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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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理由がありました

「で、質問って言うのはなんじゃ?」

「えっ、えっと・・・・沢山あるんですけどいいですか?」

「まぁ、今日は休みだから早めに頼もう。俺、やることあるからな」


「そうなんですか?」

「嘘つくな。『今日は暇だ』ってメールを送りつけて来たくせに」

「・・・・それを言っちゃうのは酷いってもんじゃろ」


「逃げるのは気に食わないからな。篠崎の味方をするつもりはないけど、たまには僕以外の人間と交流をさせる為にな」


そんな聖夜君の言葉に赤槻さんはため息をつくと、ゆっくりと起き上がって、テレビの横にあるパソコンのところへと歩いていく。


何をするのかなと思ってワクワクしていると、パソコンの前に置いてある椅子に座ってパソコンを起動した。


「えっ、えっと・・・・話は聞いてくれないんですか?」

「ちゃうちゃう。これでも真面目に話しを聞こうとしとるんじゃ」

「・・・・そうなんですか」


「これは本当だな。こいつ、何もしてないと直ぐ眠くなるから、まともに話を聞くにはパソコンとかの作業をしてなくちゃダメらしい」


「へっ、へぇ・・・・」

「ほれ、話してみ。聞きたいこと」


「はっ、はい。えっと、それじゃあ・・・・赤槻さんは、一体どこ出身なんですか?色々不思議な訛りって言うか、そう言うのがあるので・・・・」


どうしてこれを一番最初に聞いたのか。理由は簡単。一番気になったんだもん。色々浮かんだ疑問の中で一番気になっていて、その答えが早く知りたかったんだ。


「生まれは、アメリカ・ニューヨーク。そこで五歳まで過ごし、英語は話せる。ニューヨークから引っ越した先はフランス。そこではスペイン、フランス語を覚えた。そこも8歳で引越し、香港に11歳までいた。そこでは中国語、韓国語、日本語を覚えた」


「・・・・えっ、えっと・・・・アメリカ出身ですけど、ハーフじゃないですよね?」


「そうそう。でも、なぜか両親は英語で話しかけて来た。だから俺は、12歳になるまで日本人でありながら、日本語を話すことが出来なかった」


「そうだったんですか・・・・」


「そうそう。で、そんな俺が香港にいる時、どうして日本語を覚えたのか。そのきっかけになったのが、近所に住んでた関西弁を話すおばちゃんだ。その人の関西弁を聞いてるうちに、俺は日本語を覚えた・・・・けど、それはあくまで関西弁だから、標準語は話せない」


「・・・・でも、さっき・・・・」


「あれは、ここに引っ越して来てから覚えた。どうも俺は、相手の言葉を聞いたらそれを覚えちゃうらしくてな。よって、色んな方言の人と話すと、その癖がついちゃって、素で話す時、色々とぐちゃぐちゃになるんだ」


「・・・・今は素なんですか?」


私がそう聞くと、今までパソコン画面を眺めていた赤槻さんが椅子をクルリと回し、私の方を向いた。その顔には眼鏡がかけられていて、素じゃないんだなとわかった。


「こうしないと、めんどくさくなって眠ってしまう可能性があるので、眼鏡をかけました。こっちの時は、何時間でも話を聞けるので、どうぞ」


「・・・・さっきの話だと、随分沢山の国の言葉が話せるみたいですけど・・・・」


「そうですね。今ではもう、どこの国の言葉を話せるのかわからないぐらいですかね。城地では私の長所を生かすかのように様々な国の言葉を聞かされましたからね」


「そっ、そうだったんですか・・・・」


とても本当だとは思えないようなことだけど、あの城地の卒業生と言うのだから、本当だと思う。・・・・でも、信じられないような部分もある。聞くだけで、言語を覚えられるなら・・・・。


「記憶力が相当凄いってことですか?」

「どうだろうね。竜に比べれば大したことないですよ。後は?」


「えっ、えっと、それじゃあ、二人はどうやって出会ったんですか?随分と仲がいいみたいですけど・・・・」


私がそう聞くと、今までずっと黙って話を聞いていた聖夜君が焦った様子で立ち上がり、口を開いた。


「僕が説明しよう。元々僕らは接点がなかった。しかし、唯一似ているところが実験好きと言うところで、竜を挟んで知り合った。それは、僕が7歳、哉代が18歳の時だった」


「どうして聖夜君が説明するんですか?」

「お前の説明が長いからだよ!」

「しかし、話すからには事細かく説明した方が・・・・」


そうブツブツぼやいている赤槻さんの方をチラッと見ながら、聖夜君が小さな声で私に話しかける。


「・・・・あいつの切り替え、最初はON・OFFを切り替えてるだけかと思ったんだが、段々二重人格に見えて来てな。篠崎もそう思わないか?」


「たっ、確かに、正反対の性格っぽいよね・・・・」

「うん。だから、最近はそこが心配だ」

「・・・・何コソコソ話してるんですか」

「・・・・」


「えっ、えっと、そっ、それじゃあ・・・・あっ、あれ!あのワンちゃんのことについて聞きたいんですけど!」


私がそう言った途端、今まで少々顔を引きつらせていた聖夜君の表情が輝き出して、小さく親指を立てる。


「あいつはえーじゃんのことを聞かれると機嫌がよくなるからな。ナイス判断だ、篠崎。助かったぞ」


「うっ、うん!」


何だかよくわからないまま聖夜君に褒められて、私は戸惑った。だって、聖夜君に褒められたことなんて今まで一度もなかったから、出来ればもう少しちゃんと意味がわかってる状態で褒めてもらって全力で喜びたかった。・・・・でも、それは許されないらしい。


私が褒められたのは、あのワンちゃんのことを赤槻さんに聞いたからだと思うんだけど、さっき、「えーじゃん」とか言ってたような・・・・どう言う意味だろう?


「・・・・えーじゃんのことを知りたいですか?」

「はっ、はい!」

「わかりました。では、もう少し待ってて下さい。そろそろ起きる頃だと思うので」

「・・・・はっ、はい」


どうして、ワンちゃんが起きないと説明しないのかわからないけど、何か理由があるのかもしれないなと思って、素直に待ってることにした。


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