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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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手話は、何かと便利です

「後何分ですか?」

「残り、五分です」


「そうですか」


「ちょっとやばいんじゃないか?」

「大丈夫大丈夫。この容器ごと食べることだって出来るよ」


そんな丘本君の言葉に私は小さく首を振りながら、ハラハラしていた。後五分しかないって言うのに、まだ三分の一も残ってるんだもん。


「・・・・大丈夫なのかな?」


「はい、多分・・・・凛君は追い込み型らしいので、残りの一分が勝負だと思うんですけど・・・・」


「おっ、追い込み型って言っても、残り一分でこんなに食べられるの?」

「神羅さんもいますから!」

「うっ、うん・・・・」


私はうなずくと、伊織君達がいるであろう方向を向く。でも、やっぱりその姿は見えない。もしかしたら帰っちゃったのかなとか色々思うけど、丘本君達が食事をしてる状態じゃ帰ることも出来ないし・・・・。


「もし心配なら、メールをしてみてはどうでしょうか?」

「あっ、そうだね・・・・。あっ、でも、まだ返信をもらってないのに、いいのかな?」

「それじゃあ、僕がメールを送りましょうか?」


桜木君に聞かれるけれど、なぜかうなずくことが出来ない。メールを送るのが怖いけど、送りたいって気持ちがあるんだ。だから、桜木君の優しさに素直にうなずくことが出来ないんだと思う・・・・。


「・・・・どうしますか?」

「えっ、えっと、それじゃあ私、頑張ってみようかな」

「そうですか?それじゃあ、頑張って下さい!」

「うん!」


私は大きくうなずくと、ケータイを開く。受信メールはなくて、少しだけがっかりする。もしかしたら、メールが来ていることに気づかなかっただけかもしれないと思ってたから、その分がっかりしたんだ。


でも、こんなことでくじけてちゃいけないと思う。最初の時なんか、話しかけても返事はしてくれないしうざがられるしで最悪だったんだ。うん、マシだ。


そうやってなんとか自分の気持ちを奮い立たせると、メールの文面を考える。もしかしたら怒ってるかもしれないから、一番最初に謝罪の言葉をいれて・・・・。


そこまで考えて、私はどうしようかと首をかしげる。だって、変装までしてバレないように来てるのに、どこにいるのかって聞いたら、怪しまれちゃうんじゃないかって・・・・。


そのことを桜木君に告げると、苦笑いが帰って来た。


「確かにそうですね・・・・どうしましょう?」


「えっ、えっと・・・・そっ、それじゃあ、とりあえず、謝罪のメールだけでも送っておこうかな・・・・」


「うーん、どうしたら・・・・」


私達がそんな会話をしていた時、突然店内全体に光が走って、私や桜木君。それから、パフェを食べていた丘本君達達が目をつぶる。今の説明じゃ、私達だけが目を瞑ったと言うような表現だけど、かなり眩しい光だったから、この店内にいる人全員、みんな目を瞑ったかもしれない。


そんな眩しい光は一瞬だったから、雷のような感じかなと思ったけど、外は晴天ではないものの、雨が降ってる様子はないから、雷じゃないってことはわかる。


「もしかしたらなんですけど、さっきの光、修さん達がいる席の方からじゃなかったですか?」


「えっ、そうなの?」

「はい・・・・ちょっと、様子を見て見ましょうよ?」

「そっ、そうだね、あの・・・・」


私が丘本君達にそのことを告げようと後ろを振り返った時、さっきまで三分の一もあったパフェがなくなっていたことに気づいて驚く。


「えっ、えっ・・・・これ・・・・」

「ね?ちゃんと間に合ったでしょ?」


「うっ、うん、そうだね・・・・」


「じゃ、そう言うことなんで、様子を見に行きましょか」

「うっ、うん・・・・」


丘本君達は、パフェを食べながら私達の会話を聞いていたのか、真っ直ぐに伊織君達がいると思う席の方に歩いて行く。

だけど、私達よりも早くそこに集っていた人達に阻まれて、伊織君達の様子が見えない。さっきの光は店内中に渡ったから、この騒ぎは当たり前と言えば当たり前かもしれない。


「みなさん、落ち着いて下さい!」


どこかで、店員さんらしき人の声が聞こえ、しばらくの間この騒ぎは続いた・・・・けど、数分もすれば、店内にいたお客さんはみんな自分達の席に戻って行った。


「お客様も、どうぞお席にお戻り下さい」

「大丈夫だったんですか?」


「何が起こったのか私達もよくわからない状況で・・・・ただいま、確認作業を実施しております。今のところの見解では、ライトの誤作動と考えているのですが・・・・」


「そうですか・・・・とりあえず無事ならよかったです」

「はい。ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

「いえいえ、いいんですよ~」


丘本君はそうにこやかに会話をしていたんだけど、急に右腕を後ろに回して、何か不思議な動きを始めた。


「なるほど」

「・・・・何かわかったんですか?」

「え?ああ、凛の手の動きは手話だよ。俺に、修の様子を見ろって言ってるんだ」


「そうだったんですか・・・・。それで、伊織君の様子は?」

「ん・・・・ええっ、いや、ん??」

「あの・・・・?」


「うーん、信じらんねぇ・・・・。でもなぁ、うーん?」

「えっと・・・・」


「まぁとりあえず、無事みたいだな。そろそろここを出るみたいな話もしてるから、その時に見てみたらいいぜ」


「はっ、はぁ・・・・」


私は何だかよくわからないけれど、神羅さんがそう言うなら仕方ないなと思って、渋々席に戻ることにした。


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