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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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馬鹿だけど、天才?

「・・・・それにしても、わからないよねぇ?」

「何がだ?」


「どうして、わざわざ向こうが決めてきたのか。ほら、助ける人のことだよ。僕が花恋、修が石村さん。で、聖夜君が玲菜でしょ?どうして堕天使は、わざわざそんな風に決めて来たのか。僕が花恋を助けることにはちゃんとした意味があるからわかるんだけど、修と聖夜君の組み合わせを、どうして向こうが決めてきたのか。僕にはさっぱりわからないんだ」


「まぁ、確かに。しかし、それを考えるのは、もう少し後でもいいんじゃないか?今は、タイムリミットのある居場所捜しを優先した方がいいぞ」


「ふむ・・・・聖夜君、何か見つかった?」


「わからない・・・・。ヒントが漠然とし過ぎていて、色んな意味を考慮すると、とんでもない数の場所が存在することになってしまう」


聖夜の言葉に水斗は大きくため息をつくと、今までベラベラとしゃべっていた口を閉じ、真剣な顔をして近くにある椅子に座った。


俺は不思議に思って水斗に話しかけようとするけれど、聖夜に止められ、尚更不思議に思う。


「何で止めるんだ?」


「今、水斗は、色々考えてる時なんだ。だから、邪魔しないでやって欲しい。・・・・実はこいつ、天才なんだよ」


「・・・・はぁ?話が全く話が読めないぞ?」


「どう言うことか説明するのはなかなか難しいんだけど、頭はいいんだ。ただ、テストの点数は悪くて・・・・」


「ん?」


「テストの点数は悪いんだけど、こう言うことを考えたりするのは得意なんだ。だから、しばらくの間、水斗には話しかけないで、そっとしておいてくれないか?」


「まぁ・・・・別にいいが・・・・」

「聖夜君、あのさ、この町の地図ってあるかい?」

「ああ、これだ」


聖夜はそう言うと、水斗に地図を渡して、急いで俺達のもとに走ってくる。別に、そこまで焦る必要はないと思うのだが、一応黙っておく。


「ふむふむ・・・・星と花と水ね・・・・」

「天才なのか?・・・・こいつが?」


「うむ。瑞人は馬鹿だけど、水斗は天才だと思う。まぁ、どの道勉強は苦手みたいだから、あまり、テストの点数は関係ないけどな」


「聖夜は探さなくていいのかよ?」

「うーん、ちょっと飽きて来たからな。水斗に任せるとしよう」

「随分適当だけど、そんなんでいいのか?」


「ああ、問題ない。ある程度は候補を絞り込んだけど、全くわからないからな。こう言う方面は苦手なんだ。だから、こう言う方面に強い水斗に任せようと思ってな」


聖夜はそう言うと、本当に考えることをやめてしまったようで、椅子をクルリと回し、パソコンではなく、俺達の方を向いた。


「そんなこと言ってもよ、やっぱり・・・・」


神羅がそう言いかけた時、突然水斗が勢いよく立ち上がったかと思ったら、聖夜の方に急ぎ足で歩いて行く。


「聖夜君、ちょっといい?」

「なんだ?」

「調べて欲しい場所があるんだ」

「わかった。物凄く小さな場所じゃなければ、きっと調べられるだろう」


「調べて欲しいのはさ、最近出来たばっかりの遊園地、ワンダーランドのことなんだけど・・・・」


「まっ、まぁ、別にいいが・・・・。遊園地にあいつらがいるって言うのか?」


「まだ、確定した訳じゃないけど、僕が思ってることが当てはまれば、多分、ここにいるだろうね」


「・・・・これが、ワンダーランドの詳細地図で、これが、乗り物の詳細。それから・・・・」

「ああ、もう大丈夫。地図だけでいいから」


聖夜は、自分の言葉を遮られて、少々不機嫌そうだが、水斗はその様子に全く気づいていないようで、聖夜から受け取った遊園地の地図を睨むように見ている。


「あれなのかな?なんか、一度考えると、周りが見えなくなるタイプか?」


「・・・・多分な。でもまぁ、聖夜が何も言わないんだ。俺達がどうこう言う問題じゃないだろう」


「まあな・・・・」


俺達が、小声でそんなことを話し合っていた時、何かを確信したかのように、水斗は自信ありげにうなうくと、俺達の方を向いた。


「これでわかった。あの三人が誘拐されたのは、ワンダーランドだ」

「ヒントは、花、星、水じゃないのか?」


「うん。だから、僕も最初、プラネタリウムとか、花時計のある公園とか色々考えてみたんだ。だけど、どれもが時間的には到底無理な話だった」


「時間的?」


「三人が誘拐されたのは、僕達がいなくなった間の三十分。三十分でいける距離を色々と計算してみたんだ。バスで行った場合とかね。そんな色んな可能性を考慮してもその三つが当てはまる場所が見つからないから、更に色々考えてみたんだ。すると、面白い事がわかってね」


水斗はそう言ったかと思ったら、唐突にペンを取り出し、地図を机に広げると、何かを書き始めた。


「まずは、ここに、花時計のある公園があるでしょ?そして、ここにはプラネタリウムがある」


俺は、水斗が何を言いたいのかよくわからないが、とりあえずは地図を見る。今のところ、花時計のある公園と、プラネタリウムのところに、黒いペンで〇が書いてある。ここに何かがあるらしい。


「そして、ここ」


そう言って、水斗は、なぜかイベントホールのところに〇をつけた。それには、思わず首をかしげる。俺の考えが間違えていなければ、水斗はきっと、堕天使から教えてもらったヒントを元に導き出した場所に〇をつけてるんだと思う。それなら、残りは水のはずだから、俺はてっきり、近くにある川に〇をするのかと思ったのだが、水斗の顔には、自信の色が浮かんでおり、間違っていると思わせないほどだ。


「おい、なんでイベントホールなんかに〇をつけるんだよ?普通なら、近くにある川に〇をつけるんじゃないのか?」


「うん。僕も最初はそう思った。でも、いくらなんでも、人間を川のところに捨てておく訳にもいかないでしょ?だから、川から一番近くにある管理小屋を見てみたんだけど、それだと、三十分以内にたどり着けないことがわかってさ。どうしたものかと考えていた時、ふと、イベントホールのことを思い出してね。あそこ、毎月違うイベントが行われてるんだけど、今月は、アクアアート。所謂、水の芸術みたいなことをやってるんだ。だから、そこはどうかなって思って。まぁ、どの道三十分いないにはたどり着けないんだけど、その話は一応置いといて、これら三点を繋ぐように線を引くと、丁度三角形が出来上がるだろ?」


水斗の言葉に、俺達はうなずく。確かに、さっき、水斗が上げていた三つの場所を繋ぐと、地図上には三角形が出来ていた。しかし、それが一体何になると言うのだろうか・・・・。


「で、三角形が出来たものの、ここから先をどうしようってなった時、思い出したんだ。ワンダーランドの中央広場にある床の三角形。あれが、これにそっくりだって。だから、ワンダーランドにいるってわかったんだ」


俺は、水斗の話を聞き終わった後も、何だか、あまりよくわからなかった。要は、ワンダーランドにあいつらはいるってことか?


「でも、堕天使は、それぞれ別の場所にいるって言ってたんだぞ?」


「うん。これはもう、言葉の取り方だよね。修みたいに、別の場所と取る可能性もあれば、僕みたいに、同じ場所にいるけど、閉じ込められてる場所が別って考えことも出来る。修の意見も僕は考えてみたんだけど、ほら、見てみて」


今度は、ワンダーランドのパンフレットみたいなものをどこからか取り出したかと思ったら、テーブルに広げて見せた。


「ほら、ここに、星の島、水の楽園。花の町ってアトラクションがあるでしょ?」

「ああ、そうだな」


「だから、僕は確信した訳ですよ。それに、聖夜君にも頼んで、三人が隠れられる場所があるかちゃんと確認したら、ビンゴ!ってことで。僕はこう考えたけど、どうかな?」


水斗はそう胸を張って言うけれど、今回ばかりはうなずくしかなかった。まず、俺にはこのイベントホールの時点でわからなくなるだろう。例えわかったとしても、遊園地の地面に書いてある模様とそっくりだなんて気づけるはずがない。だから、こいつの観察力と洞察力には驚かされた。天才は、さすがに言い過ぎかもしれないが、凄いことかもしれない。


「多分、それで合ってるんじゃないか?」


「おおっ、修が僕に同調するなんて珍しいね。やっぱり、いつもと服装が違うから、心の作りまでいつもと違うものになってるのかな?」


「無駄なことを言わなければ、凄いと言えるのにな」

「僕は無駄なことを言ってないよ!だから、凄いって褒めて!」

「断固として拒否する!」


「なんで!?」

「嫌だから。それだけだ」


「ちょっ、それって・・・・」

「さぁ、道は開けたぞ。後は、ワンダーランドに向かうだけだな」。

「そうだなぁ、遊園地に行くなんて、ちょっとドキドキものだよな!」


俺達は色々と言い合いながら、ボーッとしている水斗を置いて歩いて行く。すると、後ろの方から水斗の声が聞こえて来たが、構わずに歩き続ける。


「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!」

「お前が遅いのが悪い!」

「ボーッとしてるのが悪い!」

「まぁ~た、僕に冷たくなったね・・・・」


そんな風に小さく呟く水斗の言葉を無視して、俺達は、ワンダーランドへと向かった。


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