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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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思ったとおりでした

「ただいまぁ~」

「遅い!」


水斗は、帰って来てそうそう、不機嫌な聖夜に蹴られている。俺は、そんな水斗には同情せず、ため息をつく。


「ああ。遅い。何分かかってると思うんだ?」


「そんなに責めないでよ・・・・これでも急いで来たんだからさ・・・・。って、君達、そんな格好をしちゃって、一体どうしたんだい?何か心境の変化でもあったの?」


「変装だ。変装。お前の近くにいるだけで、俺達の身にも危険が及ぶかもしれないからな」

「警察に捕まるとか?」

「まぁ、それもそうだ。まぁ、とにかく、変装だ」


「ふ~ん、で、これからどうするんだい?」

「ふむ・・・・実はな、あの三人がいなくなったんだ」

「あの三人って、女の子三人ってことか?」


「ああ。僕はずっとここにいたんだけど、お前達に指示をし終わった後上に行ったら、誰もいなくなってたんだ。だから、もしかしたら、堕天使に誘拐されたのかなって思って・・・・」


聖夜が言うと、水斗は首をかしげて考え込んだが、ゆっくりとうなずいた。


「まぁ・・・・その点は否定出来ないよね。あいつ、物じゃなくて、人間を盗んだりもするし・・・・でも、いつだったかわからないけど、花恋から、家の電話でかかって来たよ?」


「そうなのか!?」

「うん。履歴、見るかい?」


水斗はそう言うと、ポケットからケータイを取り出し、聖夜に渡した。聖夜はそれを受け取ると、うなずいて返した。


「この時間は、僕が誰もいないと確認した後だ。その後は、修達が来て、僕はそのままこっちの部屋に来ていたから、僕達が下に行った後、花恋が水斗の家にいたことになる。でも、僕は家中を探し回ったつもりだったけど、どこにもいなかったぞ?」


「それは、単純に、出かけてたんじゃないかな?」

「うーん、そうだよな。そう考えるのが妥当か・・・・」


「そもそも、みんなで出かけているってことになるかもしれないし・・・・」


「ああ、電話をかけてみればいいのか!水斗、花恋に電話をかけてみてくれ」

「あ、うん」


水斗はうなずくと、花恋に電話をかけるけれど、直ぐに首を振ってケータイを閉じた。


「電話をかけた途端、留守電になっちゃったよ」

「いつもは、そんなことしない方か?」

「うーん、僕がかける時は、毎回三コール以内に出るから、ないかもね」

「ふむ・・・・」


聖夜はうなずくと、しばらくの間黙り込んで何かを考えていた。俺と神羅は、そんな二人の会話には参加せず、ボーッとその話を聞いていた。


「これは、もしかしたら、誘拐された可能性が高いかもしれないぞ」


聖夜がそう呟いた時、水斗のケータイが急に鳴りだして、俺達はかなり驚いたけれど、かかって来た相手を見て、水斗は慌てて電話に出る。


「花恋からだ」


俺達がうなずくと、水斗もうなずき、電話に出る。


「もしもし?」


俺達には、どんな会話をしているのか聞こえなかったが、水斗がそう言った後、顔をしかめたのがわかって、俺達は何を言われたのか気になる。


すると、聖夜が音を立てないように奥に向かって走って行くと、何かのコードみたいなものを持って来て、それを水斗の持っているケータイに差し込むと、俺達には片方だけのイヤホンを渡してくれる。


「これさえあれば、相手がなんと言っているのか聞けるはずだ」

「相変わらず器用なものを作るのが得意だな」


俺がそう言うと、聖夜は嬉しそうな顔をしてうなずくが、直ぐに口の前に人差し指を立てると、「静かに」と言った。


俺は、それにうなずくと、耳に神経を集中させる。


《エンジェルか》


聞こえて来た声は、花恋のものじゃないとわかった。しかし、合成音声を使っているようで、男か女かもわからない。なら、どうして花恋じゃないと言い切れるのかと言うと、花恋は、水斗がエンジェルだってことを知らないし、何より、水斗に電話をかけるのに、わざわざ音声合成を使う必要がないから、そう思ったんだ。


「・・・・それ、誰のことだい?」


《どんなにしらばっくれても私にはわかっている。十時以内に葉月聖夜を見つけられたようだな》


「そう。だから、僕の勝ちだと思うんだ。だから、宝石を返してくれないかな?」


《私は、あくまでも、十時以内に葉月聖夜を見つけられたら、お前達の勝ちと書いたが、『宝石を返す』とは言っていないぞ》


堕天使の言葉に、尚更俺は、こいつのことを殴ってやりたく思った。馬鹿にした挙句、そんな屁理屈を言うなんて・・・・本気で十発殴っても甘いほどの罪だぞ。


「そう言うの、屁理屈って言うんじゃないか?」


《そんなもの、私にはどうでもいい。これから第二ラウンドを始めよう。制限時間は十二時まで。今度は、三人の女達を預かった。それぞれ別の場所にいるから、一人ずつ別れて助けに来るといい》


その言葉を聞いて、もしかしたら、堕天使は、俺と神羅も一緒に堕天使を追いかけていることを知っていたのかも知れないと思った。しかし、いつの間に・・・・。


「宝石は?」


《篠崎花恋は、エンジェル。お前が助けに来い。篠崎花恋を閉じ込めている部屋に宝石は置いておいた。しかし、十二時を過ぎた瞬間、私は宝石を持って行くからな。一秒でも過ぎたらアウトだ》


「ああ、わかった。ものの数分で見つけてあげるよ」

《それから、条件がある》

「内容にもよるけど、納得したら聞くよ」


《残りの二人・・・・石村友美と篠崎玲菜は、それぞれ、伊織修、葉月聖夜が助けろ》


堕天使の思ってもみない提案に、俺はかなり慌てた。なぜって、まさか、堕天使に名前を知られているとは思わなかったし、そもそも、どうして俺が絶対にあの女を助けなくちゃいけないのか・・・・。


「絶対に、そうしなければいけないのか?」

《絶対だ》


堕天使の言葉に、水斗は困ったような表情をしながらこちらを向いたが、聖夜がうなずくと、堕天使に伝える。


「わかった。その条件を呑むことにする」


《それでは、最後に一つ。彼女達の隠れている場所のヒントを教えよう。ヒントは、それぞれ、『花・水・星だ』よく捻って考えてみるといい。では、ゲーム開始だ。君達の健闘を祈っているよ》


堕天使はそれだけ言うと、通話を切ってしまった。水斗はため息をつきながらこちらを振り返ると、ケータイに挿してあるコードを抜くと、聖夜に渡した。


「なんで僕があいつを助けなくちゃいけないのか、全くもって謎だな」

「もしかしたら、聖夜が情報を与えないようにしてるんじゃないのか?」


「・・・・それでも、納得出来ない。あいつは苦手だ」

「でもまぁ、引き受けちゃったんだし、仕方ないよ」


「・・・・そうだな、仕方ない。よしっ、タイムリミットは一時間半か。この町中を探すのにこの時間はキツイから、ある程度候補を絞り込んで行こう」


聖夜の言葉に俺達はうなずくと、堕天使からもらったヒントを元に、地図を広げて考えてみることにした。


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