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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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どんなに仲がよく見えても、不安はつきものです

「ソワソワしてどうしたんだよ?」

「えっ、えーっと・・・・なんでもない!」

「そうか。ならいい。それじゃあ、出るか」


「えっ!?入ったばっかりなのに、いいの?」


「ああ。俺が見たかった絵はさっきのだけだ」

「他にも色々あるのに?」

「ああ。それに、あんまり居心地がいい場所じゃないってわかったからな」


亜修羅のその言葉を聞いて、私はホッとした。平気な様子で絵を見てたけど、実は、凄く居心地が悪いことを感じてたらしい。


「亜修羅がいいなら、私はいいよ」

「そうか。じゃあ、出るか」

「うん」


私はホッとした気持ちになりながら外に出た。美術館の中に比べて寒さはきつかったけど、あそこの居心地の悪さに比べれば、全然大したことはない。


「でも、本当にあの一枚だけでよかったの?」


「本当は、もう少し見てたかったんだけど、めんどくさいことに巻き込まれないうちに逃げた方がいいと思ってな」


「めんどくさいこと?」


「ほら、昨日のこと話しただろ?エンジェルと行動を共にしたって。その時に、警察に顔を見られたかもしれないんだ。それで、さっきのあの美術館に、警察が沢山いた。だから俺は、気づかれないうちに外に出て来たんだ」


「あっ、エンジェルと行動を共にしてたところを見られたってことは、仲間だと思われて、摑まっちゃうかもしれないから?」


「そうだ。多分、次にエンジェルが盗むのは、あの美術館に保存されている古い書物か何かだ。それを聞きつけた警察が、早速大人数で警備に当たってるって感じだな」


「あっ、だから、何だか居心地が悪かったのね」


「ああ。きっと、あの美術館にいた客、全員が警察官だろう。だから、異様な感じがしたんだ」


「へぇ・・・・」


私は、ただじっと絵を見てるだけじゃなかったんだなって感心する。てっきり、絵しか見てないのかと思ったんだ。まさか、私が見てるところ以上に色んなところを見てたなんて・・・・。


「見てはいない。ただ、雰囲気で感じたんだ」

「嘘ッ!?」


「本当だ。背後から何回かコソコソ話す声が聞こえたし、視線も感じた。そして、空気がそれっぽかった。だから、一応あの場を離れたんだ。聖夜も言ってたしな。出来るだけ警察に近付かない方がいいって」


「そうなんだ・・・・」

「悪いことをしたな。嫌な気にさせて」


「ううん。大丈夫。あれぐらいじゃ、嫌な気にはならないわ。あっ、それよりさ、さっきあの絵を見て、何を考えてたの?」


ずっと気になってたところを聞いてみた。すると、亜修羅は焦ったような顔をした後、直ぐにため息をついた。もしかしたら、私の思ってることがわかったみたいだ。


「バレてるみたいだな」

「わかんない。でも、そうかもしれない」


「まあいい。絶対わかってる顔をしてるからな。なら、どうせ隠したって無駄だろう。俺が考えてたのは、どうしてこんなに上手く描けるんだろうかって思うと同時に、勉強をしていた」


「やっぱり・・・・」


亜修羅の答えが、自分の思っていたこととマッチし過ぎて、私は思わず笑ってしまう。まさか、ここまでブレなく当たるとは思ってなかったんだもん。


「絵画教室でも行ってみれば?」

「行かない!!」

「そっ、そうなの?自分で勉強するより、よっぽど上達が速そうだけど・・・・」


「そんなことしたら、凛達に何を言われるか想像ついてるからな。絶対に、そう言うところには行かない」


「そっ、そっか・・・・。そっ、そうだ。これからどこに行く?まだ、二時間以上あるけど・・・・」


「・・・・じゃあ、近くの公園でも行くか」

「うん!」


私は、つい嬉しくなって大きな声でうなずいてしまった。と言うのも、公園は大好きなんだ。人が元気に走ってたり、太陽が当たったりして、居心地がいい。だから、公園って好きなんだ。その変わり、夏だと凄く暑くて日に焼けたりして大変だけどね。


「・・・・物凄い嬉しそうだな」

「あっ、ごめん・・・・」


「気にしなくていい。さっきは俺につき合わせたんだ。今度はお前の好きな場所に行くのが平等だろう」


その言葉で、亜修羅が私に気を使って公園に行こうと言ってくれたことに気づいた。そうすると、申し訳ない気持ちになって来て、亜修羅に謝ろうとした。


しかし、顔をあげた時には亜修羅の姿はなくて、不安になる。置いてかれたと思ったんだ。最近は大分なくなったけど、昔は結構多かったんだ。こう言うこと。だから、久しぶりにおいてかれたんじゃないかと不安になった。


「おい、俺はここにいるぞ」

「え?」


私は驚いて後ろを振り返ると、亜修羅が普通に立っていて、私は何だか恥ずかしくなって来る。今の反応だと、私の心を読まれちゃったみたいだ。と言うことは・・・・。


「あっ、あの。何も思ってないよ!」


「・・・・別にいいが、公園に行くんだろ?なら、早く行こう。ここは日陰だから、早く日当たりのいいところに行きたい」


亜修羅が真面目な顔でそう言うから、私は少しだけおかしくなったけれど、慌てて笑いそうになる口を押さえて、うなずいた。何が面白いって訳じゃないけど、真面目な顔で言うことじゃないと思うんだよね。だから、笑っちゃったのかもしれない。


「お前、笑っただろう?」

「笑ってないよ。大丈夫、行こう!」

「でも、今、一瞬・・・・」


私は、亜修羅の手を取ると、慌てている亜修羅を引っ張るような形で先を歩き出した。並んで歩けばいいと思うだろうけど、手を繋いでる状態だったから、一緒に並んで歩くのが、なんだかちょっと、恥ずかしかったんだもん。


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