逆恨みとは多いものです
「え~と、じゃあまず、二人はどうして縮んじゃったのかな?その原因を突き止めなきゃ」
「えっと、私達は・・・・何だか不思議な研究者の人に薬を飲まされて・・・・」
「ええっ!?なんで飲んじゃったのさ?」
「えっ、えっと・・・・まぁ、色々事情があって、かくかくしかじか・・・・」
「じっ、事情が全く読めないんですけど・・・・」
「まぁ・・・・とりあえず、なんかあったんだろうな。なんとなくわかるけど」
「えっ!?なっ、なんで!?」
「ん?色々事情があって、かくかくしかじか・・・・で、わかるだろ?」
「わかるわけないでしょ!」
そんな風に何だか仲がよさそうに話している四人から離れた場所で、私はその会話を聞いていた。話を聞いている限りは凄く仲がよさそうで、羨ましい・・・・と思う。
・・・・うん。なんとなくわかるだろうけど、私は友達が少ない。うん、友達と呼べる子は、栞奈さんぐらいしか・・・・ううん、栞奈さんもどうかわからないけど、とにかく少ない。
・・・・まぁ、原因は、私の口調の冷たさなんだと思うんだけど、変に逆恨みをされることが多い。この間も、全く覚えがないのにいちゃもんをつけられて、危うく怪我をさせられるところだったし、上履きの中に画鋲を仕込まれることも多い。ある意味、ほとんどの女の子から逆恨みを買って、いじめに近いことをされる。だから、あまり女の子とは話したくない。
・・・・と言っても、女の子全員がそうしているとは思ってない。少なくとも、石村さんはやってないと思う。理由一。あの子は伊織君が好きみたいで、私を逆恨みする必要がない。その二。そんな性格ではない。そして、一番大きい理由は、普通に話しかけてくる。うん、それが一番の理由。
だから私は、栞奈さんが石村さんに冷たくしているのを見て、少しだけかわいそうに思ったんだ。あの子は、私から見てもいい子だと思う。だって、私みたいに逆恨みされることが多いんだけど、そのことに気づかない・・・・もしくは、気づいても怒らない。色んな意味で、鈍感お人よしって感じ。
だからかわからないけど、私に比べれば、逆恨みされることが少ない。ある意味羨ましいと思う。
「なあなあ、おねーちゃんおねーちゃん」
「何?」
「どうしてそんなにぶーって顔してるんだよ!笑ったらいいのに」
「・・・・」
どうして瑞人にそんなことを言われなきゃならないのかわからないけど、何だか嫌な気持ちになって、私はプイとそっぽを向いてやる。そう言えばこいつは、小さい頃から女の子が好きだった。そう言うところは全然変わってない。
私がそっぽをむいたのが気に食わなかったのか、一緒にいた伊織君の手を引っ張って、私の隣に座った。それを感じて、私は自然とドキドキするのを感じた。相手は子供だとわかっていながら、瑞人だと思うと、もうダメだ・・・・。
私は、自然な様子で瑞人から少しだけ距離を離す。最低でも30cmは間がないと、緊張どころの話じゃない・・・・。
「なんで離れるんだよ!」
「別にいいでしょ!私の勝手!」
「ふっ、二人とも、喧嘩はやめようよ・・・・」
「うるさい!なんかこのおねーちゃん怒ってばっかで、全然優しくない!」
「そうやって女の子のことばっかり考えてるのは大きくなっても変わらないわね」
私がそう言った途端、瑞人はぶすっとした顔のまま黙り込んで、ため息をついた。
「なんだよ、俺の将来知ってるのかよ!」
「知ってるも何も・・・・」
そこまで言った時、もしかしたらこれは言っちゃいけないことなのかなと思って、私は口をつぐんだ。
「なんだよ!ちゃんと言わなきゃわかんない!」
「喧嘩はやめようよ!」
伊織君がそう言いながら私達の間に割り込んだ時、どこからかクラシックの音楽みたいなのが聞こえた。私は不思議に思って首をかしげると、伊織君がびっくりした様子でケータイを出した。
「なんか、これが震えてるんですけど・・・・」
「メール?」
「・・・・わからないですけど、多分そうだと思います」
「えっ!?見せて見せて!」
「えっ!?えっと・・・・」
「よし、凛に相談しよう!」
瑞人はそう言ったかと思ったら、嫌がっている伊織君の手を無理やり引っ張って、栞奈さん達のところに走って行ってしまった。
そんな嵐のように去って行った二人を呆然としながら見ていた時、ふと私は玲奈のことが気になり始めた。朝は色々バタバタしてたから、あんまり話が出来なくて、どこに行くのかを聞いてたのか聞いていないかったのかでよくわからない状況だった。
「・・・・多分、聖夜君のところに行くって言ってたかしら?」
そうつぶやきながら、とりあえず、今どこにいるのかと言う内容のメールを玲奈に送った。