女心の難しさは異常です
「おい!」
「あっ・・・・」
「どうしたんだよ?」
俺がそう聞いた理由。それは、栞奈が地面に座り込んでいたからだ。
「ちょっと、走ったら足くじいちゃってね・・・・。慣れないヒール履いたから・・・・」
「歩けるか?」
「・・・・無理かな?」
「そうなのか?」
「うん。歩けなくて、座ってたんだもん」
「こんなところでゆっくりしてたら風邪ひくぞ。ほら、乗れ」
俺がそう言ってしゃがむと、栞奈は少し嬉しそうな顔をして、背中に乗った。
「どうしてそんなに嬉しそうなんだよ?」
「ううん。なんでもないの。それで、今日は、どうして来れなくなっちゃったんですか?」
「聖夜が誘拐されて、捜してたら、時間がかかっちゃったんだ」
「・・・・それだけ?」
そう問うて来る栞奈の方に顔を向けると、栞奈は全てをわかっているような表情をしていた。何だか変な表現だが、心を見透かされているように感じたのだ。
「・・・・隠してもバレてるみたいだな」
「どうだろうね」
「・・・・わかった。ちゃんと話す。聖夜を助けた後、女達が誘拐されて、それを助け出した」
「それって、亜修羅のクラスメートの子のことでしょ」
栞奈に言われ、俺は思わず足を止める。俺は、栞奈にそのことを言ってないはずだ。それなのに、どうしてこいつはあいつのことを知ってるんだ・・・・。
「女の勘ってところかな?」
「・・・・マジかよ」
「一度言ってみたかったんだ♪」
「それじゃあ、女の勘とやらで、全部わかってるんだろ?」
「想像は出来てる。でも、聞かせて欲しいな」
「・・・・わかった。その後、約束を果たした」
「約束?」
「聖夜を探してる時、あいつに会って、一緒に踊ることを約束したんだ。だから、それを実行した」
俺が言うと、栞奈のため息が聞こえる。それがどう言う意味を指しているのか何となくわかるが、こう言う時こそ、鈍感が発動してほしいと思う。
「へぇ~、そうなんだ。ふーん」
「・・・・なんだよ?」
「別に。わかってたことだから、いいけど」
「怒るなよ」
「怒ってないもん」
そう言う栞奈の顔は明らかに怒ってる。口調も、声色も、いつもより穏やかじゃない。これは、絶対に怒っているに決まっている。
「・・・・俺が悪かった」
「謝らなくてもいいよ。約束を破っちゃいけないからさ」
「・・・・それじゃあ、怒ってないのか?」
「怒こって・・・・る」
「やっぱりな」
「・・・・わがままだって思ってる?」
「・・・・は?」
「ううん。なんでもない」
「?」
相変わらず難しい栞奈の態度に俺は首をかしげる。昔からそうだった。栞奈の態度は、たまに俺を困らせる。よくわからないことが多いのだ。
「・・・・亜修羅はさ、私のこと、本当はどう思ってる?」
「どう思うも何も・・・・」
「好きだよ」
「・・・・」
「ずっとそう思ってた」
「それは・・・・」
あまり意味がわからない。それは、どう言う意味の好きなのか。好きと言う言葉にも、色んな使い方がある。そう言う風に考えると、言葉と言うのは、本当にめんどくさい。
「何々が好きって言う意味か?例えば、友達として好きとか」
俺がそう聞くと、栞奈が目を丸くして驚くのが見えて、自然と違うことがわかる。しかし、俺には、それ以外の言葉がわからないのだ。
「なっ、なんだよ!それなら、どう言う意味だよ?」
「ううん。なんでもない♪」
「・・・・なんだよ」
なぜだかわからないが、栞奈の機嫌が直ったのがわかる。よくわからないけど、とりあえず、怒りが収まってくれたようで、よかったと思う。