ようやく誤解が解けました
「うーん、大丈夫かなぁ~?心配だなぁ・・・・」
「そうですね・・・・しばらく返信が返って来ませんし・・・・」
「一体どこに行ったんだろうな?」
僕達がそんな話し合いをしていた時、不意に電話がかかって来て、僕は首をかしげる。それは知らない番号からで、尚且つテレビ電話だったのだ。
「ん?出ないのか?」
「うーん、なんかねぇ、危ない気がして・・・・。知らない番号からかかって来たから・・・・」
「でも、一応出ておいた方がいいんじゃないか?犯人からのテレビ電話かもしれないしよ」
そう神羅に言われて、僕は半ば嫌々ながら通話ボタンを押した。すると、一番最初に見えたのは沢山の木で、屋外だなってことはわかった。でも、相手の顔が見えないから、誰なのかわからない・・・・。
「・・・・もしもし」
警戒しながら聞いてみる。その間中画面はグルグルと切り替わっていて、目が回りそうだ。
「あの?」
そう声をかけると、後ろで何かやりとりをしているのが聞こえた。
「おい、これ、なんか変だぞ。画面がグルグル切り替わって、まるで馬鹿なお前を映してるみたいだ」
「ちょっ、俺は、ケータイと関係ないだろ!しかもそれ、一体どう言うことだよ?」
「うるさい!とにかく、もう通話中なんだから、どうにかしろ!」
「いや、そうは言われてもさ、俺もあんまりよくわからないって言うか・・・・」
話し声のおかげで、亜修羅がいるんだってことがわかって、僕らは一斉に安堵のため息を漏らす。二人の周りに怪しい人はいないみたいだし、それに何より、二人は元気そうだ。それが確認できただけでも大きい。
「もしも~し、聞こえてますか?」
僕がそう聞いてみると、今までめまぐるしく動いていた画面が止まり、グルリと丁度百八十度こちらに向いたかと思ったら、亜修羅と、有澤君の顔が映った。
「聞こえるか?」
「うん、聞こえてるけど・・・・無事?」
「無事も何も、もともと平気だ。それなのになんだ?お前等、なんか勝手に勘違いしてて・・・・馬鹿じゃないのか?」
そう亜修羅に言われて、僕らは素直に凹んだ。もとはといえば、神羅がダイイングメッセージとか言わなければよかったんだと思う。うん、全ての元凶は・・・・。
そう思って神羅の方を向くと、神羅は一生懸命視線を合わせないようにしている。それを見て、あまり咎めないであげようと言う意味を込めて、肩をポンと叩いた。すると、神羅はため息をついてゆっくりうなずいた。
「どうせ、凛辺りが勝手な想像で『誘拐された!』とか言って喚いたんだろ?」
「違うもん!自然と流れがそっちを向いちゃったんだよ!」
「は?どうやったらそっちの方向に向くんだよ?」
「だってさ、あんなに訳のわからないメールを送られたって・・・・」
僕はそう言った直後、何だか全てが見えた気がした・・・・って言うのは、どうしてこうなってしまったのかって言う流れ。
僕が思うに、多分、石村さんは僕らが帰った後、亜修羅にメールを送った。それが亜修羅に届いて、亜修羅は石村さんにメールを返そうとしたけど、間違えて僕らにもメールを送っちゃったって訳か・・・・。
そこまで考えて、僕は首をかしげた。・・・・って言うことは、あの文面が石村さん達の元に渡ったってこと?
そう考えて、どんな返信が亜修羅の元に届いたのか気になるけど、やっぱり、亜修羅の送って来た文章の訳がわからなくて、「どんな意味なんですか?」とか聞いてそうだよね、うん。
そこまで考えて、僕は、石村さんから届いたメールのことをさりげなく聞いてみることにした。
「でもさ、一体誰にメールを送ろうと思ってたの?僕らに宛てて書いた文章じゃないでしょ?」
「ああ、なんか知らない奴からメールが届いてな」
そう平然と答える亜修羅に、僕らは顔をしかめる。まさか、石村さんのことを知らない奴だって言うなんて・・・・一緒に踊ったんじゃないのかい!?
「知らない奴って言い方は酷いんじゃないの!?」
「は?」
「だって、一緒に踊った仲でしょ!?」
僕はそう言った直後、慌てて口を塞ぐと首を振った。でも、亜修羅は慌てる訳でもなく、不思議そうに首をかしげた。
「は?お前、夢でも見てたんじゃないか?」
「そっ、その言い方は酷いんじゃないですか?」
「しかし、お前が馬鹿みたいなことを言うから・・・・。お前、もしかして心当たりがあるのか?」
「えっ!!?」
亜修羅の言葉はストレートに僕の心を射抜いた。そのせいで、危うくケータイを落としそうになる。危ない危ない、このケータイ結構高かったからね・・・・。
「そんな風にうろたえるところも怪しいな・・・・」
「そっ、そんなことある訳ないじゃん!って言うかさ、亜修羅達、今一体どこにいるのさ?」
「どこって、駅の南側にある大きな公園だ」
「わかった!今からそっち行くね!」
「は!?って・・・・お前達も外出中か。お前等こそ何やってたんだよ、今の今まで」
「ノーコメント!」
僕は大声でそれだけ言うと、勝手に通話を切った。それから直ぐに電話が再びかかって来たのは言わなくてもわかるだろうけど、当然無視した。
すると、最初は何回かしつこく鳴っていたけれど、やがて諦めたのか、電話がかかってくることはなくなった。
「凛君、今から修さんのところに向かうって言うのは本当ですか?」
「うん、本当だよ!石村さんのメールがどんなのか見て見たいじゃないか!」
「え・・・・」
「って言うか、何かズレが生じちゃってるんだろうね、きっと。だから、そのズレを僕らが正さないと・・・・」
「そっ、そうですね、ここまで来たんですからね!」
「うん。じゃ、そう言うことでゴー!」
僕はそう言うと、未だにボーッとしている神羅の腕を引っ張って走り出した。