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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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ある意味可哀相です

「うーん、エンジェルどころか、お兄ちゃん達すら見つからない・・・・」

「玲菜ちゃん、もうそろそろ帰った方が・・・・」


「大丈夫だよ、お姉ちゃんが一緒についててくれるから、私のお姉ちゃんも心配にはならないってば!」


そんなことはないだろうなとは思うけれど、あんまり強く言えずに、私はこうやって、玲菜ちゃんに付き合っているんだ。


だけど、エンジェルは愚か、有澤君も見つからないし、伊織君もいない。みんな、見つからないのだ。


「もしかして、私達、騙されたのかな?」

「え?騙すって、何を?」


「ほら、聖夜君のこと。あんなに大声で言ったのは、私達をそこにおびき寄せる為だったとか・・・・」


私がそう言うと、急に玲菜ちゃんが不機嫌な顔になって首を振ったから、私は慌てて謝る。


「あっ、あの・・・・不機嫌な気持ちにさせちゃったらごめんね!」

「・・・・別に、いいけど・・・・でも、葉月君は絶対そんなことしないもん!」

「うっ、うん。わかってる。だから、あんなこと言ってごめんね」


「・・・・そう思いたいな」

「そっ、そうだよ!そんな風に嘘つくような子じゃないもんね、聖夜君!」

「・・・・」


私は、落ち込んでしまった玲菜ちゃんを元気付けるように言うけど、自分で、言っていることが矛盾してることがわかる。私のせいでこんな風にさせちゃったんだし、どうにかしてあげたいけど・・・・。


私がため息をついて空を見上げた時、白い何かが下に落ちて行くのが見えて、私は、慌てて玲菜ちゃんに話しかける。


「ねぇ、もしかして、今のって、エンジェルじゃない?」

「え!?ほんと!!」


「私の見間違いじゃなかったら、エンジェルだと思うけど・・・・」


「どこにいるの!?」

「えっと・・・・こっちの方に下りて行ったよ」


私が指差すと、今まで落ち込んでいたことが嘘かのように笑顔になると、私の手を引っ張って走り出した。


私はと言うと、未だにドレス姿の為、走るのはかなり辛かった。靴はヒールを履いてるし、ドレスだから、裾がとても長くて、危うく足をひっかけそうになることが多々あった。そんな悪い状況でありながら、私はなぜか、転ばずに走ることが出来た。


これはまさに奇跡だと思いながら、玲菜ちゃんと一緒に身を潜める。


「どっ、どうして身を潜めてるの?」


「だって、『キャー!!』って言ったら、きっと逃げられちゃうと思うから、ここからこうやってエンジェルのことを見るの。地上にいるエンジェルを見るのは、凄く稀なことだからね!」


「そっ、そうなんだ・・・・」


私は、熱心に語る玲菜ちゃんの言葉にうなずきながら、エンジェルの後姿を見る。実際、エンジェルは、どれぐらいの年なのかとか、顔がどんな感じなのかとか、誰にも知られていない。写真に撮られるようなことがないからだ。それに、これは本当のことなのかわからないけど、エンジェルは、片方だけ仮面をつけてるらしい。


でも、私は嘘だと思う。まぁ、そう言える根拠もないんだけど、何となく、誰かが作った噂っぽいなって思ったんだ。


そんなことを思いながらじっとエンジェルの方を見ていた時、私達の視線に気づいたのか、エンジェルがクルッとこっちを振り返った。しかし、私はそれよりも早く、体を屈めたから、何とか見つからなかったけれど、エンジェルは何かを感じたのか、そのままどこかへ飛んで行ってしまった。


「あ~あ、エンジェル、行っちゃった・・・・」

「そうだね・・・・」

「でもさ、エンジェル、かっこよかったね!」

「うん、噂では、仮面をつけてるって言ってたけど、仮面なんてつけてなかったね」


「うん。あれは、芸能界に出てもきっと売れる!私はそう思うなぁ~。ああ~、写真撮っておけばよかったよ~」


「そうだね、かっこよかったもんね」


私は、玲菜ちゃんに同調しながら、必死に考えていた。エンジェルの顔を、どこかで見たような気がしたのだ。でも、影がかっててあんまりよく見えなかったせいか、全くと言っていいほど思い出せない。


「・・・・お姉ちゃん、どうしたの?そんな風に思い切り考え込んじゃって?」

「あっ、ううん。なんでもないよ!でも、エンジェルに会えてよかったね!」


「うん!私、今日はいい夢見られる気がする!」

「そっか、よかった。それじゃあ、そろそろ帰ろうか」


「うん、そうだね。エンジェルも間近で見れた訳だし!お兄ちゃんに言ったら、きっと羨ましがるんだろうなぁ~」


「そうだね。有澤君、エンジェルのファンだもんね」


私達が、そんな風にしゃべりながら立ち上がった時だった。急に後ろから押さえ込まれたかと思ったら、私達は何者かにハンカチで口を塞がれた。


私はびっくりして、慌てて玲菜ちゃんの方を向くけれど、既に玲菜ちゃんは眠ってしまっている状態だった。私は、何とか玲菜ちゃんを助けようとしたけれど、それは気持ちだけで、体は全く動かず、私はそのまま目を閉じた。


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