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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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足をくじいた姫と、何だかおかしな王子様

「あっ、あのさ、伊織君は、シンデレラって嫌い?」

「なんだよ、急に」

「すっ、好きかな~って思って・・・・」

「お前は好きなのか?」


「うっ、うん・・・・一度でもいいから、シンデレラになってみたいなって思ったことはあったよ」


「その夢は叶ったのか?」

「ううん。あっ、でも、気にしないで。昔のことだからさ」

「そうか・・・・」


伊織君はそこで黙ってしまって、私はどうしようと思う。確かに、男の子相手にシンデレラの話はないかなって思ったけど、とっさに、シンデレラの話が出て来てしまったんだ。


それに、シンデレラに憧れてるってことは、今でも変わらない。子供っぽいって思われるから、誰にも言ってないけど、シンデレラみたいになりたいなって思ったことは、少なくない。今でも、たまに思ってしまう。


「あっ、あのさ、さっき話してたダンスが苦手な人って・・・・」

「似てる」


「え?」


「あいつに、お前は似てる。まぁ、落ち着きがないのは似てないけどな」

「え・・・・」


私は、どう反応したらいいのかわからずに、それだけ言って、うつむいてしまう。確かに、伊織君みたいな人から見れば、私は落ち着いてない人かもしれない・・・・。


「あっ、あのさ、伊織君は、落ち着きのない女の子って、嫌い?」


私は、最初の間は恥ずかしくてずっと下を向いていたけど、伊織君が一向に話し出そうとしない為、おずおずと顔を上にあげた。その途端、伊織君と目が合って、私は慌てて下を向く。しかし、それがいけなかったみたいで、慣れないヒールを履いていた足を捻って、私はバランスを崩した。


そして、その時、伊織君と手を繋いでるような状態だから、伊織君も巻き添えになって・・・・。


「あっ、あの・・・・ごめんね!大丈夫?」

「まあ・・・・何とかな」


伊織君はため息混じりにそう言うと、立ち上がった。その表情は怒ってる様子がないけど、伊織君は結構なポーカーフェイスだと思うから、もしかしたら怒ってるかもしれない。


「ほっ、本当にごめんね・・・・」

「別にいい。それより、お前の方は大丈夫なのか?」

「うっ、うん・・・・。ちょっと、足をくじいちゃっただけだから・・・・」

「仕方ない。ダンスはここまでだ」


そう言う伊織君の表情が何だか少し悲しそうに見えて、もしかしたら、もう少し踊りたかったのかなと思って、私は慌てて首を振った。


「大丈夫だよ!だから、もう少しだけ踊ろうよ?」

「・・・・無理はダメだ。俺のせいで怪我をさせたのに、これ以上無理はさせられない」


「大丈夫!本当に大丈夫だから!私、もう少し伊織君と踊りたいんだ。・・・・足を踏まれまくって、これ以上踊りたくないって言うなら諦めるけど・・・・」


これが本心だった。こんな機会、この先ないかもしれない。だから、今、この瞬間を、少しでも長く過ごしたかった。だから・・・・。

「・・・・足を踏まれるぐらいは大した問題じゃない。ただ、無理して踊って、もし酷くなったらどうするつもりだ?」


「・・・・」


「俺は、お前に痛い思いをさせたくない。だから、今日はもう踊るのはやめよう。踊りたいって言ってくれて嬉しかったけど」


「・・・・嬉しかったの?」


まさかの発言に、私は思わず聞き返す。そんなことを言ってもらえるとは思わなかったのだ。


「・・・・知らん」

「え?」


「知らない!俺は何も言ってないからな」


「え??」

「・・・・とりあえず、もう帰ろう」


伊織君はそう言うと、さっさと歩いて行ってしまう為、私はそれを慌てて追いかけようとするけれど、足をくじいていたことを忘れて走ってしまい、派手に転んだ。その拍子にヒールが脱げて、伊織君の方に飛んで行ったかと思ったら、ぶつかった。


それを見た時、どうしようかと思った。だって、伊織君は後ろを向いてるから、表情が読めなかったんだ。だから、伊織君がどんな表情をしているのかが、とても気になったのだ。


そんな私の思いが伝わったかのように、私の靴を持ったまま、伊織君が振り返る。その表情は怒っている様子がなくて、私は物凄くホッとした。


「大丈夫か?」

「うっ、うん・・・・伊織君の方は?」

「俺は大丈夫だ。・・・・どうして転んだんだよ?」

「伊織君が先に行っちゃうから、置いて行かれると思って・・・・」


私がうつむきながらそう言うと、伊織君は無言で私に近寄って来たかと思ったら、私の前にヒールを置いて立ち上がると、私の手を取って立ち上がらせる。


「姫、どうぞ私に摑まって下さい」

「えっ、え??」

「私に捕まれば、バランスを崩すことはないでしょう」


私は、そう返して来る伊織君に、「そう言う意味じゃなくて!」と内心ツッコミを入れた。私が問い返したのは、どうして急にそんな口調で言ったのかってことなのに・・・・。


そうは思うけれど、私は、つい、伊織君の言葉に甘える。だって、ヒールが脱げた方の足は、くじいていない方の足だったんだもん。


「あっ、ありがとうございます、王子様」


私がそう言うと、伊織君は少し意外そうな表情をしたけれど、小さくうなずいた。


「それでは参りましょう、姫」

「はっ、はい」


私は何とかそう言うと、伊織君の腕に摑まって歩き出す。さっき転んだせいで、余計酷くなってしまって、本当は歩くのも辛かったんだ。だけど、これ以上伊織君には心配をかけられないから、何とか歩く。


「残念ながら、私は馬を持っておりません。しかし、姫の為なら、我が身を馬に変えることすら惜しくない」


「そっ、そんな・・・・あっ、あの・・・・私は・・・・」


自然と、私も、台本に書かれたお姫様のような言葉遣いになってしまう。それにしても、どうして伊織君は、急にこんなことを言い出したんだろう・・・・。


「どうぞ、私にお乗り下さい。白馬を乗っていない私にはこれぐらいのことしか出来ませんので」


伊織君はそう言いながら膝をつく為、私はどうしようかとオロオロしていたけれど、素直にその好意に甘えることにする。


「・・・・と言うことで、こんな感じでどうだ?」

「え??」

「シンデレラ気分は味わえたのか?」


伊織君に聞かれて、私は慌ててうなずいた。そして、凄く驚く。もしかして、私がシンデレラに憧れてることがわかってあんなことを・・・・?


「もしかして、私の気持ちがわかったの?」

「・・・・自分で、シンデレラになってみたいって言ってただろ?」

「うっ、うん・・・・」


「だからだ」

「どっ、どうして?」

「・・・・詫びだ。怪我をさせてしまったことの」


「そっ、そうだったんだ・・・・」

「とりあえず、もう帰ろう。いい加減、帰らないと両親が心配するだろうからな」

「もっ、もう寝ちゃってると思うけど・・・・」


「・・・・シンデレラの魔法が解けたら嫌だからな。俺は、魔法が解ける前に、お前を家に連れて行く」


伊織君の言葉に、私は少しだけ微笑んだけれど、直ぐに首を振って笑みを消す。伊織君に見られたら、怒られちゃうかもしれないからだ。


「それじゃあ、よろしくお願いします」

「ああ」


伊織君はそううなずくと、私を背負ったままダンスホールを出て、そのまま廊下を歩き出した。


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