本当に、大丈夫でしょうか?
「えーっと、凛君は・・・・あっ、あそこだ」
僕は、明らかにフラフラと歩いている凛君の近くを歩く。本当は、もっと離れた方がいいとは思うんだけど、今にも倒れちゃいそうで、危ないと思ったから、自然と近いところまで来てしまう。
いつもの凛君だったら、僕の存在に絶対気づくであろう距離だ。でも、今は体調が悪いせいか、全くと言っていいほど気づいていない。もしかしたら、歩くことで精一杯なのかもしれないと思って、僕が、出来るだけ注意を払うことにする。僕だったら、こんなことは出来ないと思う。熱でフラフラになりながらも、相手に謝りに行く事なんて・・・・。
だから僕は、凛君は凄いなと思うと同時に、自分も見習いたいと思う。僕なら、せいぜい、電話で謝って、こっちに来てもらってから再び謝るだけだろう。うん、凛君を見習わないと。
「えーっと・・・・なんだっけ?」
「?」
僕は、なぜか独り言を呟いている凛君に首をかしげる。僕達の通ってる道には、僕達以外誰もいないから、僕の存在に気づいていないなら、独り言ってことになるんだけどなぁ・・・・。
「お正月はクリスマスの先で、初日の出はお正月の前?それで、元旦がクリスマスの後で、母の日がクリスマスの前」
僕は、更に意味がわからなくなって来る。なんのことについて凛君が考えているのかわからないし、そもそも、間違っている部分が多々ある気がする。元々、結構不思議な発言をすることが多いけど、ここまで不思議な発言をされたのは初めてだ。やっぱり、相当熱があるのかもしれない。
「それから、パズルは五千ピースの友達は百人で、取り得はゼロの友達は十人・・・・」
僕は、やっぱり、何のことを言っているのかわからなかった。だって、最初、友達は百人だったのに、いつの間にか九十人も減ってしまって・・・・。いやいや、そこは考えるべき点じゃないよね?
僕がそんなことを思いながらうなずいていた時、不意に、目の前に影が出来たかと思って首を持ち上げると、凛君が倒れて来て、僕は慌てて受け止める。
だって、そうしないと僕も一緒に倒れちゃうところだったし、何より、そうする為に僕は近くの距離を保っていたんだもん。
「・・・・あれ?桜っちだ。何やってるの?」
「あっ、えっと・・・・ちょっ、ちょっと買い物を・・・・」
「でも、ハンバーグは出来たよ?」
「あっ、明日の朝ご飯の買出しを!」
「こんな夜中に?」
「・・・・はい」
僕がしどろもどろになって言うと、凛君はゆっくりとうなずくと、何とか立ち上がった。
「じゃあ、買い物に行く途中の桜木君、頑張ってくれたまえ!あっ、それから受け止めてくれてどうもね、じゃ!」
凛君はそう言うと、なんとか敬礼のポーズをすると、走り出した。それを見て、僕は慌てて止める。
「凛君、走るのは危険です!ただでさえフラフラしてるんですから!」
「大丈夫だよ~!ほら、もう、バリバリ元気!20%元気だよ!」
「元気のパーセンテージ、さっきよりも下がってるじゃないですか!」
「数字のことは気にしないで!プラス90パーセントで、100になるじゃん!」
「そっ、そうじゃないですよ!100にはなりませんよ!」
「じゃ、バイバイ!!」
「あっ、待って下さい!!」
僕は、なぜか、物凄いスピードで走って行ってしまった凛君を追いかけることにした。
だって、さっきの会話でわかってもらえたと思うように、凛君は物凄く重症なんだもん。だから、追いかけなくちゃ!