よくも悪くも正直な彼です
「それにしても、わからないなぁ~」
そう一人で呟きながら、ブラブラと歩く。俺は、有澤瑞人。聖夜や修には散々馬鹿と言われ続けてきたけれど、俺はそう思わない。と言うか、思いたくない。
確かに、テストの点数は低くて花恋には怒られ、玲菜にはため息をつかれることもあるけど、あれでも俺は頑張ってるんだ。まぁ・・・・テストの度の補習や追試は恒例イベントになっている。
でも、別に、それでいいじゃないか!イベントの一つでいいじゃないか!って言ってると、花恋に怒られるから言わないけど、内心ではいっつも思ってる。
でも、聖夜が言うに、俺は、勉強以外のひらめきなどは凄いらしい。だけど馬鹿なんだって。確かに俺は、聖夜と違って学校の勉強も出来る訳じゃないけど、高校の勉強と小学校の勉強は違うはずだ。だって、俺の方が難しいもん。いくら、天才と言われる俺でも難しいんだ。あの学校が無茶をし過ぎなだけだと思う。
だけど、いつもテストで上位をとっている修は、妖怪だから仕方ない。上位と言っても、ほぼ一位と言っても過言じゃない。まだ、転校して来て、大型のテストは一回ぐらいしかやってないけど、小さなテストを合わせると、十回ぐらい一位を取ったことがある。あれは信じられない。
でも、あいつは口を開くと俺を馬鹿にして、性格は悪いと思う。聖夜だけでも傷つくのに、聖夜が修とタッグを組んだから、俺の心はズタぼろだ。でも、その変わり、神羅と言う理解者が現れた。あいつは、俺のことを全面的に擁護してくれる。それがありがたい。あれがなかったら、俺は今頃姿をくらましてる頃だろう。聖夜のいじめに耐え切れなくて。
そもそも、あいつ、俺よりも年下なのに、いつも蹴ってくるんだ。子供だからって見くびってると、痛い目に合うぞって聖夜はよく言うけど、まさにその通りだ。あいつの蹴りは半端なく痛い。涙が出るほど痛いと言うのは恥ずかしいから言わないけど、内心そう思ってる。
でもまぁ、最初に比べれば、少しはマシになって来たと思うから、俺は何も言わない。大分慣れて来たって感じだからな。
まぁ、随分と長く修達に対して文句を言っているけれど、嫌いと言う訳じゃない。ただ、俺を馬鹿にするのは嫌だってことを、遊園地が嫌いってことを長々と語っていた修のように話したと言う訳だ。
さて、冗談はさておき、花恋はどこにいるのだろうと考える。花恋には、いつも迷惑をかけていると思っている。ご飯だって洗濯だって、そう言う家事をやってくれるのは、幼馴染の花恋だ。
そんな花恋に、俺はいつも感謝をしてる。だから、お礼はちゃんと言おうといつも思ってるんだけど、俺が話しかけると、花恋はいつも機嫌が悪そうだから、俺は、話しかけない方がいいのかなと思って、お礼を言わなくなった。俺のことが嫌いみたいだから、出来るだけ口を聞かないようにしてるけど、感謝はしてる。言ってないだけで。
それに俺は、嫌われて当然だと思う。だって、色々心配や迷惑をかけてるんだ。そりゃ嫌われるだろうなと思う。でも、不思議なのは、嫌いなのに、なんで、俺の世話を焼いてくれるのかってことだ。それだけが永遠の謎だ。家事だとか料理だとかは、俺が頼んだんじゃなくて、花恋がやり始めたことなのだ。だから、やめてしまえばいいのにとは思うのだけど、なぜか、やめないみたいだ。
別に、やめて欲しい訳じゃないけど、何だか、変な感じがする。本当は、嫌いじゃないんじゃないか?とかも考えたりはするけど、昔に比べて随分冷たくなったし、俺と幼馴染だって思われることも嫌みたいだし、これはどう考えても嫌われてるって考えるしかないって思う。
それから、俺が女の子といるだけで花恋は不機嫌になる。そこは直した方がいいと思う。だって、別に、俺達は付き合ってる訳じゃないのに、どうしてそうなるんだろうって。俺は別に、普通に遊んでるだけなのに、何がいけないんだろうか?
「うーん」
花恋のことを考えると、本当に難しい。昔は本当に素直な子だったんだけど、一体どうしちゃったんだろうなぁ・・・・。
そう考えて、慌てて首を振る。今は、花恋のことについての俺の考えじゃなくて、花恋がどこにいるのかを探すことが先だよな。
「えーっと、どこだろうなぁ・・・・」
そうつぶやきながら、目の前の地図を見る。俺のいる水の楽園と言う場所では、主に水を使ったアトラクションやショーが多いらしく、色んなところで水の音が聞こえる。
堕天使は、花恋と一緒に宝石を隠してあると言っていた。と言うことは、普通の人に見つかり易いような場所にはいないだろうなと思う。でも、そう考えると、全くわからない。
だって、この遊園地の中は沢山の人がいて、誰にも見られないようにこっそりと人を隠すなんて、難しいんじゃないかと思うんだ。
「難しいなぁ・・・・」
俺がそう呟いて考えていると、頭の上に何かが落ちて来て、何かと思って見てみると、それは、丸められた白い紙で、その中には堕天使からのメッセージが書かれていた。
「無脳な君達にヒントをあげよう。彼女達はそれぞれ別の場所に隠れているが、隠れているものは同じだ・・・・?」
俺は、紙に書かれた言葉を読み返すけれど、全く意味がわからない。それぞれ別の場所に隠れているのに、隠れているものは一緒?矛盾点が多過ぎないか?
そこで俺は、「君達」と言うところに目をつけて、もしかしたら、今頃みんなにもこの紙が配られているのかもしれないと思い、一回、みんなに聞いてみようと思った。