受付ロボット、欲しいと思いますか?
「あのさ、その、アーシャさんって、どんな人なの?」
「どんな人って言われても・・・・実験命って奴で、医者のくせに、僕と同じような研究をよくしてる」
「ええっ!?いっ、医者なのに!?」
「うん。ちなみに言うと、あいつは竜と同じ学校に通ってて、竜とも面識がある。と言うか、あいつに紹介されて、仲良くなったって感じだな」
「りゅっ、竜さんって、そう言えばさっきもあがってた名前だよね・・・・?」
「うん。あいつは城地出の秀才だからな」
そう声色を変えずに言われて、私は聞き逃しそうになったけれど、聖夜君の言葉の意味をもう一度よく考えてみて、そして驚く。
「じょっ、城地!!?」
「うん。アーシャもそこを出た奴だ」
「そっ、そうなんだ・・・・それじゃあやっぱり、頭は凄くいいんだね」
「まあな。ただ、性格が変わってるってだけだろうな」
「どっ、どんな性格なの?」
「うーん、あまり外には出たがらず、病院に住みついてるな」
「いっ、いいの!?」
「ああ。あいつの病院だし、しかも、他の医者も雇わないから完全にあいつ一人の病院で、受付とかは、僕が誕生日プレゼントにあげた受付ロボットに任せてる」
「そっ、そうなんだ・・・・」
この話を聞いてるだけでも不思議な人だって言うのがバリバリ伝わって来る・・・・。でも、それよりも私が反応したのは、誕生日プレゼントのところ。聖夜君から誕生日プレゼントをもらえるなんて、とても羨ましいと思う。・・・・例えそれが、受付ロボットでもね。
「まぁ、普通に病院としてやってる時は普通の人間みたいな演技してるけど、素はよっぽどの変わり者だと僕は思う」
「そっ、そうなんだ・・・・。あっ、あの、そのアーシャさんって言う人はどんな見た目なの?」
「見た目?」
「うん・・・・」
お医者さんをやってるってことは、絶対同年齢ではないことが判明した。でも、まだ色々聞きたいことがあるから、とりあえず聞いてみる。
「長身で黒髪」
「えっ、日本人なの?」
「そうだぞ?まさか、今まで外国人とでも思ってたのか?」
「うっ、うん・・・・」
「まぁ、確かにアーシャって言うぐらいだから、普通はそう勘違いすると思うけど、あいつは日本人だぞ。ちなみに、歳は二十一だ」
「うっ、嘘!?」
私がそう言うと、聖夜君は一瞬顔をしかめて、ため息をついた。
「嘘じゃない。あいつは城地で医学の勉強をしてた。だから、医師免許も早いうちから取れてた」
「そっ、そうなんだ・・・・」
城地のことはあまり知らないから、そう言われてもピンと来ないけれど、これ以上聖夜君の気を悪くさせないように頑張る。
・・・・それにしても、職業は医者で、城地卒業の黒髪で・・・・。考えれば考えるほど何だかソワソワしてくる。もしかして聖夜君、年上の女の人好きなのかもしれない。・・・・十一歳って言うのはそこまで歳が離れてるって訳でもないし・・・・。
「物凄くアーシャに興味を持ってるみたいだな」
「うっ、うん・・・・」
「本当は外で待っててもらうつもりだったが、どうせなら一緒に中に入るか?」
「いいの?」
「ああ。連れだって言えば、多分嫌がらないと思う」
「そっ、そっか・・・・」
「うん。それじゃあ入ろう」
「えっ、どこに入るの?」
「どこって、目の前にあるだろ?」
そう言って聖夜君が指差したのはシャッターの閉まっている極普通の建物で、昭和風の建物の周りにそのシャッターは異様に見える。
「シャッターが閉まってるけど・・・・」
「人と付き合うのがあんまり得意な奴じゃないからな。普段は人が入らないようにしてるんだ」
「えっ、それじゃあお客さんが来ないんじゃ・・・・」
「よく考えてみろ。ここは地下町だ。普通の患者がここから来るわけないだろう。ここに人が訪れることはほとんどないが、訪れた時に、知らない人間が入って来ないようにする為だ。ここから行くと、直接居住スペースを繋がるからな」
「そっ、そうなんだ・・・・」
「うん。じゃあ、行こう」
聖夜君はそう言うと、ポケットから鍵を取り出して、シャッターの鍵を開けると、シャッターを押し上げ、私を中に促す。
「あっ、ありがとう・・・・」
私は、少しだけ身を屈めると、急ぎ足でシャッターの中に入る。それを確認すると、聖夜君もシャッターの内側に入って来て、音を立てないようにシャッターを閉めると、再び鍵を閉めた・・・・と思う。
どうしてそんな曖昧な表現なのか。と言うのも、シャッター内はかなり暗くて、全く何も見えない状態じゃないんだけど、ほとんど何も見えないような状態なんだ。
「まっ、真っ暗だけど・・・・」
「とりあえず、僕についてくればいい」
「まっ、前があんまり見えないんだけど・・・・」
「それじゃあ、服に摑まっててくれ。手は塞がってるから」
「うっ、うん・・・・」
手を繋げることをちょっとだけ期待してたから、がっかりはしたけど、あんまりわがままを言っちゃいけないなと思って、私は白衣の裾を摑んだ。
「それじゃあ歩くけど、足元には気をつけるんだぞ」
「うっ、うん・・・・」
さっき、暗くて見えないと言って聖夜君の白衣を摑んでるんじゃないのかなと内心では思ったけれど、さすがに口には出せず、私は素直にうなずくと、極力足元に気をつけて歩き始めた。