やっと、糸口が見えて来ました
「ほらほら、もう直ぐパレードが始まるみたいだぜ!」
「はぁ・・・・」
「おいおい、どうしてそんなにテンションが低いんだよ!三人の居場所がわかったって言うのに!」
「嘘付け。お前はパレードが見たいからここに来たんだろ?」
「いやいや、そうじゃないよ。このパレードの中・・・・詳しくは、パレードに使われる道具の中にいるんだよ」
「そうなのか!?」
「そうそう」
いつの間にか、瑞人の口調から水斗の口調に戻ってしまった水斗に聞く。服が私服の時はいつも瑞人の口調だったから、何だか不自然な気もするが、とりあえずは黙っておく。
「どうしてそう言えるんだ?」
「まずは、『彼女達はそれぞれ別の場所に隠れているが、隠れているものは同じだ』これは、パレードに使う道具に、同じものが三つあるんだけど、その中に彼女達は閉じ込められてるってこと。次に、『彼女達は、時間以内に見つけられなかったら、勝手に救出されることになるだろう』と言うのは、なんて説明すればいいのか難しいけど、その、パレードに使う道具って言うのは、機械みたいなものだね。ほら、よく、走ってるじゃないか」
「・・・・走ってる?」
「その・・・・パレードの主役を乗せて走る車みたいな奴!僕は、名前を知らないけど、きっと、あそこに隠れてると思うんだ。さっき、聖夜君に調べてもらったからね。で、どうして、時間以内に見つけられなかったら、勝手に救出されるかって言うと、もし、パレードをしている最中に機械が故障してしまったら、スタッフの人達は、パレードが終わった後に、必ず点検するでしょ?その時に彼女達は見つけられるようにしてあると思うんだ」
「堕天使が、機械を故障させたって言う保障はどこにあるんだよ?」
「うーん、こればっかりは証拠がないんだけどね、あいつは、人を殺すようなことはしないんだ。でも、僕達に宝石を譲ろうともしない。だから、そんな方法を取ると僕は考えたんだよね」
「そうなのか?」
「そうそう。もし、彼女達を見つけた時、一緒に宝石があったら、普通は警察に届けるだろう?まぁ、悪い奴だったらそのままもらっちゃうかもしれないけど、堕天使が取り返しに来ると思うし」
「ふーん。でも、どうやってあいつらを助けるんだよ?パレードが始まるまで後十分もないし、それに、パレードが終わったら、直ぐにここは閉園時間になるんだぞ?そうしたら俺達は追い出されて、スタッフの奴等に見つけられてしまうぞ?」
俺が言うと、水斗は面白そうに微笑むと、うなずいた。それを見て俺は首を傾げたが、近くにいた神羅がポンと手を叩いて言った。
「パレードの最中に奪還するんだな?」
「イエス!」
「馬鹿かお前は!」
「なんでそんな風に言うんだい?他に手はないよ?」
「でも、今集ってるだけでも大人数なのに、どうやってあいつらを助けるって言うんだよ?」
「そんなの、内部に潜むしかないじゃないか」
「は?」
「パレードに登場するきぐるみに入るんだ!」
「・・・・」
俺が無言でうつむくと、聖夜も同じようにため息をついた。しかし、とても嫌そうではあるが、仕方なさそうに首を振り、俺の肩を叩いて来た。
「仕方ないだろう、修。僕も嫌だけど・・・・」
「聖夜君はきぐるみを着ないよ?」
「そうなのか?!」
「だって、君の身長に合うきぐるみがあると思う?」
水斗に聞かれて、聖夜は素直に首を振った。いつもなら、身長のことを言われると怒るはずだが、今回は怒らなかったってことは、よっぽどきぐるみを着るのが嫌だったみたいだ。まぁ、それは俺も同じことなのだが、この様子だと、それを許してくれることはなさそうだな・・・・。
「よくわかってるね、ツンデレ君」
「・・・・おい」
「ああ、はいはい。伊織修君」
「言い直すぐらいなら、わざわざツンデレ君って言うのはやめろ」
「はぁ・・・・全く、お堅いんだからさ。それじゃあ早速、きぐるみ奪還大作戦に向かうとしますか!」
水斗がそう言って歩き出した時、急に目の前に現れた人物とぶつかって、尻もちをつく。俺達は、水斗の後ろを歩いていたのだが、ギリギリのところで避けて、水斗の巻き添えを食らう事はなかった。要は、水斗一人で転んだと言うことだ。
「いったた・・・・って、兄さんじゃないか!」
水斗の言葉に、俺達は、一斉にぶつかった相手の顔を見る。すると、そこには亜稀がいた。こんなところで何をやってるんだろうか・・・・。
「こんなところで何やってるんだ?」
「え、まぁ・・・・なんて言うか、友達と遊びに来てたんだよ」
「男四人でか?」
亜稀の言葉に、水斗はゆっくりとうなずいた。確かに、男四人で遊園地に行くのはおかしいことではないが、少し不自然に思われるのは仕方ないだろう。特にこいつの場合、普段は女とばっかり遊んでるようだしな。
「べっ、別にいいじゃないか!友達と来たって!」
「まぁ・・・・それを否定するつもりはないけど、珍しいなって思っただけだ」
「まっ、まあね・・・・」
「あんまり遅くまでいて、じいちゃんに心配かけるんじゃないぞ」
亜稀はそれだけ言うと、そのまま人ごみの中に消えて行った。
「・・・・そう言う兄さんだって、遅くまで一人で何やってんだろ?男四人組より不自然じゃない?」
「まぁ、不自然どうこうはどうでもいいだろ?一人で遊園地に来るやつぐらいいるさ」
「そう言われてみればそうかもしれないねぇ・・・・。まぁいいや。とりあえず兄さんのことは放っておいて、僕達はきぐるみ奪還作戦に向かいましょう!」
「・・・・ああ」
俺はため息まじりにうなずくと、なぜか、とても嬉しそうな水斗の後について走り出した。