天才も、ジョークぐらいは言うようです
「この紙に、そのヘッドセットマイクで出来ることが書いてあるから、自分達で読んでくれ。口頭で説明するのは非常にめんどくさいからな」
「あっ、ああ・・・・」
俺は、まだ聖夜から紙をもらっていないのだが、裏側を見ただけで、びっしりと字が書いてあるのが見えて、書くのは愚か、読むことすらも大変だなと思ったほどだ。
「なぁ、聖夜、このマイクの名前ってないのかよ?ヘッドセットマイクって言い難くてよ~」
「これの名前は、『CHI新旧合同型』だ。でも、ちょっと長いから、『CH合同型』と呼んでる」
「大して変わってないじゃんかよ」
「だって、これ以上切り取ってしまうと、訳がわからなくなってしまうんだ。Cとは、発明品の種類のことで、Hは、その中でもどの部類に入るかと分けられていて、Iは、その発明品の番号だからカットしても大丈夫なんだけど、CとHをカットしちゃうと、わからなくなっちゃうんだ。そして、合同型をつけているのは、CHIは、新型と旧型があるんだ。だから、そこの部分をカットして、合同型と言えば、CHIの合同型はこれしかないなとわかり、いいんだ」
俺は、熱心に語る聖夜の話しをうなずきながら聞いているが、正直、よくわからない部分があった。しかし、そこはあえて聞かないことにする。怒られたら面倒だからな。
「まぁ、とりあえず、この紙は渡しておく」
「ああ」
「僕はちょっと、変装道具を取りに行って来るから、その紙でも見て待っててくれ」
聖夜はそう言うと、走って部屋から出て行ってしまった。
「うわぁ~、なんだこれ、こんなに出来るのかよ?」
「・・・・これはもはや、ヘッドセットマイクと言う物の領域を超越してる感じだな」
「うーん、なんか、いろんなのが混ざって変なものって感じだな。凄いけど、近未来の品みたいだ」
「でもまぁ、便利なものは、あるに限るだろ」
「うーん」
俺達がそんなことを話していると、部屋の扉が開き、聖夜が黒い服をズルズル引きずりながら部屋の中に入って来た。
「おいおい、大丈夫か?」
「うるさい!お前達の身長にあわせたら、思いのほか大きくてびっくりしたじゃないか!裾を引きずってるからって文句言うなよ!僕はこれで精一杯だからな!」
「別にいいけどよ・・・・よく、俺達の身長なんて知ってるな」
「当たり前だ。僕は、知り合いの、身長体重全てを把握してる。後、住んでる住所もな」
「なんで知ってるんだよ?」
「身長は、見た感じで。体重も見た感じだ。で、住所は、雰囲気だ」
「・・・・」
聖夜の返しに、俺達は思わず黙り込む。こいつは、感覚で生きているのかと言うぐらい曖昧な答えだ。
身長は見た感じでわかると言うのは、俺も、なんとなくわかる。体重の件は、微妙にわかる。しかし、一番わからない部分がある。
住所の部分だ。その部分だけは、どうしてもわからない。雰囲気で住んでる場所までわかる奴がいたら、そいつは天才とか超人の域を超えていて、もはや怖いぐらいだぞ。
「と言うのは冗談だ」
「冗談なのか・・・・」
俺は、でも、聖夜なら感覚で住所とかわかりそうだなと思っていた自分が恥ずかしくなり、ため息をつく。確かに、いくら聖夜と言えど、超能力者って訳じゃないからな、わかるはずないよな。
「でも、身長体重を目で測るのは本当だ。でも、住所は、自分で調べる」
「それって、やっちゃいけないようなことなんじゃないか?」
「普通はな。でも、僕はいいんだ」
「そんなことないだろ?」
「まぁ、とりあえず、この服に着替えてくれ。せっかく引きずってまで持って来てやったんだ。着ないって言ったらハンガーで叩くからな」
何で脅されなくちゃいけないのかと思いながらも、ハンガーで殴られるのは思いのほか痛い為、さっさと聖夜の持って来た服を着ることにした。