普通じゃないようです
「どうした?何か、緊急な出来事でも起こったのか?」
「・・・・まぁね」
「何があったんだよ?」
「実はさ、聖夜君、車の中に閉じ込められちゃったみたいだよ」
「ほんとか?」
「僕は嘘を言いません!」
「・・・・そうか。予想以上に早くパレードが始まったのか」
「そうそう。音、聞こえるでしょ?それで、これからどうしようかってことを話し合おうと思って・・・・」
「ふむ・・・・。じゃないぞ!俺達は着ぐるみを着てる状態なんだ!早く行かないと!」
「あっ、そうだったね」
俺の言葉に水斗が慌てた様子でリスの頭を被る為、俺も、たぬきかなんなのか、正直よくわからない着ぐるみの頭を被ると、ウサギの着ぐるみを持つ。
《ちょっと亜修羅君、それじゃあ、ウサギを担いでるみたいじゃないか!》
「仕方ないだろ?それなら、どうやってこの着ぐるみをしまえって言うんだ?」
《うーん、それは、君の得意な頭で考えてよ》
「・・・・」
俺は、水斗のことを蹴ってやろうかと思ったが、想像以上に足が持ち上がらなくて、そのまま転びそうになる。その姿を見て水斗が笑う為、俺が追い掛け回していた時、灰色のTシャツに白いハチマキを巻いた男が走ってきて、「早く準備をしろ」と言った。
その為、俺達はふざけるのをやめると、急いでパレードの最後尾のところまで走って行く。
「で、どうするんだよ?」
《用は、車の中に入れればいいことだから、無理矢理鍵をこじ開けることも可能なんだよね》
「そうなのか?」
《うん。堕天使がこの機械壊しちゃったんだし、僕も、鍵くらいなら壊してもいいかな・・・・って》
「ダメだろ!」
《ちょっ、そんな大声出さなくても聞こえるよ!》
「とにかくだ。そんな目立つ方法じゃなくて、もっと目立たない方法はないのか?」
《うーん・・・・》
水斗はそう言ったまま黙り込む為、俺は仕方なく話しかけるのをやめる。聖夜に言われたんだ。こいつが黙った時は話しかけるなって。だからこれは、俺なりに気を回してやったってことだ。
しかし、何分待っても一行に話しかけて来ない為、仕方なく、俺は、観客に混ざっている神羅に話しかける。
「おい、どうだ?」
《どうだ?って言われても・・・・パレード綺麗ですよ?》
「そうじゃない!お前をどうして観客の中に紛れ込ませたのかわかるか?」
《知らないぜ。だって、仲間はずれだろ?俺》
「そうじゃない。お前には、堕天使を捕まえると言う大事な試練があるんだ。決して、用がないから観客として見てろとは言ってないぞ」
俺がそう言うと、神羅のため息が聞こえて、さすがにこの嘘はバレたかと思った時、さっきよりもテンションが一段階上がった声が返って来た。
《そうだったのか!俺はてっきり、仲間はずれにされてると思ってたんですが・・・・それはよかったです。一人でいじけてて、情けないですね!》
「・・・・あっ、ああ。そうだ。もういじけるな。それで、ちゃんと周りに目を凝らして、堕天使がいるかどうかを確かめろよ」
《わかりました!何かあり次第連絡します!》
神羅はそう言うと、勝手に電源を切ってしまった。俺は、神羅と言う奴が、単純な奴でよかったと心底思った。だって、こんな嘘に騙されてしまうぐらいなんだからな・・・・。
そう思って、少しだけ警戒心が緩んだ時、どこからか視線を感じて、とっさに後ろを振り返る。その時、振り向いた方向から何かが飛んで来るような音がして、俺は慌ててそれを避ける。すると、それは、俺の足があった位置に刺さった。
かなり小さな物で、しかも、かなりのスピードだった為、飛んで来たものが何だったのか、空中では捉えることが出来ず、何が俺に向かって飛んで来たのかを確認する為に地面を見た時、これはただ事ではないなと思った。なぜなら、地面に刺さっていたのは、細い針なのだが、その先には、緑色の毒が塗ってあったのだ。
俺は、慌てて、針の飛んで来た方向を見るが、周りが暗いせいか距離が遠いせいか、どこにもそれらしき人物は見当たらない。
相手が誰なのかわからないが、観客を殺そうとしてる訳ではなさそうだ。なぜなら、確実に、俺一人を殺せるようにしてあったのだ。と言うことは、妖怪関連の奴か?
俺がそう思った時、今度は水斗の方にも何かが飛んで来て、俺は、急いで水斗の足を踏む。すると、水斗が痛がって足を上げたところに、さっきと同じ針が刺さった。
《ちょっと!一体どう言うこと!?》
「静かにしろ。お前の足元をよく見てみろ」
《・・・・これは、毒だね》
「ああ。俺がお前の足を踏んでなかったら、お前はあの針に当たって死んでたぞ」
《あれま。恐ろしい毒を飛ばすのね》
「ふざけるな!これ、お前のせいだろ?」
《ふーむ、僕、恨みを飼うようなことはしてないし、暗殺されるほどの恨みを買うようなこともしてないし・・・・君じゃない?》
「・・・・確かに、俺の可能性の方が高いかもな」
《それじゃ、被害者は僕じゃないか!》
水斗がそう怒った時、今度は銃声が聞こえて来て、パレードに使われている車のタイヤの一つを打ち抜いた。そのせいで車が凄い音を立てる。そして、どこからか射撃されたとわかったのか、楽しそうにパレードを見ていた観客が悲鳴を上げる。それに追い討ちをかけるかのように、銃声が響いて、タイヤを打ち抜いていく。
「伏せろ!!」
水斗の声で、みんなが一斉に伏せる。多分、観客に撃って来る様子はない。だから、とりあえず、観客は安全だが、問題は、俺達と、中に閉じ込められている聖夜達だ。
《おい、水斗。一体何があったんだ?中で、凄い揺れが起こったぞ?》
《何だか知らないけど、どこからか発砲されたんだ。最初は、僕達の方にだけ毒針が飛んで来たんだけど、今度は、パレードの車にまで・・・・》
《・・・・あいつか》
《ん?なんだって?》
《いや、こっちの話だ。多分、観客に被害を与える事はないだろう。ただ、お前達は気をつけていた方がいい》
「なんで?と言うか、話が全く読めないんだけど・・・・」
《くそっ・・・・ここから出る術さえあれば・・・・》
「ちょっとちょっと、どうしたの?聖夜君!」
《お前たちは、何もしないでそこにいればいい。後は、僕がなんとかする。それじゃあ、切るぞ》
「あっ、ちょ・・・・」
聖夜は、撃って来る人物に心当たりがあるらしい。しかし、聖夜は十歳の子供だ。そんな聖夜が、どんな恨みを買うと言うのだろうか?
《何だかわからないけど、こんな風に狙われてるのは、聖夜君みたいだね》
「・・・・どうして、あいつがこんなに恨まれてるんだ?」
《わからない・・・・。彼と出会った時から思ってたけど、もしかしたら、普通の子じゃないのかもね・・・・》
「・・・・」
水斗の言葉に俺は何も答えず、ただ、ため息だけをついた。