噛みあいませんね・・・・
「・・・・あれ?あの人ごみなんだろう?」
「パレードか何かやってるのかな!」
「ちょっと聞いてみるわ」
篠崎さんはそう言うと、人ごみの最後尾にいる女の人に話しかけている。そして、何回かうなずいた後、女の人にお礼を言って私達のところに戻って来た。
「どうやら、エンジェルを見かけたらしいんだけど・・・・今はどこかに行っちゃったみたい」
「そうなんだ・・・・エンジェル、クリスマスにも人助けをしてるんだね!かっこいい!」
「そうだね!私もそう思うよ!」
「・・・・それにしても、どこに行ったのよ、あいつは。展望台のところに来たのにいないじゃない!」
「うーん、もしかしたら、この沢山の人のせいで、わからなくなっちゃったのかもしれないよ?」
「・・・・」
なぜだか、篠崎さんは不機嫌になってしまって、私はどうしようかとオロオロしていると、玲菜ちゃんが肩を叩いて来て、小声で教えてくれる。
「瑞兄ちゃんのことになるとね、いっつも機嫌悪くなっちゃうの。だから、気にしなくていいんだよ」
「そうなの?」
「うん。いっつもあんな感じだから」
「そっ、そうなんだ・・・・・」
「だからさ、ちょっと遠く行こうよ」
「うっ、うん」
玲菜ちゃんに手を引かれ、少々イライラしている篠崎さんから離れた時、一人の人が空を指差し、「エンジェルがいたぞ!」と言った。
その言葉に、今まで下を向いていた人達が一斉に上を向き、私と玲菜ちゃん、篠崎さんも上を見上げた。
すると、展望台の真横に、エンジェルらしき姿を見つけた。私は、エンジェルのことを初めて見たけれど、凄くかっこいい・・・・予感がする。なぜ、後から予感とつけたのか。それは、正直言ってよく見えないのだ。
私は、目がそこまで悪い方ではないんだけど、エンジェルが結構高い位置にいるから、顔がよく見えないんだ。
エンジェルは、下にいる私達のことを笑うかのように、宙を走り出した。すると、それを追いかけるかのように、大勢の人が押し寄せて来て、私達は慌てて影に隠れる。
「どっ、どうしよう。エンジェルを追いかける?それとも・・・・でも、お兄ちゃん達どこに行ったのかわからないし・・・・」
「・・・・」
私達がそんな風に戸惑っている時、一人の男の人が目の前を早足で歩いて行くのが見えた。
「あれ?亜稀さんだ」
「知ってる人?」
「うん。瑞兄ちゃんの兄弟でね、瑞兄ちゃんより年上なの」
「そうなんだ・・・・。幾つ?」
「うーんと、確か高校二年生だったかな?」
「それにしては随分大人っぽく見えるね」
「うん」
「それよりも、どうして亜稀さんがここにいたのかが問題じゃない?」
篠崎さんに言われて、確かにと思う。でも、そこまで意味はないんじゃないかなって思った。もしかしたら、亜稀さんだってエンジェルのファンなのかもしれないし、色んな可能性が考えられる。
「・・・・とりあえず、家に帰りましょう」
「えっ!?なんで??」
「だって、みんながどこに行ったのかわからない以上、ここにいても仕方ないじゃない?」
「そっ、そうだけどさ・・・・」
「じゃあ、私だけ帰るね」
篠崎さんはそう言うと、本当に一人で帰ってしまった。私は、どうしようかと迷ったけれど、玲菜ちゃんはまだここにいたいみたいなので、一人で残すのも危険だと思って、私もここに残ることにした。