表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
331/591

鈍感でツンデレで、告白に権利はいらないと思う人

「あの・・・・伊織君、私の家、ここなんだけど・・・・」


そう女に声をかけられて、慌てて足を止める。いつの間にか、こいつの家の前に来ていたようだ。


「ごっ、ごめんね・・・・送ってもらっちゃって」

「別にいい。送るって言ったのは俺だからな」

「うっ、うん・・・・。あっ、あのさ、お願いがあるんだけど、いいかな?」

「まぁ、場合によっては断るけどな」


俺がそう言った途端、女の顔から血の気が引いていくのがわかって、どうしようかと思ったが、とりあえずは様子を見ておくことにする。


「で、その願いってなんだ?」

「あっ、あのさ、もしよかったら、番号、教えてくれないかな?」


「・・・・番号?家の電話番号か?それなら、連絡網が書かれた紙に書いてなかったか?」


「そっ、そうじゃなくて・・・・」

「・・・・?」


俺は、女が何を言いたいのかよくわからなくて首をかしげる。番号と言って思いつくのは、家の番号ぐらいだ。しかし、女は違うと言う。こいつは、何の数字を聞きたいって言うんだ?


「あっ、あの・・・・携帯の」

「・・・・何で?」

「え?あっ、あの・・・・訳はないんだけど・・・・」

「まあ・・・・別にいいか」


俺は、女から渡された紙とペンに凛達の番号を書くと、女に渡した。すると、とても嬉しそうに受け取った為、何だか不思議な気持ちになる。


「そんなに嬉しいか?」

「え?」

「俺の思い違いならそれでいいが・・・・」


「うっ、嬉しいよ!凄く!」

「そうか。まぁ、仲良くしてやってくれ。きっと、お前と相性がよさそうだ」

「え?」


「凛達のことだ」


「え?あっ、あの・・・・もしかして、伊織君の番号は書いてないの?」

「あいつらの番号を教えて欲しいんじゃないのか?」

「そっ、そうだけど・・・・伊織君のも聞きたいなって・・・・ダメかな?」


「別に、ダメじゃない。ただ、変な奴だな、お前」

「なっ、なんで?」

「携帯の番号を聞いてまで話したい相手とは思えないからな」


「うっ、うーん」

「これ」

「あっ、ありがとう」


女は、俺が差し出した紙をおずおずと受け取ると、ゆっくりとした足取りで歩き出した。


「あっ、あの・・・・それじゃあ、ありがとうございました!」

「ああ。早く寝ろよ」


俺はそれだけ言うと、聖夜の家に戻ろうと歩き出した時、家に入ったはずの女に声をかけられて、今度は何かと振り返る。


「あっ、あのさ、ちょっと話したいことがあるんだけど、もう少しだけいい?」

「ああ。出来れば早くして欲しいけどな」


「そっ、それじゃあ、出来るだけはやく終わらせられるように頑張るね。えっとさ、私、前に伊織君に告白して、あっさりフられちゃったでしょ?でもさ、どうしても諦めきれないんだ。だから聞くけど、私のこと、どう思う?はっきりと言ってもらっていいよ。嫌なら、もう関わろうとはしないから。諦めるからさ・・・・」


そう聞いて来る女の顔は、今まで見た中で一番真剣な表情で、話をはぐらかすのはいけないようなことだと思えた。


しかしだ。例え、俺がこいつのことが好きだったとしても、人間と妖怪は、深く関わりあってはいけないと言う決まりがある。だから、どうあがいても、無理なものは無理なのだ。しかし、妖怪とかそう言うことを言えないから、ある意味説明が難しい。


多分、こいつのことは嫌いじゃないと思う。最初はウザイぐらいに嫌だったが、今は、そこまで嫌とは感じなくなった。ただ、変な気持ちになるだけだ。しかし、これは、決して好きだと言う訳でもなさそうだ。


俺は、何だかわからなくなって来て、無言で首を振った。


「・・・・やっぱり、嫌いなんだ・・・・」

「わからない」

「えっ?」

「俺には、よくわからない。ただ、それだけなんだ」


自分でもはっきりと言えず、曖昧な答えだとはわかっていたが、そうとしか答えようがない。下手に変なことを言うと、またややこしい事になりそうだしな。


「・・・・そっか。じゃあ、嫌いじゃないんだね」

「・・・・」


「私に、チャンスをくれる?」


「・・・・は?」

「チャンスって言うか、権利。私が、伊織君に告白する権利」


思ってもみない発言をされて、俺は思わず何も言えなくなる。


・・・・告白に、権利は必要なのだろうか?そんな話は聞いたことがない。それに、前の時は権利も何もなかった。なら、権利なんて必要ないんじゃないのか?なのに、何で権利を求めて来るんだ?俺の周りには、不思議な奴らが多すぎる。何を考えているのかさっぱりわからない。


「権利なんて、必要なのか?」

「え?だって・・・・」


「そいつ本人が思う気持ちを言うのに、権利なんていらないと思う。それが俺の考えだが、お前がどう思うかは自分次第だ」


「わかった。ありがとう。変なこと聞いちゃって、ごめんね」

「話はそれだけか?」

「うん。それじゃあ、おやすみなさい」


女はそれだけ言うと、今度はしばらく待っても顔を出さない為、今度はちゃんと家の中に入ったのだなと確認して、改めて、聖夜の家に向かうことにした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ