大胆かと思ったら、そうじゃなかったりします
「・・・・亜修羅はさ、私のこと、本当はどう思ってる?」
「どう思うも何も・・・・」
「好きだよ」
「・・・・」
「ずっとそう思ってた」
「それは・・・・何々が好きって言う意味か?例えば、友達として好きとか」
俺がそう聞くと、栞奈が目を丸くして驚くのが見えて、自然と違うことがわかる。しかし、俺には、それ以外の言葉がわからないのだ。
「なっ、なんだよ!それなら、どう言う意味だよ?」
「ううん。なんでもない♪」
「・・・・なんだよ」
「気にしなくていいの!」
「ほんとかよ?」
「うん。なんだかちょっと、安心した」
「なにがだ?」
「亜修羅が鈍感だからさ!」
「だから!鈍感って言うなって言っただろ?」
「ごめんごめん。でもなぁ~、その鈍感ぶりは、他の女達の前だけで発揮してくれればいいのに・・・・」
「?」
そう小さく呟くのが聞こえて、俺は聞き返そうと思って後ろを振り返る。しかし、栞奈はそっぽを向いていて、こちらを向いてもくれない。
「何か、傷つけることでも言ったか?」
「ううん」
栞奈はそれだけ言うと黙ってしまって、俺は、何か声をかけようにも声をかけられない。顔を背けているから、どんな顔をしているのかわからなくて、顔を見ることで様子を伺うことも出来ないし、八方塞だ。
しばらくの沈黙が流れる。車が走る音なども聞こえなくて、その沈黙が気持ち悪いと感じた時、今までずっとしゃべらなかった栞奈が、聞こえるか聞こえないかぐらいのとても小さな声で、ボソッとつぶやいた。
「・・・・どこか行きたいな」
「ん?」
「あっ、ううん。なんでもないの」
「・・・・どこか行きたいのか?」
「まっ、まあね」
「それじゃあ、明日、どこか行くか?」
「・・・・二人で?」
「まぁ、栞奈がそうしたいなら、それでいい」
俺がそう答えると、栞奈の顔が輝いて、満面の笑みを浮かべる。
「やった♪・・・・でも、どこに行くの?」
「栞奈が決めていいぞ」
「じゃ、映画を見に行こうよ!」
「そうだな」
俺がうなずくと、栞奈がとても喜ぶ。その姿は、子供の時以来見たことがないもので、自然と俺も、嬉しくなる。
「嬉しそうでよかった」
「うん!すっごく嬉しい!」
とても嬉しそうな栞奈を見て、遊びに誘ったのはよかったと思った。最近は、あんまりこう言うこともなかったし、いい気分転換になるかもしれない。
「あっ、あそこ!あそこが、鈴香の家だよ!」
「・・・・でかいな。まるで、聖夜の家みたいだ」
「うん。鈴香も、お金持ちの子だからね」
「そうなのか・・・・」
世の中には、案外近くに大金持ちがいるものだなと感じる。まさか、ここ最近で、二人の大金持ちに出会えるなんてな・・・・。
そんなことを思っている間に、いつの間にか屋敷の前に来ていて、俺は後ろを振り返る。すると、栞奈は目を瞑っていて、いつの間にか眠ってしまったのかと思い、屋敷のインターホンを押した。すると、屋敷の門が勝手に開き、とりあえず、敷地の中に入ることが出来た。
しかし、そこからが大変だった。なんせ、この屋敷の庭はとても広く、迷路のように作ったつもりはなさそうだが、迷子になってしまった。そして、情けないことに、俺が庭の中をグルグル迷ってるところに一人の使用人がやって来て、ようやく、建物の中に入ることが出来た。その間、約三十分。恐ろしく時間がかかってしまった・・・・。
「鈴香様から話は伺っております。今、彼女を連れて参ります」
「あっ、ああ・・・・」
そっちは話を伺っているみたいだが、俺は、話が全く読めなくて、不思議に思いながら玄関で待っていた。すると、奥の方から若いメイドが走って来て、俺を見てとても驚く。
「もっ、もしかして、修さんですか?」
「あっ、ああ。そうだが・・・・」
「ええっ!?どっ、どうしよう・・・・まさか、ここまでとは・・・・」
「・・・・は?」
「あっ、いえ、なんでもないんです!栞奈さん、眠っちゃってるみたいですね」
「ああ。いつの間にか寝てたみたいだな」
「・・・・伺ったとおりだわ」
「何か?」
「いっ、いえ!」
俺は、ボソボソと何かを呟いている女の言葉が気になって、聞き返したいなと思ったが、あまり仲がよくもないのに聞くのはどうかと思い、とりあえず、メイドの後について屋敷の中を歩く。
見た感じも大きかったが、実際中に入ると、とてつもなく大きかった。天井なんか、はるか遠くに見えて、まるで、空みたいな高さだ。
「どうぞ、この部屋に」
「ありがとう」
俺が言うと、そのメイドは少し顔を赤くしながら走って行ってしまった。俺は、不思議に思いながらも部屋の中に入り、ベットに栞奈を寝かせた。すると、その衝撃で目が覚めたのか、栞奈が目を開けた。
「あっ、あれ?ここ、どこ?」
「お前の友達の家の、ある部屋だ」
「あっ、そうなんだ。もしかして私、いつの間にか眠っちゃってた?」
「まあな。だが、こんな時間だ。仕方ないだろう」
「うん。ありがとう。あっ、そうだ。明日、何時に待ち合わせするの??」
「・・・・朝九時に竜の家に来てくれ」
「うん、わかった!明日、楽しみ過ぎて、眠れないかも!」
「そうか。そこまで喜んでくれるのはよかった。でも、ちゃんと寝るんだぞ」
「うん、わかってるよ!心配してくれてありがとね」
「当たり前だ」
俺はそう言うと、栞奈も無事に送り届けたことだし、さっさと家に帰ろうと思って部屋から出ようとした時、ベットに入っているはずの栞奈に引き止められる。
「待って!」
「ん?」
「おやすみ!」
「・・・・ああ」
俺はそれだけ答えると、部屋の外に出た。まさか、それを言う為だけに引き止められるとは思ってなかったのだ。・・・・だが、栞奈らしいなと思った。栞奈は、昔から、こう言うことをする奴なのだ。
俺は、昔のことを思い出して少しだけ笑うと、明日の為に、早足で帰路についた。