中々上手くいかないものですね
「えっ、あっ、えっと・・・・」
「どっ、どう言うこと?」
私達は、訳もわからずに互いの顔を見ては首をかしげた。目の前にいるのは、惚れ薬を飲んで縮んでしまった亜修羅と有澤君。二人もあまりの出来事に驚いているようで、目をパチパチさせながら呆然としている。
「これ、あの科学者が言うには、惚れ薬なんでしょ?それなのに、どうして姿が縮んでるの?」
「うーん、副作用とか?」
「・・・・凄い副作用ね」
「とっ、とりあえず、二人の意識確認をしてみよう」
「意識確認!?」
「えっと、私達みたいに、見た目は小さくなっちゃったけど、中身は大人のままってこともあるから、それを確かめようと思って・・・・」
そう私が言った時、突然有澤君が「ガオー!」と言ったかと思ったら、素早い動きで机の上に乗って立ち上がる。
「ちょっ、ちょっと、何やってるの!」
「何って、百獣の王だぞ、俺は!ガオー!」
「・・・・子供に戻ってるわね。そっちはどう?」
「うーん」
私は、コーヒーのカップを両手で持っている亜修羅の方をジッと見てみる。そんな私の視線に気づいてるのかいないのかわからないけど、亜修羅は下を向いていた。
「・・・・多分、子供に戻ってるかもしれない。いつもだったら、人の視線に気づいたら睨み返すもん」
「・・・・そう」
篠崎さんがため息交じりに言うのを聞いて、私もため息をつく。ある程度の副作用ならいいかなとは思う。ただ、これじゃあ、副作用どころか、主の性質が変わってるような・・・・。
「おうおう、お前どうしたんだよ、そんなにいじけちゃってさ、下向いて!」
「・・・・」
「無視すんなよ!」
「ごっ、ごめん・・・・」
「・・・・伊織君、性格変わってる?」
「うっ、うん・・・・ちょっとね」
篠崎さんの言葉に私は苦笑いをしながら答える。多分、亜修羅がこの性格ってことは、今の二人は五歳以下の年齢だと思う。亜修羅が今みたいな性格になるには四段階あって、まず一番最初は、今。
凄い弱気で押しに弱い子だった。これは、0歳から5歳まで。
次は、一生懸命強がってるけど、どうも頼りないなって言う性格。この頃からは、私にも反論出来るようになったかな?これが、6歳から10歳まで。
次に、大分性格が今に近付いて来たけど、まだ子供っぽさが残ってたころ。それが、11歳から15歳。
そして最後は、今の性格。実は、結構最近まで、亜修羅は子供っぽさが残ってた子だったんだよね。
「ずっ、随分性格が違うけど、何かあったの?」
「うーん、まぁ、ちょっと色々ね。でも、それよりは前は何もないよ?」
「・・・・どう言うこと?」
「なっ、なんでもない!」
私は慌てて首を振ると、ため息をついた。亜修羅が急に大人っぽくなって冷めてしまったのは、確かあれが起こった次の日からだ。だから、きっと、あれが関係してると思う・・・・。
そう思うと心が苦しくて眉をひそめる。でも、最近になって亜修羅の性格は、また少し変わって来たと思う・・・・ううん、多分、昔の性格に近づいて来てるんだと思う。大人っぽいんじゃなくて、歳相応の元気さを少しずつ取り戻してることに私は気づいた。それは、きっと、凛や明日夏達と出会ったことが影響してるだろうから、三人には感謝を仕切れない。
「有澤君は、元気だよね」
「・・・・そうね。子供の頃に比べて暴れなくなったけど、今も十分子供よ。ハンバーグぐらいで意地になるんだから」
「でっ、でも、それでいいんじゃないかな?子供なんだから、子供らしくて」
「・・・・どうだかね」
そんな素っ気無い篠崎さんの返事に私は肩を竦めると、これからのことを考える。まさか、亜修羅達まで縮んでしまうとは思ってなかったから体を縮めたものの、二人が縮んでしまうってわかってたら、絶対に体を縮めるようなことはしなかった。
・・・・だって、みんなが子供の姿になっちゃうと、行動範囲が狭まっちゃうんだもん。
私がどうしようかなと思っていた時、机の上に置いてあった亜修羅のケータイが鳴りだして、私はドキッとする。ほら、よくあるじゃない。ドラマとかで、恋人のケータイが鳴り、それを見ちゃうと愛人からのメールだったりって言う・・・・。
そう考えて私は慌てて首を振る。私と亜修羅は付き合ってる訳じゃないんだ!だから、もし女の子からメールが来てたとしても、文句を言うことは出来ないし、それに、勝手にケータイを見ることなんて・・・・。
「あっ、あのね、修?」
「・・・・僕、修じゃないよ?亜修羅だよ?」
「えっ、えっと、うん。そうだね。ちょっと聞きたいんだけど、いい?」
「うん」
「ケータイ、見てもいい?」
「・・・・うん」
「ありがとう」
意味のわかっていない亜修羅に確認をとって、それを盾にケータイを見る自分はとても酷い奴だと思う。でも、気になるんだ、亜修羅には色んな女の子が寄って来るから、もしかしたら、電話帳とかに女の子がいるかもしれないし・・・・。
そう考えたら、ケータイを見ざるおえなかったんだ。私の気持ちが・・・・。