悩める天使です
「りっ、凛君、一体どこに行くつもりですか!?」
「どこって、もちろん、亜修羅のところに決まってるじゃないか!」
「そっ、そうなんですか?」
「あったりまえじゃん!見張ってるんだよ!」
僕がそう言うと、神羅は眉をしかめて立ち止まった。僕は、どうして神羅が立ち止まったのかわからないけど、僕の意見に肯定的じゃない神羅は珍しいなと思って、聞いてみることにする。
「どうしたの?」
「いや、族長、栞奈といるみたいだからよ」
「そうなの!?」
「ああ。昨日の詫びとして、今日出かけてるみたいでな?だから、竜の家に行っても、族長はいないと思うぜ?」
「ああ・・・・なるほど。だから、神羅は眉をしかめた訳だ」
「・・・・まあな。族長が今どこにいるのかわかるけどよ、二人で出かけてる途中だから、邪魔しちゃ悪いかなと思ってよ」
そんな神羅の言葉に僕はうなずいた。なんとも言えない感情に心が支配されるけれど、首を振って、それを追い出す。昨日から、何だかこんな風に変な感情が起こるようになった。
それも、栞奈ちゃんが関係してる時にだけ。竜君が言うには、僕は、栞奈ちゃんが好きらしいんだけど、どうなのか、僕にはイマイチよくわからない。
だって、今まで人のことを好きになったことってないから、これが、恋なのかどうかわからない。
でも、なんとなくわかるのは、まだ、好きって訳じゃないと思う。多分・・・・。ほんとうのところはよくわからないけど・・・・。
僕はそう思ってため息をつく。多分、昨日と言う日がなかったら、僕は、全力で栞奈ちゃんを応援できたと思う。それはもう、猛プッシュでね。
だけどさ、昨日と言う日があった今は、何だか全力で応援することが出来ない。そんな自分が嫌な奴に思えて、僕は、自分自身が嫌になる。
気がつけば、栞奈ちゃんのことばっかり考えるし、それに、それと同じくらい亜修羅のことも考える。栞奈ちゃんは亜修羅が好きだ。それは見ててわかる。明らかにそうだってわかる。でも、亜修羅が栞奈ちゃんのことをどう思ってるのかわからない。だから僕は、どうしたらいいのかわからない。
もし、亜修羅も栞奈ちゃんが好きだってわかってたら、僕はもう少し潔くなれたかもしれない。だけど、亜修羅がどっちつかずだから、僕は、こんな風にモヤモヤしたままでいる。
栞奈ちゃんを応援してあげたい気持ちはあるけど、心の片隅では、応援したくないなって思う気持ちもあるんだ。
「・・・・ん?どうしたんだ、凛?」
「えっ?あっ、ううん。気にしないで!」
「・・・・もしかして、急に具合が悪くなったとかですか?」
「いやいや、そんなことはないから安心しなさい!あっ、じゃあさ、直接会わないで、後ろから尾行するってのはどうかな?」
「おう、それなら賛成だぜ!」
「じゃあ、神羅、二人のいるところまで案内してよ」
「ああ、わかった。こっちだ!」
「よ~し、桜っち、神羅の後に続くよ!」
僕は、桜っちの手を取ると、色々と複雑に交差する自分の心を振り払うように走り出した。