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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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休憩タイム やっぱり、無地のパジャマが一番です・・・・。

次の日の朝は、早くに目が覚めた。まだ、凛は夢の中だ。


しばらくは起き上がってボーッとしていたけれど、時間がもったいないと思って、取りあえず着替えてから外に出ることにした。時間がもったいなくて外に出るのは余り話が通らないが、出て行きたくなったのだ。


まだ朝の四時だから、さすがの凛も起きなかった。そっちの方がうるさく言われなくて済むんだけどな。


鍵を閉めて階段を下り、通りに出たところで知らない女・・・・ではなかった。


昨日、俺の方をじっと見ていた女だった。昨日と同じ、何だか変な洋服を来ている。黒いフリフリの洋服に、クマのぬいぐるみを抱いている。中学生ぐらいなのに、明らかに不自然だ。


そんな変な女が話しかけてきた。


「あなたが、私の運命の人ね」

「・・・・は?」

「前に襲われていたところを助けてくれたでしょ?」

「・・・・?」


こんな女なんか助けた覚えはない。大体、何時の話だ?


「何時の話だ?それは」

「三年前の時よ」

「俺には覚えがない」

「なくても、私にはあるの。ねぇ、覚えてないの?」

「覚えていないもどうもこうも・・・・そんな覚えすらない」


朝早いから、まだ寝ぼけているのかもしれない。きっとそうだ。運命なんか、俺は全く信じないし、そんな運命を感じるような体験すらしたことない。いや、したくない。とにかく、俺はこいつを助けた覚えはないし、会ったのは昨日が初めてのはずだ。


「でも、私は覚えてるの!」

「ああ、そうか。朝早いから寝ぼけてるんじゃないのか?」


俺は簡単にあしらって、さっさと家に戻ろうとすると、その女は瞬時に腕をつかみ、引っ張った。思わず前につんのめりそうになる。


「待って!行かないで!!」

「何だよ、まだ用があるのか?」

「だって、せっかく会えたのに・・・・。これも、神様のお導きだと思うし・・・・」


「だからって、朝から人に纏わりつくな!」

「もう、恥ずかしがっちゃってさ!」


こいつは、凛と同じタイプだと思い、肩を沈める俺。それとは裏腹に、とても朝のテンションとは思えない女。


「取りあえず、俺は帰る!」


女の腕を振り払い、逃げるように家に入り、鍵を閉める。その音に、隣の部屋にいた桜木や、凛がびっくりしてこっちを見る。


「どっ、どうかしましたか?」

「どうしたの?」


桜木の腕を引っ張って部屋の中に引きずり込むと、再び、ドアをガチャンと閉めて、鍵をしっかり閉めてから、二人を部屋のど真ん中に連れ込んだ。


「さっき、外に出たら変な女に運命がどうのこうのとか言われて・・・・」

「そうなの?よかったね・・・・」

「よくない!何だか変な女でな、『助けてくれたの覚えてないの?』とか言われて・・・・。三年前の出来事だって言われても、まだ、俺は人間界にいなかったんだぞ?」


「そうだね。じゃあ、人違いだよ」


そこまで話した時、ドアをドンドン叩く音が聞こえた。それから、声も聞こえる。その声は、今一番聞きたくない声だった。


しかし、凛のバカは、寝ぼけ眼でドアを開けてしまった。そして、その女のことを中に入れる。


・・・・バカ。


「君が修を運命の人だって勘違いした人?」

「修さんって言うのね。私は、舞園望美!よろしくね!!」

「えっとさ、本人は覚えがないらしいんだけど。その時の状況を詳しく教えてあげて」


なぜ恥ずかしがりもせず、パジャマのまま話していられるのか。しかも、悪趣味のパジャマを着て。でも、話を上手く進めてくれることはありがたい。


女の言うことを省略すると、三年前、どこかのホールでいじめられているところを助けてくれたんだそうで、慰める為にバイオリンを弾いてくれたらしい。話を聞く分には、俺よりも凛に近い気がする。しかし、凛にはそんな覚えがないそうで、誰か他の奴じゃないかと言われた。


「あの、取りあえず、修は全く違うと思うので、どうぞお帰り下さい」


凛は、半ば強引にそいつを追い出すと、パンパンと手を叩き、深くため息をついた。


「亜修羅もめんどくさそうな女の子に捕まっちゃったね。きっと、ずっと付きまとって来るよ?」

「俺、もう嫌だ。学校なんか行きたくないぞ」

「それでもダメだよ。ちゃんと学校に行かないと・・・・」


「ああ眠い、俺は寝る。ああ、でもパジャマは洗濯機の中にあるのか」

「じゃあ、僕の貸してあげる」

「ああ、悪いな」


俺は、その時忘れていた。凛のパジャマが悪趣味だったなんて・・・・。


凛から受け取ったパジャマを見て、固まる俺。ニコニコ顔の凛。どんな展開になるのかと楽しそうな桜木。


凛から渡されたパジャマは、薄い黄色い生地に、ひよこが沢山いるパジャマだ。


「あれ?嫌だ?じゃあ、これは?」


どこから取り出したのか、水色の生地の、可愛らしいハムスターが沢山いるパジャマを出す凛。


どっちも嫌だ。絶対に俺はこんなのを着たくはない。


「いや、どちらも遠慮しておく」

「せっかく出したんだからさ、どっちか着てよ。僕的には、桜っちがひよこちゃんで、亜修羅がハムスターの方がいいと思うんだけどな、色的に」

「どっちも嫌だぞ!」

「僕も、これは少し・・・・」


遠慮がちに断る桜木と、全力で断る俺に、凛は無理矢理着せた。桜木は、途中で抵抗をやめたけど、俺は最後までやめなかった。けど、凛の力に負けて、今は、見事にハムスターのパジャマを着ている。何が悲しくて、高校生の男がハムスター柄のパジャマを着なくてはならないのか。


「じゃあ、寝よう。三人で寝れば悪夢も怖くない!」

「学校に行くから、いい加減、元の服を返せ!」

「別に、学校なんかどうでもいいよ。ただ、亜修羅が着たらどうなるかな?と思って。ちょっと小さいか。やっぱり僕のじゃ」

「そんなことはどうでもいい。返せ!」


凛から洋服を奪うとさっさと元の服に着替えて、桜木にも服を渡しそれから布団をたたむ。


凛も起きたのなら、これ以上寝かす必要はない。起こすこっちの身にもなってみろ。大変だぞ。


「あっ、布団!」

「もう、起きたんだろう?なら起きろ!」

「嫌だぁ~~!!まだ眠いもん」


俺が押入れに運び込もうとしている布団に飛びつき、その勢いで思い切り後ろに倒れて、頭を壁にぶつける。


「!?」


柱の角に頭を思い切りぶつけて、思わず顔を歪める。まだマシなところに当たったからいいが、打ち所が悪かったら、きっと死んでいた。


「眠りへの執着心をもう少しなくしたらどうだ?」

「いいの。これは僕のとりえの一つ」


そんなことを言いながら、謝りもしないで、俺から布団を奪い、かけ布団を抱き枕みたいにして眠ってしまった凛に、呆れた眼差しを向けても、本人は無視。と言うか、気づいていない。


「あの、僕・・・・着替えてきますね」


桜木が、自分の服を持って外に出て行く。残されたのは、俺と、熟睡中の凛だけ。いっつも起こすのは俺だ。たまには桜木に起こさせてもいいかもな・・・・。


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