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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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小休止《お菓子作り編》

今回初となる前書きで、少々緊張しております。

いえ、そんなことはどうでもいいですね。今回前書きをつけたのは、今までになかった「小休止」と言うものを投稿したからです。

この件について詳しく知りたい方は、お手数をかけますが、私の活動報告を見て下さい。

前書きとはこうでいいものかと少々不安なのですが、私が伝えたかったのは「小休止のことについて知りたい方は、活動報告を見て下さい」と言うことです。

特に気にならないと言う方は、そのまま本編へお進み下さい。


「これで合っているのか?」

「何か、まずいことになってる予感がするんだけど・・・・」


「電子レンジが爆発しました!」


「俺に聞くな!本に書いてあるとおりに説明してるだけなんだからな!」

「僕等だって、亜修羅に言われたとおりにやってるつもりだもん」


今、何をやっているのかと言うと、菓子作りに挑戦している。そこで湧き上がる疑問があるはずだ。どうして、そんなことをする必要があるのか。それには、ちゃんとした訳がある。

時をさかのぼること一時間前・・・・。


「あ~あ、また失敗しちゃった」

「何をやってるんだ?」


「お菓子作りをやってるんだ。友達からレシピ本をもらったから、早速作ってみたんだ。だけど・・・・」


そこで言葉を切り、辺りを見渡す。台所はとても荒れ果てていて、とんでもないことになっていた。俺は、少し意外に感じた。栞奈は、いつも普通に料理を作るから、こんなことになるとは思わなかったのだ。


台所の中にゆっくりと足を踏み入れて、開いているページを覗き込む。そのページにはケーキのことが書いてあった。しかし、栞奈が失敗するほど難しいものでもなさそうだ。


「今、『どうしてこんな簡単なことが出来ないんだ』って思ったでしょ?」


覚えもないことを言われてうろたえるが、直ぐに首を振るが、一瞬の間が出来た。その一瞬の間が、栞奈の怒りに触れたようだ。


「そんなこと言うんなら、亜修羅が作って見せてよ!」

「いやっ、そんなこと全く言ってないぞ。第一、思ってもいないし」


最もなことを言うと、余計に反感を買ったらしく、さらに大きな声で怒られる。ほとんどケーキ作りが上手く行かないことの八つ当たりに決まっているが、そんなことを言ったら余計に怒鳴られるのは目に見えている。


「そんなことないよ。顔が馬鹿にしてる。そんな風に思うなら、亜修羅が作ってみてよ!!」


無理矢理レシピ本を俺に押し付けると、そのまま荒々しく台所を出て行った。物凄く勝手な行動に、ため息が出て来る。


もちろん、料理なんて作る気はなかった。しかも、甘い菓子だなんて、まっぴらごめんだ。


そんなことを思いながらも、ずっとレシピ本を眺めていると、家のインターホンが鳴った。


足音を立てないようにしながら外を覗くと、運の悪いことに、外にいるのは凛達だった。凛達は、さっき「友達の家に行ってくる!」とか言って飛び出したばかりだから、まさか、こんなに早く帰って来るとは思ってなかった。


とりあえず、めんどくさいことになりそうだから、そのまま放っておいた。居留守をしていてもいいだろうと思ったのだ。


キッチンに戻り、再びレシピ本に目を落とすと、不意に、後ろから話し声が聞こえた。


「あんな趣味があったのかな?」


「趣味と言うか、好きだったんじゃないか?あんな風にじっと見てるんだもんな。いつもは恥ずかしくて甘い物が好きとか言えなかったんじゃないか?」


「そうですかねぇ?」


あいつらは、直ぐに変な方向に話を持って行きたがる。俺が甘い物が好きだって?冗談じゃない。あんな食い物が世の中にあること事態が嫌いだ。


レシピ本を閉じると、気づかれていないと思っている凛達の後ろに回りこみ、背中を押してやった。凛達は、三人で輪のような状態で話していたのだ。だから、背中を押してやったんだ。


「勝手に決め付けてるんじゃない!」

「びっ、びっくりしたなぁ~!何するんだよぅ!!」

「お前等が勝手に人の家に入り込んで、変なことを決め付けてるんだろ」


「人の家って・・・・ここ、一応『僕達』の家でしょ?」


「でも、元はと言えば、俺一人が住んでいたところにお前等が転がって来たんだろ?」

「そっ、それはそうだけど・・・・」

「そんなことより、何でケーキなんか見てたんだよ?」


俺の怒りをそんなことで片付けながら、神羅が聞いて来る。全く、酷い話だ。俺がそんなことで片付けるのはわかるが、人が片付けるなんて変だ。酷過ぎる。


ブツブツ心の中で文句を言いながらも、さっきの出来事を話す。すると、なぜかこいつらは興味を持った。女じゃあるまいし、菓子作りに興味を持つなんて思ってもしなかったから話したのに、とんだ誤算だ。


「ねぇ、僕等で作ってみようよ?」

「やめろ。栞奈でこんな有様になったんだぞ?」

「大丈夫だって!料理には自身があるんだ」


そう言って凄む凛だが、全くそうは思えない。凛は、絶対料理をやったことがないはずだ。レシピ本を覗き込んだ時の凛の顔は、ワンランク上の参考書を目の前にした小学生のようだった。絶対あり得ない。


「嘘をつくな。レシピ本を見た時のお前の顔は、ワンランク上の参考書を目の前にした小学生のようだったぞ」


「そっ、そんなことないもん!」


「凛は初心者でも、俺は初心者じゃない。ある程度の料理は作れるからな。ケーキなんて、お安い御用だ」


「やめろ!」


俺が精一杯反対しているのだが、二人は勝手に話を進め、俺からレシピ本を奪うと、勝手に始めてしまった。呆れて物も言えず、ボーッとしている桜木の方を見る。


「何か、ごめんなさい」

「いや、お前のせいじゃない。あいつらが悪いんだ」


しばらくは二人の様子を見ていたが、その手際の悪さに苛ついて、ついに手を出してしまった。


「なんだよ、族長もやりたかったら、『やりたい』って言えばいいんだよ」

「うるさい!好きで手伝ってるんじゃない!」

「そんなこと言いながら、随分熱心だよね」


そんなことを言って、凛が余所見をしながら小麦粉を入れるため、思い切り床に落ちている。


「おい、前を見ろ!前!!」

「えっ、あっ!!」

「気をつけろよ。初心者なんだろ?」

「初心者って言うな!」


凛を笑った神羅に、凛が怒って小麦粉を振りかける。辺り一面に小麦粉の白い粉末が舞い、俺も真っ白になる。


それを止めようとした時、レンジの方で爆発のような音が聞こえて、慌ててそちらの方を振り返ると、桜木が慌てた様子でレンジを見ている。


「何やってんだ!?」


小麦粉を振りまいている凛の傍を離れ、そちらに近付く。それに反撃するかのように、神羅が卵を投げるのだ。近くにいない方がいい。


「たっ、卵を温めようとしたら、爆発しました!!」

「卵は温めるなって言われなかったか?」

「知らないです!それより、二人を止めて下さい。凄いことになってます!!」


二人を止めるために近付くと、卵を投げつけられた。グシャッと言う卵の割れる音がして、服に卵が着く。オレンジ色の黄身と、ヌルヌルした白身が洋服につき、物凄い不快感を覚える。


「あっ、悪いな、族長」

「ごめんね」


「・・・・」


「とっ、とりあえず、レシピどおりに作りましょうよ?」

「あっ、そうだったよね。目的はその為だよね」


やっと正気に戻った凛と神羅は、卵や小麦粉などがくっついた服のまま、再びケーキ作りを再開した。その服で再開出来る心が理解出来ないが、これ以上目を離すことは出来ない為、俺も真っ白になった服のまま、作業を再開した。


「これで合っているのか?」

「何か、まずいことになってる予感がするんだけど・・・・」

「電子レンジが爆発しました!」


「俺に聞くな!レシピ本に書いてあるとおりに説明してるだけなんだからな!それから桜木!もう卵を電子レンジに入れるな!」


「僕等だって、亜修羅に言われたとおりにやってるつもりだもん」

「そうだぜ。言われた分量の通りに作っても、全然上手く行かないんだ」


「そう書いてあるんだ。仕方ないだろう」

「あ~あ、作るんじゃなくて、食べたい!ケーキ食べたい!!」


凛がそう大声で怒鳴りながら、泡だて器を放り投げる。それが桜木に当たり、とても痛そうだ。


ケーキを食べたいとは思わないが、ケーキ作りに懲りたことは同感だ。もう、全身がケーキみたいなのだ。これ以上酷い有様になりたくない。


「俺達がケーキみたいじゃないか」


「そうだね。生クリームを塗ったらそのままだね。と言うか、ケーキは無理でも、生クリーム食べたい」


「生クリームは食い物じゃないぞ。塗って食べるものだぞ」

「まあね。でも、それぐらいお腹がペコペコなんだよ」


四時間前の勢いとは裏腹に、その場にへたり込んでしまう。四時間もこんなことを続けてたのだ。誰でも疲れて来る。


その時、再びインターホンが鳴り、俺はその服のまま出て行った。その時は忘れていたのだ。ケーキのような格好をしていることに。


ドアの外には、栞奈と知らない女がいて、俺のことを唖然とした顔で見ている。


「なっ、何やってたの?と言うか、何をつけたの?」

「・・・・卵と小麦粉と、片栗粉」


片栗粉はケーキと関係なかったが、凛が勝手に取り出して振りまいたのだ。


「もしかして、ケーキ作ってたの?」

「まあな。凛達も来て、一緒に作っていた」

「そっか。成功した?」


「いや、途中で乱闘が起こって、部屋中酷い有様になっただけだ」


「なら、ケーキ食べたいでしょ?」

「?」

「ほら、この子が作ってくれたんだよ。お土産に持って来ようと思って」


栞奈の友達と思われる女がお辞儀をする。あんな状態の台所を見せるのは嫌だが、仕方なく中に入れた。


「あっ、栞奈ちゃん。その子は?」

「私の友達。それより、ケーキ食べたくない?」

「えっ、ケーキ?食べたい!ずっと思ってた!!」

「なら、食べよう♪」


台所の有様を見ても、栞奈は怯まず、凛達の姿を見ても怯まなかった。俺の姿を見て面識を作ったのだろう。ある意味凄い。


「うわぁー美味しそう!やっぱり、ケーキは作るよりも食べる方がいいよ」

「そうだな。もう、懲り懲りだ」

「でも、そのおかげで、こんな美味しいケーキが食べられたんですよ。よかったじゃないですか」


それぞれ、思い思いのことを言いながらケーキを食べている。俺は、それを離れた場所で眺めていた。


その後の片付けは一週間にも及んだが、一つのいい思いでとして残った。


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