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想造世界  作者: 玲音
第二章 三つの国宝
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魔界の国宝 冥道編 覚醒

「わかったわ。あなたの気持ちはよ~~~くわかった。あなたは合格!」

「・・・・え?」

「あなたは無事に天国に行くことが保障されたわ」

「でも、僕は、沢山の人を殺してきちゃいました。それで天国に行ったら・・・・」


「ええ。あなたが今までやってきた事は、決して許されることじゃない。でも、人間界を助ける為に、自らの命を投げ出す人を地獄になんか落とせないわ。それに、今は心に闇がないもの。真っ白で、闇の面影のない心。それがあるから、あなたは天国に行くの」


そう魔光霊命様に言われた途端、自分の中の何かが膨れ上がったと思ったら、パチンと弾けた。体が急に熱が出た時みたいに熱くなっていくのがわかる。


自分でもおかしくなっちゃったのかと思ったけど、何とかおかしくはなっていないようだった。でも、自分の目はおかしくなってしまったようだった。


「なっ、何これ!?と言うか、犬神の面影が全くなくなっちゃった。耳もないし・・・・」

「あら、あなたは犬神でもあり、エンジェルでもあったのね。どうりで心が真っ白だと思ったわ」


「そんなことより、説明して下さい!僕の目がおかしくなっちゃったんですか?それとも頭ですか!?」


自分の着ている洋服に戸惑い、目の前にいる魔光霊命様の正体を忘れて、思い切り肩を揺する。


僕の来ているものと言ったら、天使、エンジェルだった。真っ白のワンピース(?)に、白いサンダル。背中には自分の体よりも大きい純白の羽がついてる。そして、手には・・・・。


「天華乱爪!!」


僕が持っていたのは、大抵の天使が持っている弓(あれ?弓を持ってるのはキューピッドだけだったかな?)ではなく、子供と戦った時に真っ二つに折れたはずの天華乱爪だった。


天華乱爪の刃は折れていなくて、鋭く光っている。はっきり言って、折れる前よりも、綺麗になってる。


《やっと覚醒を果たしたか、犬神よ。覚醒しないと、我がいくら魔界の国宝と言われていても、役にたたないのだ。やっと役に立てるぞ》

「は?かくせい?」


僕は訳がわからず、思い切り肩を揺さぶり過ぎて、目を回している魔光霊命様の方を振り返った。


「あの、すみませんでした。魔光霊命様。よろしければ、覚醒の件をお話していただけないでしょうか?」


「ええ、いいですよ。妖怪は、元から三回まで覚醒することが出来るのです。しかし、覚醒と言っても、そう簡単に出来るものではないので、大体の妖怪はしないのですが・・・・。でも、あなたは犬神から、エンジェルに覚醒したのです」

「一ついいですか?」


「なんですか?」

「エンジェルに覚醒してしまったら、もう、犬神の姿には戻れないんですか?同じように、人間の姿にも」

「いいえ、戻ることは出来ます。安心して下さい。それより、早く行ったほうがいいと思いますよ?では、私は他にもやらなくてはいけないことがあるので、これで失礼します」


魔光霊命様はそう言い残すと、あっと言う間に消えてしまった。まだ聞きたいことがあるのに・・・・。


《犬神よ、さっさと行くぞ》                                        

「はいはい。わかってるよ・・・・って言っても、どこから出ればいいのさ?」

《さっそく我の出番だな。我を頭上に掲げて、天井を引き裂くように動かすのだ》


何だかよくわからないけど、とにかく天華乱爪を頭上に持ち上げて、天井を引き裂くように動かすと、上の方から冥道の道が見えた。


「よっし。今度は負けないぞ!と言うか、僕って死んでるの?それとも生きてるの?」

《見ての通り、生きておるだろう。魔光霊命様が、貴様を助けてくれたのだ。感謝しろ》

「ねぇ、あのさ、貴様って言い方やめてくれない?何だかバカにされてるようで嫌なんだけど」


《何を言う。貴様とは敬語だぞ。みな勘違いをして使っているようだが、漢字を見ると、貴族の貴に、王様の様ではないか》

「そうなんだ。初めて知ったよ」


驚きながらも、引き裂いた穴に手をかけて、自分の体を持ち上げる。そして、冥道の道に手をかけてよじ登る。


何か、不思議なことに、随分深く落ちた気がしていたのに、そんなに深いところにはいなかったようだ。それに、今は落ちたところが固まっていると言うか、乗ることが出来る。何だか不思議だよ、冥道って。


「貴様!なぜここにいる!!?」


明らかに驚いた様子の子供に、僕はおかしくなって笑ってしまった。その顔は、本当に子供と言う色で染まっていた。今までは、子供だけど子供じゃないと言うような顔をしていたのに、今は子供としか思えない。


「死の世界から、また冥道に戻って来ちゃった。っと、時間がないんだった。続きをしようよ」


僕の言葉に、やっと自分の立場を思い出したように、子供は構える。でも、戸惑いが隠せない様子でいる。


《犬神よ、我の力を示す時が来た。我を使って空を切るのだ!》

「何それ?どう言う意味?」

《とにかくやってみるのが一番なのだ》

「わかったよ」


取りあえず、普通に何もないところを切る。すると、何か白いものが無数に子供の方に飛んで行った。僕はしばらくの間、目をぱちくりさせていたけど、この天華乱爪の凄いところはこれだけじゃないらしい。


《今のは真っ直ぐしか飛ばないが、斜めに切れば、ブーメランのように回ったりもするぞ。まぁ、戻っては来ないがな》


言われた通りに斜めに切ると、さっきの白いものが斜めに飛んで行った。あの白いものはなんだろうか?


「あの白いのは何?」

《剣圧だ。刀の圧力が強くて目に見えるようになることがある現象だ。我は軽いが、剣圧を強くすることは出来る。ちなみに、剣圧は当ったら大変だからな。気をつけるのだぞ》


「おい、俺を無視するな!」

「してないけどさ、使い方がイマイチよくわからなくてさ」

「それは、凄い剣なのか?」

「そうじゃないかな?本人がそう言ってるんだし」


「そうか。なら、どちらが強いか一本勝負と行こうじゃないか」

「へ?」

「そんなマヌケな声を出しても無駄だ。行くぞ!」


その子は、勝手に話を進めると、刀に意識を集中しだした。その刀がドンドンどす黒い色になって行くのがわかる。僕も何かしないと・・・・。


《あの子を救うんじゃなかったのか?それとも、腕ずくで止めるのか?》

「そんなこと言ったって・・・・。あの子、とんでもないことしそうだし・・・・・」


明らかにまずい状況に陥っているのは誰でもわかるはずだ。この状況でそんなことを言われても・・・・。


「僕だってあの子を救いたいけどさ。どうやったら・・・・」

《取りあえず、この冥道から引き離してやれ。天国にも地獄にもいけない。その狭間と言うものは、一番寂しいものだ》


僕は、そう言われて、どのように動けとも教えてもらってないのに、自然と体が動いた。


何だか、心が安らかになって行く。


ふと下を見上げると、僕の足は地面から遠く離れた空中にいた。いつもなら驚くところだろうけど、なぜか驚かない。


子供は、僕に向かって刀を振った。すると、こっちにどす黒い剣圧が飛んで来た。僕はと言うと、動かない。と言うか、動けない。体をどう動かそうとしても無理だった。


後少しでやられるって時に、急にその剣圧をすり抜けて、子供の前に立った。これにはびっくり。自分でもびっくりしたけど、表情は驚きもせずに、次の段階に入っている。


「私が、これから、裁判の間に貴様を送る。後は、自分で道を決めろ」

「待て!」

「救う話なら無理だ。自分のことは、自分でしか救うことが出来ない。ああは言ったが、人に救ってもらうようじゃ、貴様もまだまだ子供だ。自分のことは、自分で救え」


子供の言葉を切り捨てるように遮ると、子供の頭上に自分の手を掲げた。僕は、本当はそんな切り捨てるような言葉は言いたくなかった。でも、何だか言ってしまったんだ。


人生は一つの物語。その展開を変えていけるのは自分だけ。だから、自分で救えって言ったのかな?でも、もう少しマシな言い方があると思うんだけどな。


そんなことを思っていると、その子が、段々と光の中に消えて行くのに気がついた。本当に、裁判の間とやらにこの子を連れて行けるのか不安だった。でも、僕は止めない。


「おい、お前はそれで幸せなのか?」


急にそう聞かれた。僕はうなずく。その子は少し穏やかな顔になったと思ったら、消えてしまった。


「あのさ、最後の方、自分の意思じゃなかったけど、あれでよかったのかな?」

《ああ、あの子供も満足そうな顔だっただろう。さぁ、次はとうとう冥道霊閃との対面だ。気合を入れていけよ》


「わかってるって」


天華乱爪に言われて、僕は、最後に、子供の消えた方を見て微笑してから最後の門をくぐった。


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