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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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いい加減、教えてあげたいです

「・・・・と言う訳だから、玲菜を聖夜の家に連れて行ってからにしようぜ」

「え?」


「なんだ、聞いてなかったのかよ?だから、玲菜が聖夜の家に行きたがってるんだけどよ、最近、あそこ周辺は物騒だから、俺達がついて行こうって・・・・」


「・・・・玲菜、今日じゃなきゃいけないの?」


私が問いかけてみると、玲菜は凄く申し訳なさそうな顔をしながら首を縦に振った。この様子を見ると、いじわるをする為にこのことを言ったんじゃないってことはわかる。でも・・・・。


私は、能天気に歩いている瑞人の背中を睨む。あいつは悪くないけど、なんだか、ムカつく。玲菜もあいつも悪くないけど、何だか嫌な気持ちだ。


「・・・・お姉ちゃん、ごめんね?」

「なんで謝るのよ」

「だって・・・・明らかに怒ってるし・・・・」


「怒ってないわよ」

「なんだ、怒ってるのか?まだ、俺が寝過ごしたことに怒ってんのか?」

「もう、怒ってないわよ!」


私は、つい声を荒げてしまって、思わずため息をつく。何が一番不安かって、この場の空気が壊れることが嫌だ。それが不安だった。・・・・でも、もう、不安な気持ちにならなくてもいいらしい。だって、もう、とっくに雰囲気が悪くなってるんだもん。


「・・・・おい、花恋。そんなに怒ることはないだろ?」

「・・・・」


珍しく強い口調で言われて、私は何も言えなくなる。普段の馬鹿みたいな時は、言い過ぎなんじゃないかって思えるほどしゃべることが出来るのに、こうやって怒られるって言うか、口調を強められちゃうと、何も言えなくなるんだ。


でも、それは、瑞人だけなんだよね。だから、他の誰が怒ろうが何をしようが、いつもと変わらないのに、こいつの時だけ違うんだ。怖い訳でもないのにね。


「おっ、お兄ちゃん!そんなに怒らないで!お姉ちゃん、お兄ちゃんと二人きりでお出かけするの、すっごく楽しみだったからなんだよ!」


「え?」

「言わなくていい!」

「えっ、え?何々、メッチャ気になる」

「絶対教えない!言わせない!」


「どうしてそこまで断固として教えてくれないんだよ?って言うか、花恋、俺と出かけるの、楽しみにしててくれてたんだな。あの様子だと、てっきりめんどくさがってるものだと・・・・」


そんな瑞人の言葉に、私は全力で首を振る。そんなことがあるはずない!何年待ち望んだことかってぐらい嬉しかったんだもん!


私はそう思った後、二人の不思議そうな視線に気づいて、慌てて手を振った。


「むっ、虫が飛んでて。やになっちゃうわ、ほんと」

「・・・・今、冬だから、虫っていないんじゃないか?」

「ええっ!?」


瑞人のまさかの反撃に、私の声が裏返る。そして、何とか平静を保とうと深呼吸をする。ダメだ!何だかおかしくなって、目が回っちゃいそう・・・・。


「おい、大丈夫か?なんか、いつもと違うけど・・・・熱でもあんじゃねぇの?」

「ない!絶対ない!」


「だってよ、なんか、顔赤いし言動おかしいし、それによ、その服。寒くないのか?今、真冬だぜ?」


そう言われているうちに、段々と腹が立ってくる。だって!顔が赤いのは本当だけど、言動がおかしいのも本当だけど、私が着てる服は確かに寒いけど・・・・。


そう思って、全て、瑞人の言う通りだと思って愕然とする。でも、服のことだけは言わせて欲しい。私が薄着なのは、あいつが好きだからだ。って言ってもね、半ばやり過ぎたところはあると思う。だって、雪が降りそうなほど寒いのに、コートも着てないんだ。そして、下はミニスカ。うん。さすがにやり過ぎた。だって、今、物凄く寒いもん。


「たっ、確かに、服は薄着だけど・・・・これにはちゃんと訳があるのよ」

「訳?」


「うっ、うん・・・・」


「訳ってなんだよ?風邪をひくってこと以上に大事なことなのか?」

「うん」


別に、わかってもらえるとは思ってなかった。こいつは凄く鈍感で馬鹿なんだもん。わかって欲しいとは思ってなかった。諦めてるもん。


「・・・・あっ!」

「なっ、何?」


「お前がそんなに意地張ってる理由、わかった!あれだろ!」


「なっ、何!?」

「最近の流行なんだろ!お前、そう言うのに敏感だからなぁ~、だろ?そうだろ!」


私は、一瞬だけ期待して焦った自分が馬鹿らしく思えて、思わずため息をついた。こいつは、私が流行に敏感だって言うけど、それは、別に、おしゃれに興味があるからとかじゃないのにな・・・・。


「・・・・馬鹿」

「なんで俺が馬鹿なんだよ!」

「馬鹿は馬鹿よ。ほら、早く聖夜君の家に行くんでしょ?」

「そっ、そうだけど・・・・なんで俺が馬鹿なんだよ!」


私は、そう問いかけて来る瑞人の言葉を無視して、ズンズンと歩き出した。あいつには、到底、私の気持ちはわからない。絶対に、だ。


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