈夫だ」

「そう言う問題じゃありませんよ。そんなこと知られたら、変な人に絡まれちゃいます」

「大丈夫だ、殴ればいい」


俺はそう言いながら、凛を起こすために叩く。三発叩いたところで、やっと目を覚ました。


「ああ、びっくりした。どうしたのさ、桜っち。あんな大声を出して」

「だって凛君、修さんが・・・・」

「まぁ、そんなことはどうでもいいや。行こうよ、今すぐ」


さっきまで倒れていた人間とは思えないスピードで立ち上がると、駅に向かう。よっぽど早く行きたいらしい。もの凄い勢いだ。


何とか駅に着き、都会へ行く方向の電車に乗る。ただでさえ、かなり田舎の方なのに、時間も早いから、車両には、俺達以外誰も乗っていなかった。


「うわぁ、誰もいないよ。貸しきり電車だぁ~♪」

「何だか、気持ちがいいですねぇ」


凛は、電車の座席に横になりながら、窓の外を見ている。(足も全部座席に乗せている)


桜木は、椅子に座っておとなしくしている。


俺は、がら空きで席が空いているけれど、座らずに、立って吊革につかまっていた。


「ああ、くつろげる~」

「お前はくつろぎすぎだ。いい加減人が・・・・」


大分都会に近づいて来たと思った。いつ人が入って来てもおかしくないところまで来ている。


そう思ってた時に、人が入って来た。その時の凛の過敏な動きと言ったら、ビデオに収めて置きたいほどだった。


ドアが開いて、人の話し声が聞こえた途端、瞬時に普通に座ったんだ。


「亜修羅、桜っち。こっち!」

「なっ、なんだ!?」


凛に腕を引っ張られ、座席に無理矢理座らされる。


「何だよ」

「だって、乗客が来たから」

「んなこと言ったって、俺と桜木はちゃんとしてたんだから、座席に座らされる義理はないぞ」


「だってさ、一応乗って来たのが女の子だし・・・・。それに、何だか落ち着かないからさ」

「俺は、こっちの方が落ち着かないと思うけどな」


と言うのも、凛の両隣には、座席に一つの余裕もなく、俺と桜木がいる。こっちの方が明らかに落ち着かないと思うのは、俺だけなのか?


それにしても、凛がそう言うことを意識していることは初めて知った。ただバカみたいにふざけているだけかと思っていた。


都会に近づくにつれ、段々と人が乗って来て、下りる駅に着いた時には、最初はガラガラだった車内はラッシュ状態になっている。


「次の駅で降りるからな」

「わかってるよ。でも、降りれるかな?人が多過ぎて、降りれなかったらどうしよう?」

「そっ、そうですね。そこが心配です」

「なら、もう降りる準備をすればいいだろう」


ウダウダ心配だどうのこうの言っている間に、人をかき分けてドアの付近に行けばいい。そうしたら、絶対大丈夫なはずだ。


凛と桜木の腕を引いて、上手く人の間をすり抜け、ドアの前に立つ。


と、同時にドアが開く。


すると、後ろから思い切り押されて、ホームに押し流される。そのまま、流れに押されて階段を下りて行く。


「うわぁ、なっ、流れに押される!」

「取りあえず、南口から出るぞ!!」


お互いのことを考えている余裕もなく、とりあえず、近くに見えた南口から外に出る。


それから、みんながいるか確認をする。


何とか人にもみくちゃにされながらも、全員無事に出てこられたようだ。


「それにしても、凄い人だね」

「ああ、俺もここまでは想像していなかった」

「そうですね、人の熱気に押しつぶされそうです」


桜木の言葉は最もだと思った。


さすがは都会。高い建物が密集しているし、人の勢いで押しつぶされそうだ。


「取りあえず、どこに行きたかったんだ?」

「・・・・デパートに行きたい」

「でも、デパートって凄く数が多いぞ」


近くにあった案内板をみただけでも、三個もデパートがある。その中で一番近いのは、後ろを振り向けば入り口が見えるぐらいだ。


「じゃあ、一番近いところでいいや」

「じゃあ、あっちだな」


真後ろのデパートに行くには、とても大きな横断歩道を渡らなくてはいけない。


しかし、あんな大きな横断歩道を見たことがない。さすが都会・・・・なのか?


大きな横断歩道を大勢の人にまぎれて渡る。やっぱりこうして見ると、都会は流行の最先端の変わりに、田舎は遅れている。何だか、俺らの洋服が浮いて見える。


しかし、そんなのはあまり気にしない。ただ、少し浮いて見えると思っただけだ。


大きな横断歩道を渡り、またまた大きなデパートの自動ドアの中に入り、案内板を見る。


色んなコーナーがあるけれど、凛がどこに行きたいと言い出すのか、俺には全くわからなかった。


「どこへ行きたい?」

「取りあえず、二階から全部見て行こうよ」

「全部回りきるのは大変だし、時間がかかるぞ?」

「まぁ、いいの。じゃあ、まずは二階からゴー!」


近くにエレベーターがあるのに、態々階段で二階に上って行くのはどうかと思ったが、取りあえず、凛に付き合うことにした。


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