小休止《たこ焼き編》
今回は、前回のことを反省し、暴れないように作ることにする。あんな惨事の後に、よく作る気になるなと
思う人もいると思うが、料理の楽しさ(と言うのだろうか・・・・)が分かって来たのだ。俺を抜いた三人が。
「前回はケーキを作って失敗しちゃったからさ、今回はたこ焼きにしよう!」
「あんまり変わっていない気がするが・・・・」
「ううん。大違いだよ。ケーキの難易度は、十個中、星八個。でも、たこ焼きは、星五個だよ」
「・・・・そうか」
あんまり信用出来ないが、仕方が無い。栞奈にそのことを伝えると、俺達だけでやってくれと言われた。栞奈は、友達の家に行って飯を食って来るらしい。それを聞いて、やはりやめようと思った。
栞奈がいるならと思ったのだ。しかし、栞奈がいないとなると、この前のような惨事が起こりえない。だから、やめようと言おうとした。
「おい、やめ・・・・」
「よし!早速準備を開始しないと!」
「おう!前回は失敗しちまったけど、今回は、必ず成功させんぞ!」
「そうですね。二度目の正直と行きたいです」
本当は、三度目の正直と言うのだろうが、あえて突っ込まない。二度目で成功してもらいたかった。態々、もう一回失敗して、三回目に成功する必要はないのだからな。
俺が止めようとするのをわかっているのか、皆が遮り、早速準備に入ろうとする。本気でやるつもりだ。なら、俺も本気で止めてやる!
「まずは、たこ焼きの粉を・・・・」
凛がボールに入れようとしたたこ焼きの粉を奪い取り、何とか後ろに回す。
「何するんだよぅ!邪魔しないでよ!」
「邪魔じゃない。俺の家の台所をこれ以上壊してもらいたくないだけだ。ケーキの時に、掃除の大変さを思い知っただろう?」
「そんなの、あの時に食べたケーキに消えちゃったよ。だから、作るんだ!」
必死で作ろうとする凛達と、必死で止める俺。しかし、やはり人数が多い方が勝つに決まっている。いつの間にか、後ろに回っていた神羅に粉を取られ、凛にそれをパスする。しかし、俺はそのパスをカットして、再び手の中に収める。
「もう!どうして邪魔するの!」
「俺の家を守りたいんだよ」
「大丈夫だって。もう、あんな風に卵を投げたりしないし、火も使わないし、鉄板だから大丈夫」
そんなことを言われたって、絶対安心なんか出来ない。絶対、家が壊される事になる。それだけは避けねば。
しかし、少しぐらいはやらせていいんじゃないかと思った。鉄板だし、ここまで頼み込んでるんだしな。
「・・・・わかった。その代わり、俺は手伝わないからな」
「オーケー、オーケー。ゼンゼンヘイキダヨ!」
「・・・・信用出来ないな」
外国人がしゃべったような日本語を返されて、とても不安になった。さっきまでの不安とは比べ物にならないぐらいの不安だ。・・・・俺も手伝わないと、この家は破壊されるかもしれない。
「ほんと、ほんと。だいじょぶ、だいじょぶ。あははははは」
「・・・・こいつ、頭がおかしくなったのか?」
「多分、修さんにもやってもらいたいんでしょうね」
「・・・・わかった」
別に、凛にそんなことをされなくても、元から手伝うつもりだった。心配だからな。前回のこいつらの行動を見ていると、俺も手を出さずにはいられないほど酷いものだったからだ。俺だって、料理が出来ると言えるほど出来る訳ではないが、そこそこ出来る方だ。
「貸せ」
「族長も作りたいんですか?」
「お前等に任せていたら、とんでもないことになるからな」
「おお!ついに族長が立ち上がったぞ」
「やったぁ~~!!」
「頑張りましょう!!」
何だか、たこ焼きを作るテンションとは思えないテンションの三人に、完全に置いてけぼりにされて、一人取り残された気分だ。
「じゃあ、始めましょう!」
神羅はそう言うと、なぜか腕を目の前に上げて、カメラで取っているようなポーズをする。そして、凛は、俺の隣りに立ち、桜木は神羅と同じ立ち位置に立っている。
何を始めるのか全く分からないが、凛が俺の腕を引っ張り、後ろを向くように促される。すると、神羅がカメラを背負ったような格好のまま、左肩にカメラを移して、右手で数字を作り、カウントをしていく。その数字がゼロになった途端、凛が作り笑顔を浮かべて、あたかもそこにカメラがあるかのように話し出した。
「これから、たこ焼きを作りたいと思います。今回は、滅多に行動をしない伊織先生が出頭しました。余程難しい料理なのでしょうか?」
凛が俺に問いかけて来る。・・・・何だ?この、料理番組のスタジオみたいな雰囲気は?もしかして、それをイメージしてるのか?こいつらは。
仕方なく、そいつらのテンションにのってやることにする。
「そうですね。滅多に行動しないと言うところは余計ですが、当てにならない弟子に任せておくのは不安なので、今日は私がやらせていただきます。どうぞ、よろしくお願いします」
俺も、凛に習って、貼り付けの笑顔を浮かべる。隣では、凛が笑顔を浮かべたまま、肘でわき腹を小突いて来る。何を言ってもいいじゃないか。どうせ、本当にカメラで撮っている訳でもない。
「それでは、今日の料理を発表をしてもらいましょう」
「今日は、たこ焼きを作ります。では、始めましょう」
後ろを向くと、凛に何かを言われたが、仕方が無いだろう。流し台も後ろにあるのに、カメラの方向に向いたままやれって言うのは、不可能に近い。無茶を言うな。
「まずは、たこ焼きの粉をボールに開けます」
「先生、市販のものを使ってしまうんですか?それじゃあ、料理番組にはならないですよぉ~」
「・・・・馬鹿はほおって置いて、続きを説明します。次に・・・・」
俺が言いかけると、凛が足を蹴って来る。イラッとするが、尚も我慢して続ける。ここで暴れてしまったら、きっと、近くにある材料をぶちまけそうだ。凛達にあれほどなことを言ったのだ。それだけは避けたい。
しばらく我慢して素を何とか作り上げると、場所を移動して、リビングの机の上にある鉄板に移動する。その道中、ずっとその料理番組ごっこは続いていた。何時まで続ける気だか・・・・。
そう思って椅子に座ると、それは一瞬で終わった。皆が一斉に椅子に着き、じっと鉄板を見つめる。・・・・もしかして、たこ焼きを焼きたいのだろうか?
「たこ焼きを焼きたいのか?」
「・・・・そうかもしれないよ」
「・・・・焼いてみたいかもしれないです」
「・・・・興味ないとは言えないな」
皆、曖昧な態度をとっているが、その視線はとても焼いてみたいと言っている。そこまで訴えなくてもいいんじゃないかと思うほどだ。子供じゃないんだ。そんなにたこ焼きを焼くのに興味は湧くだろうか?
そう思いながらも、とりあえずはボールを奴等の前に置く。すると、順序も立てないで生地を流した為、慌てて声を上げるが、皆はそんなのお構いなしで、自分勝手に行動を始めている。
・・・・だから嫌だったんだ。一度真剣になったら、俺の話なんか聞こうともしない。ああ、やっぱりやめておけばよかった。
そう思っても、時既に遅し。俺の止められるものじゃない。一人止めるのが精一杯だ。絶対、暴動が起きるに決まっている。
その暴動に巻き込まれないように、そそくさと立ち上がろうとした時、何か丸い物が俺の方向に飛んで来て、その熱さに飛び上がる。
「あっ、ごめん。つい、勢い余って飛ばしちゃって・・・・」
「ふざけるな!」
「ふざけてないよ!ほいっ」
凛がたこ焼き・・・・と言えないだろう。余りにもひっくり返すのに失敗して、中が出て来てしまっている。なんだか、グロいな。
その得たいの知れない何かが、天井まで飛び上がり、張り付く。
「やめろ!もうひっくり返すな!家を壊す気か!?」
「大丈夫だって、そんなことないから」
そう言っているけれど、家のいたるところにたこ焼きが飛び、たこ焼き屋敷になるかと思った。凛の他にも、神羅や桜木も下手だから、本当にたこ焼き屋敷になりそうだ。
しかも、天井に張り付いたたこ焼きは天井から落ちて来る為、肩の上にボトッと落ちて来た。しかも、頭にも落ちて来る。しばらくの間張り付いていたから熱くはないが、とても不快な気分だ。
たこ焼きが振って来ると言う珍現象を起こした張本人達も、やっぱり不快な思いをしたようで、たこ焼きを焼くのをやめた。しかし、もう遅い。何百(と言うほどかわからないが・・・・)ものたこ焼きが天井やらどこからか落ちて来る為、ついにその部屋から避難した。頭の上に、たこ焼きが二つに割れて乗っている。
「たこ焼きの卵の中から、タコの雛が生まれたぜ」
「凄い!それ、面白い!」
神羅が真面目な顔でそんなことをつぶやく為、思わず吹き出してしまう。その口調は、ナルシストの奴が、かっこうをつけて言うような口調だったため、尚更笑えた。
しばらくの間笑っていると、栞奈が帰って来た。その途端、皆の表情が引き締まり、どうしようと言う表情が浮かぶ。それは、俺とて同じだった。
「たこ焼き、どうだった?」
栞奈がリビングに入って来た途端、天井からたこ焼きが降って来て、栞奈の頭に乗っかる。そのたこ焼きは上手く真っ二つに割れて、本当にタコの雛が生まれ、地面に落下した。
栞奈はずっとうつむいていた。怒りを我慢するかのように、小刻みに震えながらうつむいていた。
栞奈が大きく息を吸った時、まずいなと思って、とっさに耳を塞ぐ。すると、栞奈の怒鳴り声が聞こえた。
「何やってるの!!!」
「ごっ、ごめんなさい!」
「悪かった・・・・」
「本当に・・・・」
「・・・・」
栞奈の剣幕に、皆が怖気づく。そう言えば、栞奈は昔から怒ると怖かったのだ。それを思い出し、地獄を見るなと感じた。
それから、約一時間説教を受けた後、皆で片付けをして、何とか許された。俺の家なのに、どうして栞奈に怒られなくちゃいけないのかと言う気持ちになったが、こいつらを止めなかった俺も悪いと思い、何も言えなかった。