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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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空腹と、理性の拒否反応。どちらが強いと思います?

先生は言ってた。「自身を信じれなくなった時。それは、お前にとって死を導く事になるだろう」って。だから、「自分だけは絶対に信じていろ。そうすれば、なんとかなる」って先生は言ってた。


僕は、今まで、一生懸命自分を信じて来たよ。希望も見えない中で。だから、去年までは、こんな寒さの中でも耐えてこれた。


・・・・でも、今年は、自身を疑ってしまった。だから、こんな風になっちゃったんだろうね・・・・。


僕は、ついに目を瞑ると、そのまま横に倒れた。まだ意識はあるから、考えることは出来る。だからこそ辛かった。


今までのことが蘇って来て、自然と涙が出て来る。初めて出来た友達と交わした約束。それも、守れないまま死んじゃうのかなって思ったら、魔界にいる友達に申し訳なくて、何とか謝ろうとした時、体が叩かれているのをほんの少しだけ感じた。


だけど、目が開けられない。自分の目とは思えないぐらい重くて、思い通りにならないんだ。


「・・・・ぶ?」


僅かにだけど、女の子の声が聞こえる。だけど、僕は何も出来なかった。体は動かせないし、目も開かない。だから、その女の子は、僕が死んじゃったと勘違いしたのか、どこかへと走って行ってしまった。


多分、もう帰って来ないだろうと思った。声からして十歳ぐらいの子だったし、今日はクリスマスなのだ。それぐらいの子なら、家族でパーティーをやっているのが普通だろう。


しかし、僕の予想は外れて、僅かにだけど、雪を踏みしめて歩いて来る足音が聞こえたかと思ったら、急に凄く熱いものを体に当てられ、思わず呻く。しかし、その痛さのおかげで、さっきに比べ、大分意識が戻って来て、僕は、うっすらとだけ目を開けられるようになった。


「大丈夫?」

「・・・・」


「痛かった?そんなに熱いものじゃないと思うけど、体が凄く冷たかったから、このままじゃ凍死しちゃうと思って、湯たんぽ持って来たんだけど・・・・」


僕は、正直、湯たんぽぐらいで凍死寸前の人間を救うことは不可能だろうって思ってた。だけど、なぜかわからないけど、湯たんぽをあてられるうちに体が段々温まって来て、さっきまで凍えるほど寒かったのが嘘かのように、体が温かくなった。


おかげで、体も動くようになったし、口も動くようになったので、僕は、その不思議な湯たんぽをくれた女の子にお礼を言う。


「いえいえ、気にしないで!」

「気にしないことは出来ないよ。だって、命を救ってもらった訳だし・・・・」

「そんな硬いことは言わないで、ね?」


女の子はそう言って僕の隣に座った。それにはかなりびっくりした。だって、地面には雪が降り積もってるからかなり冷たいはずなのに、その女の子は平然とした顔で僕の隣に座ったからだ。


「冷たくないの?」

「まあまあ、大丈夫大丈夫!」

「でも、服を汚しちゃったら、お父さんお母さんが怒るんじゃない?」

「大丈夫だって。あっ、そうだ!これ、食べる?」


そう言って女の子が差し出してくれたのは肉まんで、正直に言うと空腹も凄かったから、ぜひともその肉まんを受け取りたかった。


でも、人のものだし、悪いなと思って断ろうとすると、そんな僕の気持ちがわかったかのように、女の子は肉まんを半分に割ると、僕に差し出して来た。


「私のものだと思って悪いと思うなら、私も半分食べるから、君はそのことを気にしないで食べていいよ!」


「・・・・でも」

「私は、命の恩人なんですよね?」


女の子にそう言われ、僕は仕方なく肉まんを受け取った。でも、食べることを躊躇う。女の子のものだからって言うのを気にするよりは、人からもらったものを軽々しく口にするなって言う先生の教えのせいだと思う。


「・・・・食べないの?」

「えっ、あっ、いや・・・・」


「毒なんて入ってないよ?」


「そっ、そんなこと思わないさ」

「じゃあ、食べて!」


女の子に言われ、僕は、大きく深呼吸をすると、ほんの少しだけかじった。


「それ、食べてるって言わない!」

「僕、小食だから・・・・」


「でも、そんなんじゃ、ネズミさえもおなか一杯にならないよ?」


「・・・・うん」

「私は全部食べたんだからさ、毒なんて入ってないよ!大丈夫!」


女の子は笑顔で言うけど、僕は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。だって、親切に肉まんを分けてくれたと言うのに、僕は、相手のことを疑ってるからだ。でも、教え込まれた体では、どうしようもなかったんだ。


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