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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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シンデレラは、王子に連れられ宙を歩く

「起きて」

「?」


私は、上から声をかけられて、ゆっくりと目を明ける。いつから眠っていたのかわからないけれど、ここは、私の家の中じゃないってことはわかった。だって、何だか肌寒いんだもの。


首をかしげながら辺りを見渡した時、自分がどこか高いところにいることに気づいて、慌てて飛び起きる。そして、自分がどこかの家の屋根の上にいると気づいて、血の気が引いていくのがわかった。


「慌てなくていい」

「誰?」


後ろから聞こえた声に慌てて振り返ると、そこには・・・・。


「エンジェル?」

「そう」

「どうして?それに、どうして私はここにいるのよ?」


私が問い詰めて聞くと、エンジェルは肩を竦めたかと思ったら、私の手を取った。


「なっ、何!?」

「あなたがとても可愛かったので、誘拐させていただきました」


そう言って微笑むエンジェルの顔には、片方だけ仮面がついている。だから、どんな人なのかはわからないけど、凄くかっこいいことはわかった。それに、案外若いかもしれない。

・・・・そうじゃないわ!どうして私は、エンジェルに誘拐されるような・・・・。


「可愛い訳ないじゃない」

「なんでそう思うの?」


エンジェルに言われて、私は黙り込む。自分ではあまり自覚してないけど、可愛いねって言われることは多々ある。男の子から告白されることもよくある。でも、私が一番好きな人は・・・・。


「可愛くないから可愛くないの!」


「なんで、そんなに意地張って可愛くないって言い続けるんだい?君は凄く可愛いと思うよ。それに、スタイルだって抜群だしさ」


「はぁ・・・・。あんたに褒められたって、嬉しくない!」


私は、せっかくエンジェルが褒めてくれたと言うのに、そんな風なことを言ってしまった。嬉しくないことはない。スタイルがいいって言われたりするのはとても嬉しい。でも、やっぱり、本当に言って欲しい人に言ってもらえない。


みんなそうだ。髪の毛とか、体、服とか、そう言うもの、全て、あいつが好きだって言うのを目指した。ロングが好きだって聞いたら髪の毛を伸ばして、ショートが好きだって言ったら髪の毛を切って。水色の服が好きだって言ったら、水色の服をメインに着たり。胸だって、もともとそこまで大きい方じゃなかったけど、大きいのが好きだって聞いたから、胸を大きくする努力をした。


そんな風に、私は色々やって来たわけだけど・・・・。あいつは気づかない。いつも、私が髪の毛を切ったりしても、気づいてくれもしない。


ある意味、どんなに頑張っても無駄なのかもしれないなって最近思い始めた。私は、こんな性格だから、言葉で好意を伝えることが出来ない。だから、出来るだけ行動で現そうとしてるんだけど、本人は全く気づいてないみたいだ。


「もしかして、僕の他に、褒めてもらいたい相手がいるとか?」

「!?」

「だけど、その相手は気づいてくれない。そうでしょ?」

「・・・・」


どうしてエンジェルは、私の気持ちがこんなにわかるんだろうと不思議に思いながらも、とりあえずはうなずく。


「全く、馬鹿だねぇ、その男は。こんなに可愛い子が自分の為に一生懸命努力してくれてるのに気づかないなんて。サイテーだね」


「・・・・別に、今に始まったことじゃないから」

「そうなの!?」


「うん。だって、私が髪の毛とか切っても気づいてくれないし、気づいても、イメチェンだとしか思ってくれないし・・・・。昔っから鈍感なんだよ、あいつ・・・・」


「ほぉ~、鈍感ね。確かに、話を聞いてる分には凄く鈍感そうな男だな~。でも、どうして君は、そんな彼のことをずっと好きでいられるんだい?」


「・・・・」


確かに、エンジェルの言う通りだ。どうして私は、いつまでも、あいつのことが好きなんだろう・・・・。考えたこともなかった。それが当たり前だったから・・・・。


「しっ、知らないわよ!それが当たり前みたいになってたから・・・・」

「ほぉ~、当たり前ねぇ。その子は幸せ者だね、ほんと」


「なっ、何で?」


「だって、君みたいな可愛い子にずっと好きでいてもらえて」

「・・・・あっそ」


私は、かなり恥ずかしくなって、それだけ言うと、エンジェルから視線を逸らす。この人は、随分と恥ずかしいことを平気で言う人だ。恥ずかしくないのかな?


「よしっ、それじゃあそろそろ帰りましょうか」

「え?どこに?」

「君の家だよ。僕が誘拐して来たんだ。連れて帰るのは僕の役目だろ?」


「誘拐って・・・・身代金要求とかじゃない訳?」

「当たり前じゃないか。僕は、君と話したかっただけ」


「そっ、それじゃあ、どうして誘拐なんてしてきたのよ?」

「君の家じゃ、二人きりになれないだろ?」

「・・・・」


私は、やっぱり顔が赤くなる。私の顔を赤くすることを楽しんでるんじゃないかって思うほど、エンジェルはそう言う言葉ばかり言う。


「ふっ、二人きりじゃなくたっていいじゃない!それとも、二人きりじゃないといけない理由がある訳?」

「だって、妹さんがいたんじゃ、こう言う話してくれないでしょ?」


こればっかりは、納得せざる終えない。だって、エンジェルの言っていることは事実なんだもん。


「だから、俺は、わざわざ誘拐して来たんだ」

「今、俺って・・・・」


私が聞き返すと、エンジェルは少し慌てた様子を見せたけど、直ぐに首を振った。


「聞き間違いだよ」

「そんなことない。確かに聞いたもん!」


「まぁ、とりあえず帰ろう。もう直ぐ十二時だし、君もそろそろ寝る時間だろ?」


「・・・・なんで、両親が心配するとかって言わないの?」

「そっ、それは・・・・」


エンジェルがとてもまずそうに顔を曇らせる。何だか、怪しい気がする。


「シンデレラの魔法が解けるのは十二時だ。それ以内に、君を家へ連れて行かないと。シンデレラは何時までも王子様といられないんだからね」


「・・・・私は別に、十二時を過ぎても変わらないわ」

「まあまあ。それではお姫様、参りましょうか」


そう言ってエンジェルが手を差し出して来る為、私はその手に自分の手を重ねる。すると、エンジェルは私の手を握ったかと思ったら、屋根を駆け下りる。当然、私はエンジェルに手を摑まれてる状態だから・・・・。


「ちょっ、ちょっと!私を殺す気!?」

「大丈夫」

「何が大丈夫なのよ!」

「こう言うことだよ」


そう言われた直後、私はびっくりし過ぎて、倒れるかと思った。だって、体が宙に浮かんでいたんだもん。


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