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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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仕方のないことなのだろうけど、彼女の言い分が最もです

「それで、今日はどこに行くつもりなのよ?」

「え?」

「だから、今日はどこに行くのって聞いてるの!」

「いや、そう言われてもさ、どこに行くのか決めてないって言うかなんてゆーか」


瑞人の言葉に、私は驚いた。だって、こいつのことだから、きっとどこどこに行きたいと言う何かがあって、私を誘ったと思ったんだ。いつもそうだったんだ。例えば、自分の見たい映画を見る時、二人組みだと割引されるからとか、そう言う理由で付き合わされたことが多いから、びっくりしたんだ。


でも、それと同時に物凄く嬉しい。顔には出さないけど、物凄く嬉しい。だって、理由もなく誘ってくれるって、何だか嬉しいじゃない。


「で、今回は、花恋に決めてもらおうと思って」

「え?」


「これから行きたい場所!いつも俺に付き合わせてるからさ、今日は、花恋に決めてもらおうと思って!」


そう言いながら笑顔でこちらを向く瑞人から、私は目を逸らす。その笑顔を直接見ちゃうと、鼓動が早くなって、苦しくなっちゃう。それに、顔まで赤くなって来て、怪しまれることになっちゃう。それだけは嫌だから、仕方なく目を逸らしてるんだ。


本当はずっと見てたいけど、それが出来るほど私は大人じゃない。じっと顔を見ても平静でいられるほど、大人じゃないんだ!


「・・・・何考えてんだよ?」

「え?なっ、何!?」

「いや、なんか、ブツブツ言ってるような言ってないような・・・・大丈夫か?」

「ちょっ、ちょっと!近付かないでよ!!」


心配そうな顔をしながら瑞人が近寄って来るから、私はついそう口走ってしまった。そして、物凄く後悔する。だって、今の言葉は酷いなって思ったんだ。どんなに馬鹿なこいつでも、絶対に傷ついたと思う。


私はそう思いながらも、怖くて瑞人の顔が見られなかった。元々顔を見ることはあんまり出来ないけど、今は、それ以上に顔を見られないよ・・・・。


私がそう思いながらうつむいていると、急に頭を叩かれて、私はついカッとなって瑞人の方を向く。


「何よ!」

「いや、何もしてねーけど?」


「叩いたじゃない!」


「いや、なんでそんなに落ち込んでるのかな~って思ってよ」

「は?」


私は、瑞人の言っている意味がわからなくて、つい、間の抜けた声を出してしまった。今、私が落ち込んでる理由がわからないって・・・・。もしかして、傷ついてないってこと?


「どうしたんだよ、そんな顔して?」

「・・・・どうもこうも、あんた、傷ついたりしなかったの?」


私がそう言うと、ようやくわかったようで、瑞人はポンと手を叩きながらうなずいた。しかし、直ぐにその手を下ろすと、首を振った。


「別に、あのぐらいじゃ、傷つかないって。聖夜に散々言われてるしな。あっ、でも、ちょっと傷ついたかも」


「・・・・やっぱり」


「でも、大丈夫だ!俺は、それぐらい小さなことじゃ、花恋を嫌いになったりはしねぇ!料理に毒を盛られたら嫌いになるかもだけどな!」


「そんなことするはずないじゃない!」


「まぁ、そうだよな。所謂、物の例えって奴よ!それぐらい酷いことをされなくちゃ、俺はお前を嫌いにならねぇ。だから、安心してツンっぷりを発揮していいぞ!」


そう言って笑顔を見せる瑞人から、慌てて視線を逸らす。最後の言葉の意味はよくわからないけど、そうやって言ってくれることは凄く嬉しいことだった。


私は今まで結構酷いことを言って来た。それでも、嫌いだと思わないでくれていた。それがわかるだけでも、物凄く嬉しい。


「・・・・って言うことで、ちょっと行きたいところがあるんだけど・・・・」

「プールは行かないわよ」


「・・・・いっ、いやっ!別に、プール行きたいって言ってないだろ!まっ、全く・・・・勘違いしてもらっちゃ困るなぁ~」


そう言う瑞人に視線はあさっての方向を向いていて、私と視線を合わせようともしない。と言うことは、やっぱり、プールに行きたがってた訳だ。絶対に行かないけど。


「どうせ、女の子の水着が見たいとかそう言う下心でしょ?」

「いやいや、そうじゃないって!」

「嘘。目が泳いでる」


「泳いでない!俺の目はいつもこれだ!」

「じゃあ、いつも嘘をついてるのね」

「うっ・・・・」


私の言葉に太刀打ちできなくなったようで、瑞人が捨てられた子犬のような目で見て来る。いつもなら、この目をされると私は折れてしまうんだけど、プールだけは折れない。絶対。


だって、プールに行って水着になるのとか嫌だもの。それに、プールって水着の女の子とか沢山いるし、私が目を離した隙に何をするかわからない。そんなの嫌だもん。


「プールはダメ」

「別に、他の女の子のことは見ないよ」

「そんなこと言ったって、他の女の子がプールにいたら、見ちゃうんでしょ」

「そっ、それはまぁ・・・・」


「そう言うのを否定するつもりはないけど、わざわざ私とデートしてる時に、女の子を見に行かなくてもいいんじゃないの!?」


私はそう大きな声で言った後、物凄く恥ずかしかった。だって、つい、「デート」って言ってしまったんだもん。


もう、これだから、感情が高ぶってる時に話すのは嫌なんだ。思ってることが全て外に漏れてしまって、凄く恥ずかしい思いをすることになる。


私は、不思議な顔をして首をかしげている瑞人に背を向けると、ズンズンとどこへと向かう訳でもなく歩き出した。


「ちょっ、待って!」

「・・・・」


私は、下を向きながら立ち止まった。本当は、逃げてしまいたかった。瑞人の前から消えて、一人で落ち着きたかった。でも、せっかくのデートを・・・・しかも、初デートを壊したくないから、自然と足が止まってしまったんだ。


後ろから、スキップでもするかのように軽やかな足音が聞こえる。何が楽しいのかわからないけど、瑞人がその足音の主だってことはわかる。


「まさか、デートだと思っててくれたんだな!」

「・・・・そんなことない」


「でも、さっき、『私とデートしてる時に女の子を見に行かなくてもいいんじゃないの!?』って言ったのは、どちらさんでしたっけ?」


そう瑞人に問われ、私は更に下を向く。恥ずかしくて顔が熱い。と言うか、体全体が熱い。さっきまで物凄く寒かった薄着の服でも熱いぐらいだ。


「なあなあ、たまには素直になろ~ぜ!俺と出かけるの、デートだと思ってたんだろ?」

「・・・・」


私は、チラッと視線を上げて瑞人の顔を見てみる。その顔には満面の笑みがあって、絶対に、私の本音に気づいてるんだろうなと思った。


そして、ここまで来たのなら、もう言い訳も通用しないだろうなと思って、私は、少し・・・・ほんの少しだけ、とても小さく首を縦に振った。


その途端、瑞人が急に喜び出したから、私はびっくりして上を向く。まさか、こんなに喜ばれるとは思ってなかったんだ。


「なっ、なんでそんなに喜ぶのよ!」


私がそう聞くと、瑞人は喜ぶのをやめてこちらを振り返った。その表情は不思議そうで、私は思わずため息が漏れた。その顔だけで、次に発せられる言葉が手に取るようにわかるからだ。


「いや、そう言われてみれば、どうして喜んだんだろうな?正直、よくわかんねぇや」

「・・・・あっそ」


私は、予想通りの答えが返って来て、ため息をつく。別に、期待はしてなかった。こいつのことだから、きっと、こんな風な答えが返って来るだろうって思ってた。


・・・・でも、でもだよ。もしかしたら、奇跡的に、私が望んだ答えが帰って来るかもしれないと思ってしまったんだ。だけど、こいつに私の思いは届かない。って言うか、気づかないと思う。もう、本当に、人を振り回す奴だ。


「・・・・もう、知らない!」

「あっ、ちょっ、待って!どこ行くの!?」

「公園でも映画館でもプールでも、どこでもいいわよ!」


「ほんと!?」


「・・・・やっぱ、プールはダメ」

「ええ~っ、さっき、いいって言ったじゃんかよ~!」

「馬鹿!」


私はそう言うと、目的地もわからぬまま歩き出した。もちろん、瑞人とのデートをやめるつもりはないけど、瑞人の鈍感ぶりに嫌気が差しちゃったんだ。


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