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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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世界で一番綺麗な色

「ねえねえ、せっかくのあったかい肉まんが冷めちゃうぞ?」

「うーん、でも・・・・」


僕がそう言いよどんでいると、ついに女の子が行動を起こした。僕から肉まんを取ると、少しだけ契って、自分で食べたのだ。


「ほら、大丈夫!」

「・・・・ごめんね、ほんと」

「えっ?何が??」


「だって、君は親切でやってくれたことなのに、僕はそんな君の行為を疑って・・・・」

「申し訳ないと思うなら、食べなさい!」

「うっ、うん・・・・・」


これ以上食べないのはいくらなんでも悪いから、僕は、意を決して肉まんを食べた。すると、その女の子は嬉しそうに手を叩いた。


「やった!」

「え?何?」


「君さ、ずっとここにいるでしょ?寒いのに家にも帰らないで。だからさ、家がないのかなって思って何回か声をかけようと思ったんだけど、何だか凄く声をかけづらいし、それなら、何か持って行ってあげようかなと思ってご飯とか置いてても、君、全然食べてくれないんだもん。だから、食べてくれてよかった!」


「あれは、君がしてくれてたことだったんだ!」


「うん、だけどさ、全然食べてくれないし、食べ物がダメなら、毛布を持って行こうかなって思ったけど、毛布も使わないで、近くの家に置いて来ちゃうし・・・・取りに行くの大変だったんだよ?」


「ごめん・・・・毛布の場合、あまりにも綺麗だから、洗濯してたものが飛んできちゃったんだと思って、返しに行ってたんだよ・・・・」


「でもまぁ、ギリギリ間に合ってよかった!後もう少し遅かったら、君、死んじゃってただろうし・・・・」


「そうだね、ほんと、ありがとう」


僕達は、随分と長い間そんなことを話していた。この子は、なんだか不思議な感じがする。妖怪とは違うんだけど、普通の子とは違う気がするんだ。でも、そんなことを女の子本人に言えるはずもなく、僕はそう感じていたことを黙っていた。


それに、話していて凄く楽しい。そう感じたのは、初めて出来た友達以来で、そう言う意味でも、少し普通の子と違うなと思ってた。


「どうしたの?」

「え?いや、なんでもない。どうしたの?」

「だから、君がさ・・・・」

「そう言えばさ、どうして君、僕のことそんなに知ってるの?」


僕がふと不思議に思ったことを聞くと、今まで笑顔だった女の子の表情が変わって、少し困ったような表情をしながら、赤くなった。


「あっ、えっと・・・・そっ、そんな、別に、毎日様子を見てた訳じゃないからね!」

「・・・・毎日様子みてたんだ」

「あっ、えっと・・・・うん。だって、凄く心配だったから・・・・」


「別に、怒るつもりはないよ。ただ、気づかなかったからさ。心配してくれてありがとう」


僕が笑って言うと、女の子は赤くなりながらも笑ってくれた。それを見た時、僕は、人間界に来て初めて幸せだなって思った。


「あっ!」

「ん?何??」

「ちょっとこっち来て!」


急に女の子は立ち上がったかと思ったら、僕の腕を引いて走って行ってしまう為、僕は何事かと思いながらついて行く。


「ここ!」

「ここって、噴水広場?」


「うん、もう直ぐここのイルミネーションが点くんだ!だから、一緒にみたいなって思って!」


「うっ、うん。別にいいけど・・・・走ることはないんじゃない?」


僕がそう言うと、女の子は笑った。多分、そこまで考えてなかったらしい。


いつもだったら、そう言う考えもなしに行動することは嫌いで、そんな行動をした人は好きになれなかった。でもなぜか、この子の場合は、そんな風に思わなかった。


「ホラホラ、もっと近寄って!ちゃんと目に焼き付けるんだよ!」

「うっ、うん・・・・」


正直言って、僕は、このイルミネーションは見飽きてた。だって、僕は毎日、噴水が見える路地にいるのだ。もちろん、噴水が見れるんだからイルミネーションもいつも見える訳で・・・・。だけど、女の子の表情を見て、僕は、その言葉を飲み込んだ。凄く真剣な顔をしてたんだ。


「10,9,8,7,6・・・・」

「それって、何のカウントダウン?」


僕が聞くけれど、その女の子は相当集中しているようで、僕の言葉が聞こえていないようだ。だから、そんなにイルミネーションが見たいんだなって思って、僕は、女の子の邪魔をしないように黙っていた。


「3,2,1・・・・」


女の子がそこまで言った時、急に噴水が光り出したかと思ったら、水に光りが反射して、キラキラと七色に光り出した。それを見て、思わず僕は息を飲んだ。


そのイルミネーションは、今までみて来たものと全く同じだった・・・・はずなのに、なぜか、今まで見た中で、一番澄んでいて綺麗な色をして見えた。


「ねぇ、これ・・・・受け取ってくれる?」

「・・・・これ、何?」


女の子が差し出して来たのは指輪らしいんだけど、何の飾り気もなくて、ただの銀色の輪っかみたいだった。


「一応、指輪。君にもらって欲しかったんだ」

「あっ、ありがとう・・・・」


僕がお礼を言ってその指輪を受け取ると、女の子は嬉しそうに笑った。その顔を見て、受け取ってよかったなって思ったけど、どうして突然こんなものを渡して来たんだろうって言うのは不思議でたまらなかった。


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