言葉のキャッチボールが出来ると言うのは、とても嬉しいこと
「まっ、待って!」
「あそこまで熱弁を振るう訳を教えてくれるか?」
「・・・・うっ、うん」
「そうか。じゃあ、話してくれ」
「・・・・すっ、好きなの!聖夜君のことが!」
私はそう大きな声で言った後、恥ずかしくて、しばらくの間は前を向けなかった。どうしよう・・・・。言っちゃった・・・・。感情が高ぶって、つい言ってしまったよ・・・・。
私は、目だけでチラッと聖夜君の方を向くと、聖夜君は、怒ってる訳でもなければ、嬉しそうでもないし、ただ、無表情だった。それが怖くて、私はどうしようと慌てる。
もう・・・・やだ!こんなんじゃ、お姉ちゃんのことをどうこう言えないよ・・・・。
「そうだったのか。お前は僕のことが好きだったのか」
「・・・・」
「変な奴だな」
「え!?」
何だか、聖夜君と話してると、こう言う風に、変だとか馬鹿だとか、貶されることが多いと思う。どうして聖夜君のことを好きになる私は変な奴なの?いいじゃない!別に!!
「どっ、どうして私が変な奴って言われなくちゃいけないの?」
「だって、僕は、人を傷つけることしか出来ない人間だ。それなのに、お前は僕のことが好きだと言った。変わってるだろ」
「聖夜君は、傷つけることしか出来ない人間なんかじゃないよ!さっきだって、勇気を出して、私に謝ってくれたじゃん!それが出来るなら、傷つけるだけの酷い人間じゃないよ!」
私の言葉に、今まで、少しも変わらなかった聖夜君の表情が、少しだけ変わる。だけど、直ぐにまた無表情になったかと思ったら、私の方にスタスタと歩いて来て、何をされるんだろうと思ってドキドキしていると、聖夜君は、そのまま私の横を通り過ぎて歩いて行く。
「どっ、どこ行くの!?」
「どこって、お前の家だよ」
「え?」
「機嫌はあんまりよくないけど、送ってやる」
「てっ、転校は?」
「さあな。ほら、帰るぞ」
聖夜君はそう言うと、呆然と立っている私の手を取って、引っ張って行く。聖夜君本人はそこまで気にしてないみたいだけど、これは、手を繋いでいると言うものと同じことだ。そう考えると、私はまともに前を向いて歩くことも出来なかった。
気がついたら私の家の前に来ていて、よく、転ばないで歩いてこられたなってしみじみ思う。そして、もしかしたら、聖夜君が、気を回してくれたのかなって思った。
「さて、着いたぞ。ここがお前の家だ」
「うっ、うん、ありがとう」
「・・・・」
「・・・・どうしたの?」
「今度、僕の家に遊びに来るか?」
「え!?」
想像もしてなかった言葉に私は驚くけど、とても嬉しかった。でも、あまりに嬉しすぎたせいか、体が思ってもいないことを聞く。
「なんで?」
「お前は僕のことを好きと言ってくれたのに、僕は、お前のことが嫌いだった。それじゃあ、あまりにも可哀相だから、好きになるように努力する為だ」
その言葉を聞いて、聞かなければよかったなと思った。この言葉で、嬉しさで満たされていた私の心が複雑な感じに混ざって行く。やっぱり、聖夜君は私のことが嫌いだったんだ・・・・って。
「まぁ、理由はどうでもいい。僕が、少し興味を持ったからだ」
「わっ、私に?」
「そうだ。今まで、僕のことを優しいと言った奴は一人もいなかったからな、お前と言う奴がどんな奴なのか見極めたくなった。だから、今度、僕の家に来てくれ」
「うっ、うん・・・・」
私は、何とかうなずく。聖夜君が私のことを嫌っていたってことを知ったけど、興味を持ってくれていると言うことを知れたんだ。今の私は、幸せな気持ちだ。
「・・・・家に入らないのか?」
「え?」
「家の前だ。早く家に入ったらどうだ?」
「あっ、うん・・・・」
私は、慌ててうなずくと、家の中へ入る扉を開ける。だけど、後ろにいる聖夜君のことが気になって、家の中に入れない。
「どうした?」
「聖夜君は帰らないの?」
「お前が家の中に入ったら帰る」
「家に送ってくれるだけでもよかったのに・・・・」
「また、堕天使にさらわれたら大変だからな」
「・・・・ありがとう」
私が小さな声でそう言うと、聖夜君は下を向いたかと思ったら、フイッとそっぽを向いてしまった。
「とにかく、早く帰ってくれ!僕は、早く家に帰って、あいつらのことを見届けなくちゃいけないんだから!」
「うん、わかった。・・・・おやすみなさい」
私はそう言って扉をしめた。扉が閉まる直前、聖夜君が、「おやすみ」って言葉を返してくれたことが物凄く嬉しかった。
今日は、色々と怖い思いをした一日だったけど、最後の最後でこんな気持ちになれたのなら、幸せな一日だなと考えていいだろうと思って、ウキウキした気分のまま寝ることにした。