答えが出たのに、また大きくズレました
「なぁ、花恋?」
「プールは行かないわよ」
「わかってるよ!だって、もう言ってないじゃん、それ」
「それでも釘を刺してるのよ。また、いつどこで言い出すかわかったものじゃないから」
「別に、そんなにしつこく言うつもりはねーし。でもよ、どうしてそんなにかたくなに嫌がるんだよ?」
立ち止まって聞いてみる。
すると、今まで平然と歩いていた花恋が顔を伏せて立ち止まるから、きっと何かがあるんだろうけど、中々話さない。
俺は、あれから、プールのことは一度も言ってない。だって、花恋が嫌そうだし、デートだと思ってくれてることがわかったから。
いくら俺が馬鹿だって言われてても、女の子が嫌がることをいつまでも言うほど馬鹿じゃない。
それにしても、まさか、デートだと思ってるとは思わなかった。
花恋にそう言われて、俺も気づいたんだ。確かに、これって、デートみたいだなって。
でも、だ。いつもの花恋なら、そんな勘違いをしないのに、どうしたんだろうと思った。
それに、昨日のこともそうだ。花恋は好きな人がいる様子だった。
それなのに、今日、俺と出かけている。それって、どう言う意味なんだろう・・・・?
もしかして、花恋が好きな奴って・・・・。
そう考えて、慌てて首を振る。ない!いや、絶対ないと思う。自分でもありえないことを思ったなと思って、ため息をつく。
俺が思ったこと。それは、花恋の言っていた奴は、俺なんじゃないかって一瞬思ったんだ。ちゃんと理由だってある。
理由その一。花恋の答えたカラーの色が、水色だったこと。俺も、水色が好きなんだ。
その二。神羅の言葉。あいつ、「気づいてないのか!」みたいなことを言ってたからだ。俺は、あれの意味がわからないけど、もしそうなら、神羅の言葉の意味がわかる。
理由その三。今日、俺と出かけていること。俺の教えたおまじないは本当によく効くから、あの時花恋に電話をかけた奴がいたはずだ。それなのに、俺と出かけてるってことは、俺のことを願ったと考えられるからだ。
理由その四。俺と出かけることをデートだと思っていたこと。これが、一番の理由だ。
でも、これって、よくあることなんだよな。うん、俺は遊ぶつもりで声をかけても、デートだと思っちゃう子も何人かいるし。そう言う意味では、俺の考えは違う可能性が高い。
うーん、そうしたら、花恋は、一体誰が好きなんだろうな・・・・。
「なぁ、花恋?」
「公園ならいいわよ」
「そうか!じゃ、あそこに入ろうぜ。ちょっと歩き疲れたからな!」
「そう」
花恋が、相変わらずそっぽを向きながら答える。その様子は素っ気なく、俺の考えが明らかに間違っていることを物語っている。
周りの奴等が言うには、花恋は、「ツンデレ」と言う属性らしい。でも、俺は、イマイチそれがわからない。ツンの部分は大いにわかる。
だって、いつもそうだからだ。でも、俺は、花恋のデレと言うのを見たことがない。だから、ツンデレのデレを知らないのだ。
いや、そんなことよりも、花恋が誰のことが好きなのかと言うことを考えるのが先だ。
あの花恋が好きになる人を、俺は見て見たい。
幼馴染だから、もう十年以上一緒にいるのに、花恋のそう言う話は聞いたことがないんだ。だから、是非、それを応援したい。いつも世話になってる身だしな。
そう思いながら公園に入った時、見覚えのある顔を見つけて、思わず手を振って走り寄る。すると、一人はうんざりしたような顔をして、もう一人は不思議そうな顔をした。
「なんだ、デート中か?」
俺が聞くと、隣にいた女の子が赤くなって顔を下に向ける。
しかし、修はと言うと、普通に首を振っている。それを見て、俺は、酷いなと思った。
せめて、もう少し柔らかにデートじゃないことを主張できないのかと思ったんだ。
「せっかくの冬休みだから、たまには出かけようと思っただけだ」
「ふ~ん、そうか。そっちの子の名前は?」
「栞奈だ。幼馴染の」
「そうか~」
俺は相槌を打ちながら、栞奈ちゃんの前まで歩いて行く。かなり可愛い顔をしていたから、せめて、名前だけでも知りたかったんだ。それから、出来れば、俺の自己紹介も。
「俺、有澤瑞人。よろしく!」
「あっ、えっと・・・・はい。私は栞奈です。よろしく」
栞奈ちゃんが、相変わらず不思議そうな顔で自己紹介をする。
俺は、にこやかな笑顔で握手をしようとする・・・・が、花恋が腕を引っ張って、それを阻止する。俺は、そんな突然の行動に、思わず小声で抗議する。
「なんだよ!」
「触らないの!」
「別に、握手ぐらいいいだろ?」
「ダメ!」
「・・・・ちぇっ」
俺は、どうしてそんなに全力で阻止されるのかわからないけれど、その場は諦めることにする。
別に、変なことをしようなんてかけらも思ってない。だって、栞奈ちゃんは修のことが好きみたいだし、栞奈ちゃんに手を出したら、修に何を言われるかわからないしな。
俺はそう思ってため息をつく。そして、公園の外に出ようと花恋を促そうとした時、花恋と修が何だか仲がよさそうに話してるのが見えた。
俺は、話しかけようかかけまいか迷ったけど、もう少し距離を置いて、その様子を眺める。
花恋は照れているようで、顔を赤くしながらモジモジしている。でも、ちゃんと話は出来ているようだ。
しかし、その口調にトゲがない。いつもなら、バラ園に投げ入れられたほど沢山あるトゲが、全部とられてしまったかのようにないんだ。
今までに見たこともないほど丸い物腰の花恋に、俺は気づいた。気づいてしまったんだ。
花恋が好きな奴って言うのは、修のことなんだって。
そして俺は、更に考える。とは言っても、修のことが好きな理由って言うのがまだ揃っていない。行動を見れば、明らかに好いているけれど、それだけじゃ、確証は得られない。なら・・・・。
俺は、大きく深呼吸をすると、会話の邪魔をすることを申し訳なく思いながらも、修に話しかける。
「修、ちょっといいか?」
「なんだよ」
「いいから!」
俺は、いぶかしんでいる修の手を引っ張ると、花恋達がいるところから離れた場所まで歩いて行った。