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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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少し、変わって来ましたね

「コーヒーなんか睨んでどうしたんだ?」

「いや・・・・、うむ。なんでもない。いただくぞ」

「ん、ありがたく飲めよ!」


神羅に言われ、聖夜はそっぽを向いたが、神羅は怒らなかった。と言うか、もう、怒る余力すらなくなってしまっているのかもしれない。


聖夜は、なぜだかわからないが、意を決したようにうなずくと、少しだけ飲み、勢いよくコップをテーブルに置いた。


「ん?どうしたよ?」


「・・・・いや、なんでもないんだ。気にしなくてもいいぞ。このままでも飲めるからな!」


慌てて弁解する聖夜の様子を見て、苦くてそのままじゃ飲めないんだなと言うことがわかった。しかし、コーヒーを入れた神羅はと言うと、そんなことには全く気づいておらず、首をかしげてばかりいる。


俺は、聖夜に気づかれないように神羅にそのことを伝えた。すると、ようやく納得したようで、うなずいている。


神羅が出したのは、ブラックのままのコーヒーなのだ。俺は、それが一番いいのだが、子供の聖夜からしてみれば、凄く苦いものだろう。だから、あんな風に躊躇っていたのかもしれない。


しかし、聖夜の性格上、絶対に苦いとは言わないだろう。ましてや、ミルクや砂糖を入れたいとも言いたがらないだろう。だから、ここは、俺達で率先してやることにした。


「神羅、なんでブラックなんて入れて来たんだ。苦くて飲めないじゃないか」


「すみません・・・・めんどくさかったものだから、つい・・・・今、砂糖とミルク入れて来ますね」


そう言って立ち上がる神羅に、小声で「ミルクだけ入れて来い」と言った。砂糖は入れてる振りをすればバレないだろうからな。俺の言葉に、神羅は指で丸を作って返事をした。


「聖夜のも入れて来るな」

「えっ・・・・でも・・・・」


「族長だって苦いって言ってるんだ。だから、お前も苦いと思ったんだけど・・・・どうだ?」


神羅に問いに、聖夜は戸惑っている様子だったが、しばらく待つと、少しだけうなずいた。


「じゃあ、入れてくるぜ」


神羅は、少しだけ嬉しそうに言うと、さっきはあんなに嫌がっていたのに、鼻歌でも歌いそうないきおいでキッチンに向かった。すると、すぐ様聖夜が話しかけてくる。


「修、もしかして、僕の為に演技をしてたんじゃないのか?」

「・・・・どうしてそう思うんだ?」


「だってお前、なんだか様子が変だったからな。確かに、僕にはブラックコーヒーは苦いが、我慢すれば飲めるぞ?」


「お前のことだから、ミルクや砂糖を入れるのは恥ずかしいことだと思って、無理して飲むんじゃないかって思ったからな。別に、恥ずかしいことじゃないぞ。俺だって、お前ぐらいの年の時は、ミルクや砂糖を入れないと飲めなかったし・・・・もしかしたら、コーヒーと言うもの自体飲めなかったかもしれん。だから、無駄に意地を張らない方がいいぞ」


俺がそう言っている間中、聖夜は口を尖らせていたが、俺がしゃべり終わると、観念したようにため息をついた。


「・・・・そうだな。おじい様にも無理はいけないと言われた。修の言うとおりかもしれない」


「そうだ。俺は、お前のじいさんのことは知らないが、その言葉には同意する」

「お前といると、学ぶことばかりだな。先生」

「だから、先生はやめろって言ってるだろ?」


「でも・・・・いろんなことを教えてくれる訳だし、先生と言うのが正しいのではないかと・・・・神羅だって、お前のことを修って呼んでなくて、族長って呼んでるじゃないか!なんで僕は先生って呼んじゃいけないんだ!」


聖夜はなぜか、立ち上がりながら怒鳴った。しかし、慌てて椅子に座ると、ため息をつく。


「どうして神羅はOKで僕がダメなのか、その原因を教えてもらいたい」


「別に、お前がダメって訳じゃないが、神羅の言っている族長って言うのは、もう慣れたものだから、仕方ないって言う感じで、最初は違和感があったぞ」


「じゃあ、僕の先生って言うのも、直に慣れる!」

「・・・・」


俺は、どうして聖夜がここまで「先生」と言う呼び名にこだわるのか全くもってわからないが、とりあえずうなずくことにする。


「そうか!それならよかった!」

「でも、どうして先生って呼び名にそんなにこだわるんだ?」


「ん?特に意味はないぞ。ただ、その呼び名がお前には似合うと思ったからだ。将来先生になれば十分やっていけるぞ!」


「・・・・は?」


俺は、急にテンションの上がってしまった聖夜に戸惑う。なぜ、先生と言う単語でここまでテンションが上がるのか。俺にはよくわからない。だから、話を変えることにした。


「なぁ、お前の発明品って、他にもいろいろあるのか?」

「うん。まあな。いろいろあるぞ」

「見せてくれないか?」


「うん。いいぞ。あっ、じゃあ、ついでに、このヘッドセットマイクで出来るすべてのことを説明しようか?」


「いっ、いや、それはいい・・・・」

「ま、とりあえず、行こう!」

「あっ、おい、置いてくなー!」


後ろから神羅の声が聞こえるが、俺は、聖夜に腕を引かれるまま、地下へと下りて行った。


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