表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
335/591

簡単なこと

「次に、もう一つ話したいことがある」

「・・・・そうだな。なんとなく、話すことは想像出来る」


「そうか。でもまぁ、ちゃんと説明するからな。まず、率直に言うと、僕の正体は、スパイだ」


聖夜は、事前に、「率直に言う」と言ったが、それにしても話がぶっ飛び過ぎている。思わず転びそうになったほどだ。


「すっ、スパイって、あの映画とかのやつか!?」

「まあな。昔はそうだったんだ」

「昔!?」


「うん。生まれた時から、スパイになる為の学校に通ってて、三歳から本格的な活動を開始した。それに加え、いろいろ発明もしてたぞ」


「うわぁっ・・・・そんな三歳児いたら怖っ・・・・」


「まあな。僕は天才って言われたからな。まぁ、それはおいといて、僕は、現在スパイ活動は休業中だ。生まれた時からずっと裏の世界で生きてたから、表の世界が見たくなって、日本に来たんだ。しかし、僕はスパイをやっているから、当然うらみも買うはずだ。その為、今日みたいな出来事が、今までに三回ぐらい起こったんだ。で、その度に僕は町を移動し、転校を繰り返した。だから、今回も例外なく引っ越そうと思った。・・・・でも、僕をこの町に留めておこうと言う変わり者が現れてな。そいつのせいで、転校しようと言う気持ちが揺らいだ。でも、転校はするつもりだ。僕のせいで、怪我をする人を増やしたくないしな」


そう言う聖夜は、何だか少し悲しそうで、俺は、何かを言ってやりたかったが、うまい言葉が見当たらない。


「じゃあよ、いっそのこと、金髪を黒髪に染めてみたらどうだ?」

「それはダメだ!僕は、金髪に誇りを持ってる。それは譲れない!」

「でもよ~」


「神羅、こいつは、妙にこだわりがある奴だ。ダメだと言うことは、何度言っても妥協しないぞ」


「そうなのか?」

「ああ」


「僕も、本当は転校したくない。あんなことを言ってくれる奴は初めてだったから。でも、そう言ってくれた奴を巻き込みたくないから・・・・」


「いたいなら、いればいいじゃないか」

「だから・・・・」


「自分のせいで関係のない奴を巻き込むのが嫌なら、巻き込まないように努力すればいい。怪我をさせるのが嫌だったら、聖夜が守ってやればいい。それだけのことだ」


俺の言葉に、最初は納得が行かないようだったが、最後の最後には大きくうなずくと、ため息をついた。


「わかった。僕はここに残る。その変わり、周りの人達に迷惑をかけない用に、最大限努力する。そして、みんなが怪我をしないように守る。修も手伝ってくれるか?」


「・・・・まぁ、あまり気乗りはしないが、いいだろう。神羅も手伝うんだぞ」

「えっ!?マジですか?」

「マジだ」


「そうか!二人が味方になってくれるのなら、凄く心強いぞ!と言うことで、よろしく頼んだぞ、修、神羅」


「おっ、おう!もう、ここまで来たら引き返せないしな、族長がそう言うなら、俺も従うぜ」


「・・・・いろいろ言いたいこともあるが・・・・まぁ、いいだろう。で、話は終わったか?」


「うん。長い間付き合ってくれてありがとう。家まで車を出そう」

「ああ、悪いな」


「それから、家が壊れちゃったらしいな。竜から聞いた。だから、全速力で直させる。普通の工事なんかよりもかなり早く終わるだろうから、楽しみにしててくれ」


「ありがとう」

「いいんだ。友達が困ってたら助けるのが当たり前。そう教科書に書いてあった」

「友達?」


俺が問い返すと、聖夜はなぜか慌てた後、顔を赤くして、後ろを向いてしまった。


「いっ、いいから、早く行け!僕はもう寝るんだ!部屋から出て右側の通路をまっすぐに行けば車があるから、それで送って行ってもらえ!いいな!!」


聖夜はそれだけ言うと、少し出遅れた俺達の背中を思い切り押して、部屋の外に連れ出した。そして、自分は、左側の通路を早足で歩いて行った。


「まさか、お前が友達って思っててくれたとは思ってもみなかったが、嬉しかったぞ!」


俺がそう言ってやると、聖夜は一瞬だけこちらを振り返ってうなずくと、また直ぐに前を向いて、走り出してしまった。よほど恥ずかしいのだろう。


「なんか、可愛らしいよな」

「まあな」

「おっ!族長が聖夜を可愛いって言った!」


「うるさい!そう言う意味じゃない!」


「それってどう言う意味だよ?」

「・・・・わからん。とりあえず、帰るぞ、竜のところに。凛が熱出してるんだろ?」

「おっ、おう!あっ、ちょっと待てって!」


俺は、後ろから慌ててついて来る神羅との間を引き離すように、早足で歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ