苦労してます
「・・・・はぁ」
「どうした、修?」
「どうしたも何も、こいつらのことだよ」
「栞ちゃんと、恋花ちゃんのこと?」
「・・・・お前とは違うんだ」
「だから~~~!」
「そう言う意味じゃない。俺は子供が苦手なんだ。お前は子供の扱いに慣れてるだろ?じゃあ、もうお前一人で警察まで届けてくれよ。俺、栞奈のこと公園においてきたままだし、後で色々言われたらめんどくさいから、公園に戻りたいんだよ」
「あっ!?そう言えば、俺も花恋と別れたまま・・・・どっ、どうしよう・・・・。花恋に怒られるかもしんない・・・・。うわぁ・・・・っ怖い。メール来てないかな?」
「そんなに怯えるぐらいなら、OKしなきゃよかったんだ・・・・」
「こらっ、そんなこと言うんじゃありません!この子達がショック受けちゃうでしょ!」
水斗にそう言われ、後ろにいる二人の子供の方を向いてみる。すると、二人は落ち込んだような表情で立っていた。
「・・・・なんだよ」
「ほら、がん飛ばすんじゃありません!」
「うるさい!」
母親みたいに口うるさく告げ口をして来る水斗の足を思い切り踏んづけてやると、恐怖で動けない子供二人の手を引いて歩き出す。
「お~い、待ってくれよ!俺、靴の中に何も仕込んでないんだぞ!ストレートに痛いんだぞ!」
「大丈夫だ。お前なら」
「どう言う意味だ!」
「とにかく、さっさと警察に連れて行く。話はそれからだ」
俺がそう言った直後、子供がコソコソと話し合いをしたかと思ったら、二人揃って首を振った。
「やだやだ!私、警察行きたくないもん!」
「そっ、そうだよ!警察なんて、嫌いだ・・・・もん」
「そう言ったって、俺達なんかより、よっぽど母さんを見つけてくれると思うぞ?」
「私、お兄ちゃんと離れたくないもん!」
そう言いながらギュッと握られた力が異常に強くて、俺はかなり怯む。人間の子供の握力を俺は知らないが、絶対、こんなに強くないはずだ。そこで、俺は何かがおかしいなと思って首をかしげてみる。
「なぁ、俺、花恋に電話かメールをした方がいいと思うか?」
「はぁ?まだ言ってるのか?」
「だっ、だって、花恋ってさ、ああ見えて・・・・って言うか、怒ると怖いんだぜ?」
「・・・・そうなのか?」
俺が聞き返してみると、水斗はなぜかしまったと言う顔をしたかと思ったら、ハッとした表情で自分の口を塞ぎ、今度は全力で首を横に振り始めた。
「どうしたんだよ?」
「ええっ!?なっ、何も・・・・」
「・・・・」
「おっ、俺、ちょっと花恋にメールしてみるぜ。今頃怒ってるかもしんないし・・・・」
水斗がそう言って後ろを向いた時、なぜか、水斗に懐いている方の子供が慌てた表情で水斗のところに走って行った。
「おっ、お兄ちゃん、早くお母さん捜してよ!」
「あっ、うん。わかってるけど、俺の幼馴染が・・・・」
「そのお姉ちゃん、きっと優しいよ!だから、電話をかけるのだけはやめよう?」
「うーん、花恋、怒ったら怖いからなぁ・・・・。今朝も凄く怒られてさ、
もう、(´・ω・`)←こんな感じ」
「おい、一度顔文字を使ったからって、それが何度も許されると思うな」
「だって、説明だけじゃ面白くないだろうから・・・・って」
「・・・・落ち込んじゃったの?」
「まっ、まぁ、ちょっとはな。でも、俺が悪いことをしたから怒られてる訳だし、仕方ないかなって思ってる」
「そっか!」
「おい、立ち止まってないで、歩くぞ」
俺がそう声をかけると、水斗は仕方なさそうに。水斗に懐いてる方の子供は何だか嬉しそうに近付いて来た。
「ねぇお兄ちゃん、私、お腹空いた」
「・・・・嘘だろ」
「嘘じゃないもん!お腹空いちゃって死んじゃう!」
「・・・・」
俺は、無言で近くにあった時計を見上げる。その時計は十二時を過ぎていて、確かに、そう言うのもうなずける時間帯だが、俺は、あまり気が進まなかった。なぜなら、子供を連れ回してる危ない奴だと思われるかもしれないからだ。
「・・・・ねぇ、お兄ちゃん!」
「・・・・はぁ」
「ん?なんの話?」
「ご飯の話!」
「おおっ、いいな!丁度俺も腹減ってたんだ!」
「お前の分の金も俺が払うのか?」
「・・・・ダメ?」
尚更重いため息をつく。・・・・お前、高校生なんだから、自分の飯代くらい自分で払えよ・・・・。
「そんなこと言わないで下さいよ!俺だって、色々生活が大変だったりするんですから・・・・バイトだけじゃ、色々キツイんですよ~」
「・・・・わかった」
俺が渋々うなずくと、水斗と子供が喜んだ。・・・・何だか、いっつも犠牲になってるのって俺だよな。
そう思ってため息をつく。俺が凛達の飯代を払ってるのは、まだバイトが出来ない年齢だからで、神羅は、そんなことをさせようものなら騒動を起こしそうだから、俺が金を払っている。
でも、たまに理不尽なことを言われる時がある。いくら大人っぽいと言われても俺は大人じゃないから、嫌な時もあるんだ。・・・・何が言いたかったと言うと、結果的には何もない。
「あっ、じゃあ、ファミレス行こう、ファミレス!俺、いっつも外食する時は和食店ばっかりだから、ファミレス行きたかったんだ!」
「私も、ファミレス好き!」
「・・・・じゃあ、ファミレスな」
俺はもうどうでもよくなって、それだけ言うと、みんなの希望通り、ファミリーレストランを探し始めた。