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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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色んな意味で難しい人ですね

「・・・・今、何時かな?」

「十二時はとっくに過ぎて、多分、一時近いんだろうな」

「魔界のシンデレラは、何時に帰宅するんですか?王子様?」


そう女に問われ、俺は少しだけ顔をしかめる。と言うのも、さっきのあれは、本当に単なる詫び目的でやったのだ。出来れば、もう二度とやりたくない。それほど恥ずかしいことだった。


俺は、それがわかっていながらそう聞いてくるんだろうなと思って、女の方を振り返ってみると、なぜか目を瞑っている為、俺の表情での抵抗は効かないことになる。そしたら、言葉で言うしかないのか・・・・。


そう考えて、自然と歩みが遅くなる。出来れば、言葉で意思は伝えたくない。俺は言葉が苦手だから、相手を傷つけるようなことを言ってしまうかもしれない。だから・・・・。


「・・・・どうしたの?」

「魔界のシンデレラは、四時に家に帰るんだ」


「ええっ!?そんなに遅い時間なの!?」


「・・・・知らん。俺が作った話だからな」

「あっ、ごめん・・・・」


女に謝られて、俺は慌てて首を振る。そうじゃない。俺が言いたいのは、そんな冷たい言葉じゃないんだ。


「どうしたの?」

「・・・・お前は、よく、俺みたいな奴に話しかけてくるよな」

「え?」


「・・・・お前だって、傷ついたことがあるんじゃないのか?俺の言葉で。それなのに、よく話しかけてくるなって思ったんだ」


「うーん。確かに、伊織君の言葉は、少しだけキツいところがあると思う」


女の言葉を、俺は無言で聞いていた。なぜだかわからないが、口を挟めなかったのだ。


「でも・・・・伊織君、優しいところだって一杯あるじゃない。だから私は、伊織君に話しかけられるんだ。・・・・って言っても、迷惑かな?」


「・・・・いや」


俺はそれだけ言って首を振ると、上を見上げる。空は満天の星空で、まるで、プラネタリウムのようだった。


「・・・・伊織君って、意外とシンデレラとかの話って好きなの?」

「なんで、そう思うんだ?」


「だって、わざわざ魔界のシンデレラの話を作ってくれたから・・・・」


「俺は、そう言うのは好きじゃない。ただ、そう言うのが好きな奴がいたんだ」

「・・・・それって、さっき言ってたダンスが苦手な人?」


「まあな。あいつが、魔界のシンデレラの話をすると凄く喜ぶから、色んなパターンを考えてたんだ」


そうだ。あいつはシンデレラと言う人間界の話が好きだった。その好きぶりは半端なくて、俺は毎日のように聞かされていた。だから、シンデレラの違うバージョンの話を作れるまでになったのだ。


「あのさ、もしよかったら、魔界のシンデレラの話、してくれない?」

「・・・・1から365まであるぞ」


俺の答えに、女が息を飲むのが聞こえたけれど、その直後、笑う声が聞こえる。その感覚が、何だか昔を思い出させ、自然と心が穏やかな気持ちになる。


「それじゃあ、伊織君のおまかせで」


・・・・一番難しい答えが帰って来た。こう言う言葉を返されるのが、一番困る。それなのに、女達は、よくこんな返しをするのだ。どうしたらいいのだろうか・・・・。


それにしてもだ。シンデレラの話をしていたと言うのは随分と前のことだから、あまり覚えていないのも事実である。しかし、あんなことを言ったのだから、今更忘れたと言うのも何だか恥ずかしい為、とりあえず、話し出す。


「あるところにシンデレラと言う娘がいました。その娘はとても綺麗で美しいのですが、着ている服はボロボロで、髪は誇りだらけ。その為、誰も彼女の魅力に気づきませんでした。

しかしある時、城の王子様がお后を決めると言うことで舞踏会が開かれることになりました。シンデレラはその舞踏会に参加したいと思いましたが、継母やイジワルな姉達は、シンデレラに衣服を与えてはくれません。その為、城で行われるパーティーに参加出来ませんでした」


「・・・・何だか、随分と違うお話なんだね」

「当たり前だ。俺が考えた話だからな」


「あっ、ごめんね、口挟んじゃって。続き、どうぞ」


「・・・・話す気が失せた」

「ごっ、ごめん・・・・」


「別にいい。大して面白みのない話だ。俺は、夢見る乙女じゃない。そんな奴が考えたシンデレラなんて、所詮、夢のかけらもないものだ」


「そうなのかなぁ~」

「・・・・多分な」


正直、自分でもよくわからない。ただ、話を中断したのは、何だか馬鹿らしく思えたからだ。あの時は、あいつが喜んでくれるからシンデレラの話を考えていたものの、今考えると、随分恥ずかしいことをしていたな・・・・って思ったからだ。


「伊織君、今さ、機嫌がいいの?」

「・・・・なんで、そんなこと聞くんだよ?」


「だって、何だか今は、いつもと違う雰囲気だから・・・・なんて言うか、口調が優しいって言うか・・・・あんまりよくわからないけど、そんな感じがするの」


女の言葉に俺は首をかしげる。別に、いつもとあまり変わらない。・・・・いや、少しだけ、心が穏やかだ。もしかしたら、それが、こいつの言っていることと関係があるのかもしれない。


「今は、いつもと比べて心が穏やかだ。それが関係しているのかもしれない」

「どうして?」

「・・・・知らん」


「そっか・・・・」

「でもまぁ、少しだけホッとしたよ」

「なんでだよ?」


「うーん、わかんない」

「そう言うのはずるいぞ」

「でっ、でも、伊織君だって、結構そう言うんじゃない?」


図星を突かれ、何も言えなくなる。確かに、自分もこいつと同じような返しをしていることが多々ある。それなのに、こいつにだけちゃんと話せと言うのは理不尽な話だな。


「・・・・それじゃあ、それでいい」

「もっ、もし、不機嫌な気持ちにさせちゃったらごめんね?」

「俺はいつも通りだ」


「でも・・・・何だか怒ってるような・・・・」

「いつもそんな感じだろ?」

「まぁ・・・・」


「・・・・そこは否定しろよ」

「え?」

「・・・・はぁ」


俺は、イマイチ理解出来ていない女にため息をつくと、今までより少し早く歩く。何だか、穏やかな気持ちも薄れて来た感じだ。


「・・・・あっ、あの・・・・」

「そう言えばお前、服、どうしたんだ?」

「あっ、そう言えば!聖夜君の家に忘れたままだった!」


「・・・・取りには戻らないからな」

「うっ、うん・・・・。明日、自分で取りに行くから大丈夫だよ」

「・・・・ああ」


何だか変な気分になって来る。機嫌が悪い訳でもないのだが、いい気分でもない。何だか複雑な気分で、あまり心地がよくない。そんな気持ちを振り払うように、自然と早歩きになってしまうようだ。


「あの・・・・伊織君、私の家、ここなんだけど・・・・」


そう女に声をかけられて、慌てて足を止める。いつの間にか、こいつの家の前に来ていたようだ。


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