家の中で走るのは危険です
「・・・・だよ。・・・・でも・・・・だから」
近くで誰かが話しているような声が聞こえて、僕は、うっすらと目を開ける。そこには、白色の天井が見えて、僕は首をかしげる。イマイチ、自分がどこにいるのか把握出来てないのだ。
「あっ、起きた?」
「・・・・ん?」
僕は、なんだかダルい体を無理矢理動かして後ろを振り返る。すると、制服姿の黒川君の姿が見えた。
「おはよう」
「あっ、おはよう。・・・・あれ?僕、どうしてここにいるんだっけ?なんか、昨日のことがあんまり思い出せなくて・・・・」
「凛君は、昨日熱を出して倒れちゃったんですよ。それで、番長の家に来たって経緯です」
「あっ、桜っち!おはよう!」
「あっ、はい。おはようございます。熱の方は大丈夫ですか?」
「うん、多分ね。まだ体がちょっとダルいけど、それ以外は、特に異常なし!こんなもん、元気があれば、吹っ飛ばせる程度だね!」
「そうですか。それはよかったです」
「それじゃあ俺、見回りに行ってくるから」
黒川君の言葉の意味がわからなくて僕は首をかしげたけれど、桜っちはなんのことを言っているのかわかっているみたいで、笑顔で手を振っていた。だから僕も、とりあえずは手を振るけど、黒川君がいなくなった後、ちゃんと、しっかりと聞くつもりだ。
「で、桜っち。一体どう言うことだい?」
「え?何がですか?」
「黒川君の言っていた『見回り』ってことだよ」
「ああ、そのことですか。見回りって言うのは、そのままの意味で、高徳中を見回りに行くんですよ」
「冬休みなのに??」
「はい。この前は、事の成行きで、見回りについて行ったんですけど、凄く怖かったです」
「それはそれは・・・・。あれ?そう言えば、亜修羅は?」
「修さんなら、僕が竜さんのところに行った時にはまだ寝てましたよ」
「ええっ!?遅くない?」
「そっ、そうですね・・・・」
桜っちは苦笑いをしながらうなずいてくれた。けど、よく考えてみたら、僕も遅くまで寝てたって言えるよね・・・・まぁ、いっか!
「じゃあさ、とりあえず、竜さんのところに行こうよ!」
「いっ、いいですけど・・・・沢山の子供達がいますよ?」
「いいのいいの!神羅を起こして、情報交換だ!」
「はっ、はい!」
「じゃあ、出発!」
「えっ、あっ、ちょっと!!」
僕は、かなり慌ててる桜っちの手を引いて、竜君の家の前まで訪れる。しかし、そこまで来て、桜っちが慌てて僕の手を振り解く。
「あの、鍵かけてないですよ、番長の家!」
「あっ、そうだね。でも、鍵、持ってないんじゃない?」
「あっ、確かに・・・・。それじゃあ、外に出られませんね」
「もしかしたら、竜君なら鍵を持ってるかもしれないよ!聞いてみようよ!」
「えっ、あっ、ちょっ・・・・」
僕は、再び桜っちの手を取ると、竜君の家のインターホンを押した。
すると、ドタドタッと言う足音が聞こえた後、沢山の子供達と一緒に神羅が顔を出した。
「よぉ、どうしたよ」
「うーん、特に意味はないんだけど、情報交換しようと思って・・・・」
「情報交換?別に、交換するほどの情報なんてなかったと思うけど・・・・」
「まあまあ、上がらせて下さいよ。って・・・・なんか、大変そうだね。子供達に相当懐かれちゃって・・・・」
「まあな・・・・。俺を、上り棒か何かと勘違いしてやがるぜ」
「まあまあ、それじゃあ、上がらせてもらいますね~」
「下だとゆっくり話しが出来ないかもしれないから、二階に行って話した方がいいぞ」
僕がそう言いながら家の中に上がると、いつの間に隣にいた竜君に言われる。その突然過ぎる登場に、僕と桜っちは物凄く驚いたけれど、神羅は驚いてないみたいで、普通にうなずいている。
「あっ、お邪魔します」
「そんなに気使わなくていいんだぜ?」
「はっ、はい、でも・・・・」
「同い年なんだし、もっと気抜こうぜ!」
「そうだぜ、俺も最初は気使ってたんだけどよ、やめろって言われたから、気使うのやめることにしたんだ」
そう神羅は言うけど、普通は、気を使わないようにって考えてても、自然と気を使ってしまうものではないかな?と思う。特に桜っちは、僕らにさえ気を使う人なんだ。多分、気を使うなって言うことは難しいんじゃないかな~と思う。
「まっ、無理にとは言わない。無理に言ったら、それも気を使わせることになるからな。とりあえず神羅、子供達と一緒に遊んでくれてありがとな。凄い助かった。後は、俺がなんとかするから、お前は、二人と一緒に二階に行ってろよ」
「まあな。宿無しのところを救ってもらった訳だし、これぐらいはな・・・・って思ってたけど、結構辛かったし、ここは素直にその好意には甘えさせてもらうぜ」
僕は、そんな二人の会話を聞いて、自分は何もしなくていいのかなと言う風に思ってしまった。だって、よく考えたら、僕だって、無償で人の家に泊めてもらってるわけだ。だから、せめて、何かお手伝いでもしなくちゃね・・・・。
そう思ってうつむいていると、僕の様子に気づいたのか、竜さんが僕の頭にポンと手を置いた。
「子供は、そんな小さなこと気にするんじゃありません!」
「子供って・・・・」
「あっ、悪い気分にさせたら悪いな。なら、気にしなくていいってところだけ覚えててくれればいい。俺は、宿屋をやってる訳じゃない。それに、金を取れるほど素晴らしいサービスをしている訳でもない。だから大丈夫だ!」
「でも・・・・お金とかかかるんじゃないの?」
「ああ、金のことは心配すんなよ。なくなることはないから」
「・・・・?」
僕は、竜君の不自然な言葉に首をかしげるけれど、僕が聞こうとした途端、竜君が早歩きでリビングに入ってしまった為、結局聞けずじまいだった。
「そう言うことだから、俺じゃなくて、竜に遊んでもらえよ!」
「え~なんでさ」
「何でって、俺は、こいつらと話があるからよ」
「じゃあ、僕らもその話に交ぜてよ」
「ダメだ!大人の話だからな」
「そうやって大人大人って言って・・・・もういいよ!」
一人の男の子がそう言って怒ると、それにつられるようにみんなも怒り出して、バタバタと大きな足音を立ててリビングに入ってしまった。残された僕らは、チラチラと神羅の方を見る。何だか、気まずい雰囲気なんだ。
「・・・・たっ、大したこと話さない訳だし、いいんじゃないかな?」
「そうは言ってもよ、ちょっと疲れたんだよな。だから、休みたいんだよ」
「確かに・・・・子供達の相手って、凄く大変ですからね」
「え?そう??」
僕は、自分だけ意見が違うことに驚きを隠せなかったけど、とりあえず、何も言わないでおく。亜修羅がいたら、きっと「お前は子供だからな」とか言われちゃいそうだしね。
「まっ、とりあえず、二階に行こうぜ」
「うっ、うん」
「話したいこともあるしな」
「あれ?さっき、ないって言ってなかったけ?」
「今思い出したんだ。お前ら、そう言う話はきっと好きだと思うからな。まっ、楽しみにしとけよ!」
「おおっ、なんだ、わくわくすんじゃん。聞かせて聞かせて!」
「そうですね、そう言われちゃうと、物凄く気になりますよね」
「んじゃ、二階まで競争だ!」
「えっ、ちょっ・・・・」
急に、競争と言って走り出してしまった神羅に、最初は唖然としていたけれど、慌てて、それぞれ違う言葉を発しながら僕らは神羅を追いかけた。