二人の幼馴染
「なんで、俺が聖夜の家に行かなくちゃいけないんだ・・・・。それに、どうして、この女を連れて・・・・」
ぶつくさと文句を言いながら、聖夜の家へと歩みを進める。聖夜が何を考えてそんなめんどくさいことを言ったのかわからないが、何だかいい予感はしない。しかし、言われたとおりにしないと聖夜が怒りそうな為、仕方なく向かっているのだ。
「ん・・・・」
後ろから、小さな声が聞こえて、後ろを振り向く。すると、女が目を覚ましたようで、何だか寝ぼけたような表情をしている。
「起きたか」
「え!?」
俺がそう声をかけると、女は驚いた表情をした後、自分がどんな状況なのかを把握して、かなり慌てた表情になる。
「あっ、あの・・・・」
「なんだよ?」
「えっ、えっと・・・・」
「ん?」
女はそこまで言うが、その先を話さず、真っ赤になりながら首を振った。俺は、不思議な気持ちになりながらも、本人が気にするなと言うなら気にしないことにする。
それにしてもだ。もう、こいつは目を覚ましたんだし、俺がわざわざ背負う必要もないだろうなと思って、声をかけようと後ろを向く。しかし、なぜか女は目を瞑っていた。それを見て、眠ってしまったんだなと俺は思った。
しかし、人に背負ってもらっていて、よく眠れるものだなと思う。普通なら、緊張したり、落ち着かなかったりして、絶対眠れないはずだ。
そもそも俺は、親父にこうやって負ぶってもらった記憶がない。だから、唯一安心出来る親に負ぶってもらったことがないから、そう言うことで得られる安心感と言うものを知らない。
だから、小さい頃は、親と一緒に遊んでいる奴や、負ぶってもらっている奴等が羨ましいと思うことがあった。親父も、そんな俺の視線に気づいてか、たまに、謝って来ることがあった。そして、遊ぼうと言ってくることがあった。しかし俺は、それを断っていた。その時点で、既に、俺と親父の間には隔たりが出来ていて、素直になれなかったのかもしれない。本当は、遊んでもらいたいと思っているのに、なぜか、断ってしまう自分がいたのだ。
でもまぁ、俺には、栞奈やあいつがいたから、特に寂しいと感じることもなかった。あいつらは、俺と違って、ちゃんと家に両親がいたが、家に親のいない俺に気づかってか、毎日のように遊びに来てくれたしな。おかげで俺は、寂しい思いをしないで済んだんだ。だから、あいつらには凄く感謝をしている。
まぁ・・・・栞奈の場合、トラウマも多かったけどな。遊園地のトラウマだって、栞奈のせいと言っても過言ではない。その他、栞奈のせいでトラウマになったことは多々ある。しかし、救われたことの方が多い為、こうやってつきあっていたのだ。そうじゃなかったら、今頃縁を切ってるだろう。
・・・・まぁ、話がずれてしまったが、要は、人の背中で眠ることの出来るこの女の神経が理解出来ないと言うことだ。
そんなことを思いながら、人通りの少ない夜道を歩く。と言うのは、俺がこの道を選んだのだ。なぜかと言うと、こいつを負ぶさっている状態だから、その姿をあまり人に見られたくないのだ。だから、人通りの少ない通りを選んで歩いている訳だ。
そんなことを思いながら歩いていると、いつの間にか聖夜の家の前についており、とりあえず、インターホンを押す。すると、誰かの声が聞こえた。と思ったら、目の前にあるでかい門が開いて、俺は思わず立ち竦む。
と言うのも、聖夜に連れられてここに来た時は、裏側の、こんな派手な門じゃない方向から来たのだ。その為、事実上、この門が開くのを初めて見た為、立ち竦んでしまったのだ。自分でも情けないと思うものの、これだけでかい門が、勝手に開くなんて凄いな・・・・などと、凛が考えるようなことを考えてしまったのだ。
「どうなさいましたか?」
「あっ、いや、なんでもないんだ・・・・」
いつの間にか、開いた門の横に立っていた男に言われて、俺は慌てて首を振ると、聖夜の家の敷地内に足を踏み入れる。
「聖夜様から話しは伺っております。私がご案内いたしますので、私の後をついて来て下さい」
「話ってなんだよ?」
俺がそう何度聞いても、その男は口を割ろうとせず、俺を、どこかの部屋の前まで連れて来ると、そのまま無言で礼をして、どこかへと行ってしまった。
一人取り残された俺は、これからどうすればいいのかとわからずにオロオロしていると、向こうの方から聖夜が走って来て、少しだけ安心する。
「悪かったな、急に僕の家に来てもらって」
「別にいい。ただ、ここはどこだ?俺に何をさせるつもりだ?」
「ふむ・・・・とりあえず、着替えようか」
「は?」
「友美のことは僕が見ておくから、修は、つきあたりの部屋にある服に着替えてきてくれ」
「おい、まだ俺にコスプレをさせる気か?」
「コスプレって言うな!その服を着る前に来ていたあの服だ」
「どうして、またあの服を着なくちゃいけないんだ?それに、俺のもとの服はどこだよ?」
「大丈夫だ。修の服ならちゃんとあるから、今は、とりあえず、それに着替えてきてくれ」
「はぁ・・・・」
俺は、まだ、私服に戻れないのかと思ってため息をついたが、聖夜がここまで言うのは、もしかしたら何かがあるのかもしれないと思って、嫌々ながら、服を着替えることにした。