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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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シンデレラになりたい、ダンスのド下手な女の子

「あのさ、さっきの話しなんだけど・・・・」

「・・・・嘘だよ」

「え?何が?」


「だから、さっきの、魔界のシンデレラのことだ。魔界には、シンデレラと言う話自体ない」


「そっ、そうなの?」

「ああ」

「でも、なんで嘘ついたの?」

「・・・・いいだろ、別に」


伊織君はそう言うとそっぽを向いてしまった為、私は、必死に足元を見る。何とか足を踏まないように努力する。・・・・って言うか、伊織君、ダンスが踊れないって言ってたのに・・・・凄くスムーズに動いてる・・・・。


「ダンス、踊れないんじゃなかったの?」

「嘘だ」


「え?」


「踊れる。でも、あそこじゃ踊りたくなかったから、踊れないって嘘をついた」

「そっ、そうだったんだ・・・・」


私は、何だか騙されてばっかりだなと思いながらも、こうやって伊織君と踊ってるんだし、これ以上幸せなことはないだろうなって思って、この幸せな瞬間を噛み締める。


それに、よく考えてみれば、私、今、伊織君と手繋いでるんだ・・・・。そう考えた途端、急に集中力がなくなり、私は、伊織君の足を踏んでしまった。


「ごっ、ごめんね!」

「・・・・よくあることだ」

「そっ、そうなんだ・・・・」


伊織君の言葉に、少しだけがっかりする。確かに、伊織君はこんなにかっこいいんだから、私以外にも、沢山の子と踊ってるんだろうなって思った。だけど、そうは思っても、やっぱり、がっかりしちゃうのは変わらない。


「まぁ、三人目だけどな」

「?」

「一緒に踊った奴のことだ。お前で三人目」


そう言われて、がっかりしていた気持ちが急上昇する。まさか、三人目に選ばれるなんて・・・・。っと、そう喜んでいると、またまた、伊織君の足を踏んでしまった。


「おい、そんなに踏むな」

「ごっ、ごめん・・・・」

「次に踏んだら、記録を更新するぞ」

「え?」


「魔界のやつらは、みんなダンスが出来るんだ。でも、俺の幼馴染にダンスがド下手な奴がいてな、そいつが俺の足を踏みまくったんだ」


「・・・・どれぐらい?」

「・・・・二十七回」


伊織君の言葉に、私はさすがに絶句した。そんなに足を踏んでしまうなんて・・・・よっぽどダンスが下手な人なんだろうなって思う。


「・・・・もしかして、その幼馴染って、栞奈さんのこと?」

「栞奈のこと、知ってるのか?」

「あっ、うん。神羅さんから聞いて・・・・」


私が言うと、伊織君は少しだけ顔をしかめて舌打ちしたけど、直ぐに真顔に戻った。


「栞奈のことじゃない。あいつもそんなに上手じゃないが、あいつに比べれば可愛いもんだ」

「そうなんだ・・・・でっ、でも、私、二十七回も踏まないよ!」


私はそう言った直後、再び伊織君の足を踏んでしまった。私は、どうしようとオロオロするけれど、伊織君はため息をついただけで怒ってないみたいなので、かなりホッとする。


「言ってるそばから踏んでるぞ」

「う・・・・」

「普通はそんなもんだ」

「許してくれる?」


「ダンスがド下手ってことはなんとなく想像がついてて、それでいて約束をしたんだからな。それなりの覚悟は出来てる」


「でっ、出来るだけ足は踏まないようにするからさ」


私はそれだけ言うと、下を向いて足元を見る。伊織君の足を踏まないように、踏まないように・・・・。


「・・・・不器用な奴だな」

「・・・・そうなの?」

「知らん」


伊織君はそれだけ言うと、またまたそっぽを向いてしまった。私は、機嫌を損ねちゃったかなと思いながら、何とか足を踏まないように気をつける。


・・・・しばらくの沈黙が流れる。と言っても、音楽は流れてるから、完全に、音がない状態じゃないんだけど、私達の会話は途絶える。


「・・・・なんだか、変な気分だ」

「大丈夫?」

「ああ。体調が悪い訳じゃない。ただ、変な気分なんだ」

「・・・・」


私は、自分といるから変な気分になっちゃったのかなと思って、どうにかしてこの場の空気を明るくしようとする。


「あっ、あのさ、伊織君は、シンデレラって嫌い?」

「なんだよ、急に」

「すっ、好きかな~って思って・・・・」

「お前は好きなのか?」


「うっ、うん・・・・一度でもいいから、シンデレラになってみたいなって思ったことはあったよ」


「その夢はかなったのか?」

「ううん。あっ、でも、気にしないで。昔のことだからさ」

「そうか・・・・」


伊織君はそこで黙ってしまって、私はどうしようと思う。確かに、男の子相手にシンデレラの話はないかなって思ったけど、とっさに、シンデレラの話が出て来てしまったんだ。


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