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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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投げやりにもほどがあります

「聖夜君!」

「なんだ!僕は今忙しいんだ!」

「えっと・・・・ここに来た目的!」


私が何とかそう言うと、今まで険しかった聖夜君の表情がフッといつもどおりに戻って、ポンと手を叩いた。


「そうだ。僕は哉代を蹴る目的でここに来たんじゃない。薬品をもらいに来たんだ」

「おっ、そっ、そうやったなぁ・・・・」

「命拾いしたな。続きは次に持ち越しだぞ」


「それ、結局命拾いしてないと思うんじゃ」

「そう言うことだ。じゃあ、Q157のスリーFと、CIOの976と、酢醤油をくれ」

「ああ、はいはい」


聖夜君と赤槻さんは、まじめな顔でそんなやり取りをしてたけど、私は困惑した。聖夜君が頼んだ薬品の名前がおかしい・・・・。


最初の二つは、なんとなくわか・・・・る。うん、わからないけど、ありそうではある。でも、最後の酢醤油って言うのは・・・・ない。限りなくないと思う。そもそも、酢醤油って、調味料じゃ・・・・。


「せっ、聖夜君?」

「ん?なんだ?」

「さっきの酢醤油って、あの酢醤油?」

「酢醤油は、酢醤油以外のなにものでもないだろ?大丈夫か?」


聖夜君の返しに、「確かに」とうなずきたいところだけど、うなずくことが出来ない。だって、普通は確認したくなるよね?酢醤油って・・・・あの酢醤油ですかって・・・・。


「うっ、うん、そうだよね」


私は何とか笑いながら言うけれど、赤槻さんの出て行った扉をジーッと見ていた。戻って来た赤槻さんがどんなものを持っているのか見たかった・・・・と言うか、酢醤油の正体を知りたかった。


もしかしたら、酢醤油と言う名前の薬品かもしれない・・・・と考えられなくもないけど、可能性は限りなく0に近い。でも、酢醤油を薬品に混ぜる可能性も、限りなく0に近い。どっちの可能性も全くありえないように思えるから、物凄く真実が知りたくなる。


どちらが正しいのかとわくわくしながら赤槻さんが戻って来るのを待っている・・・・けど、赤槻さんは中々帰って来なかった。私が楽しみに待ってたから、なおさら長く感じたのかもしれないけど、5分ぐらい経っても戻って来なくてそろそろ聖夜君がイライラし始めた時、ようやく赤槻さんが戻って来た。


その手には、緑色の薬品と、赤色の薬品。そして・・・・酢醤油と丁寧な字のラベルが張ってある茶色い液体・・・・。


「ほれ、もって来てやったぞ。酢醤油も」

「うん。ありがとう。これが礼だ」


そう言って聖夜君が差し出した封筒の厚さに私は驚いたけれど、それよりも、酢醤油の方が気になった。あの封筒の中身がどれぐらいなのかとかも気になったけど、酢醤油の方が、今の私にとっては気になるんだもん。


「あの、この酢醤油って・・・・あの酢醤油ですか?」

「ん?あの酢醤油?そうじゃと思うけど・・・・」

「・・・・やっぱり」


「おっ、そうじゃ。これ。メロンシロップ。使うじゃろ?」

「ああ、そうだった。すまないな、ちょっと忘れてた」

「・・・・メロンシロップ?」


私はもう頭が混乱して倒れそうだった。さっきは話が流れちゃったけど、もっとちゃんと酢醤油とかメロンシロップとかの意味を知らないとダメだ!


自分でも言ってることがめちゃくちゃなのはわかってる。でも、それは頭が混乱してるせいなんだ!


「あの!」

「今度はなんだ?」

「メロンシロップと酢醤油のこと、教えてください!」


私がそう言うと、二人は顔を見合わせて不思議な顔をしたけれど、直ぐに何かに気づいたのか、ゆっくりうなずいた。


「それじゃあ、まず酢醤油のことから説明しよう。酢醤油は酢醤油。これは、あの調味料として使われる酢醤油だ」


「ほっ、ほんとにあの?」

「うん。理由はちゃんとある。酢醤油がなければ、あの薬品は作れない」


そう言われて、私はどれほど酢醤油の必要性があるのか、尚更気になる。酢醤油は薬品じゃない。調味料だ。だけど、もしかしたら、何か凄い効果を生み出すことが出来るのかもしれないと思って、期待して聞いてみる。


「どんな役目を果たしてるの?酢醤油は」


そんな私の問いに、聖夜君はとても簡単に、且つわかりやすく答えてくれた。・・・・うん、それじゃあ、一端ここでクイズ。聖夜君は、一体なんと言ったでしょうか。


①「味付けだ」

②「薬品のつなぎ役をしている」

③「酢醤油を混ぜると色合いが綺麗になるから」














さぁ、それでは答えに行ってみましょう!


「味付けだ」


そう!①を選んだみんな!正解だよ!


私はそう心の中で言った後、体から力が抜けた。誰に向かってクイズを出してるのかわからない。うん、そもそも、どうして味付け?


「味付けって・・・・そのまま?」

「そう。調味料なんだから、味付けに使うに決まってるだろ?」

「・・・・うっ、うん」


私は何とか戸惑いながらうなずいた。でも、納得なんか出来ない。でも、聖夜君の顔を見ると、ジョークを言っているようには見えないから、嘘をついてる訳じゃないんだろうけど、やっぱり納得がいかない。だって・・・・薬品に味付けなんて、必要ないんじゃないかな?


「そっ、それじゃあ、メロンシロップは?」

「ああ、それはな。本物じゃないぞ」

「・・・・え?」


私がそう聞き返すと、今までずっと黙ってた赤槻さんが何だか気まずそうにゆっくりと手を上げたから、何か悪いことでも聞いちゃったかなと思って、私はちょっと申し訳ない気持ちになる。


「その名前をつける由来になったのは、俺。うん、と言うか、俺がつけてやった」


「・・・・と言うことは、メロンシロップって名前だけど、本物のメロンシロップじゃないんですね?」


「ん。話をすると長くなるんやけど・・・・ある晴れた夏の日。ここは冷房がなく熱くて、俺は寝苦しくて目が覚めた・・・・」


「完結的にまとめろ!」

「で、メロンソーダとなりました」

「えっ!?メロンソーダ??」

「あっ、違う。メロンシロップとなりました」


赤槻さんはそう言うと、フラフラ~とよろけながらパソコンの前の机に座ったから、私は続きが気になる。なんでメロンシロップってなったのかと言うところが気になるんだもん・・・・。


「自分で考えるんじゃ。今の話を聞いて、なんとなく推理。そして、答えが出たら、それが答えじゃ」


「えっ!?」

「と言うことで、急いでるんじゃろ?」


「うん。そう言う訳だから、メロンシロップの経緯は自分で推理しろ。それじゃあ、行くぞ」


「えっ、あっ!?」


私は、何だかよくわからないまま聖夜君に腕を引っ張られて、赤槻さん達と別れることになった。


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