近未来製品満載です
「それじゃあ、これからのことを説明するぞ。まずはこれをつけてくれ」
そう言って聖夜が差し出して来たのは普通のヘッドセットマイクのようだが、少しだけ、他のヘッドセットマイクと違うような部分がちらほらあるのがわかる。
「このヘッドセットマイクは普通のものじゃない。僕が独自に開発したものだ」
「ふーん、でも普通のとあんま変わんないぜ?」
「まぁとりあえず、マイク機能のことから説明しよう。とりあえず修、そのままどこも触らないまま、マイクに向かって話しかけてくれ」
「ああ」
俺は、何だかよくわからないけれど、とりあえず、もらったマイクに向かって話しかける。
「おおっ、族長の声聞こえるぞ!」
「俺もだ!」
「どこも触らないでしゃべると、そうやって、みんなに声が届くようになっているんだ。しかし、つまみの部分を回してみてくれ」
「どれくらい回せばいいんだ?」
「動かしてみれば振動が指に伝わるからわかるはずだ」
聖夜に言われて、ヘッドセットマイクの音を聞く部分の縁についているつまみを少しだけ回してみると、聖夜の言うとおり振動が伝わった為、これでいいのかと思ってもう一度話しかけてみる。
「あれ?聞こえないぞ?」
「俺も聞こえないぜ?」
「僕には修の声が聞こえてる。このように、そのつまみ部分を捻るだけで、誰か一人にだけ話しかけることも出来るんだ。わかり易く言うと、ラジオみたいなものか」
「いや、そっちの方がわかりにくいが・・・・」
「まぁ、チャンネルを変えるようなものだと思ってくれ。ちなみに、一番は僕、二番は水斗。三番は修で、四番が神羅となってる。それぞれ話したい相手のチャンネルに各自繋いでくれ」
「ふーん、器用なものだな」
「これぐらいなら、普通に出来る」
「人が褒めてやってるんだからさ、素直に受け止めろよ、な?」
「ふん、関係ない」
聖夜の態度に神羅が腹を立てるが、俺が注意をすると、いじけた様子で後ろを向いてしまった。やっぱり、ここだけ見ても神羅は子供だと思う。
「ここからが、普通のヘッドセットマイクじゃ出来ない部分だ。目を見開いて、よく見るんだぞ」
聖夜がそう言って何かを打ち込むと、突然、右目の前に薄いモニターが現れたかと思ったら、画面が光り、何かが表示された。
「なんだ?これ」
「これはこの町の地図で、丸い点が宝石のありかだ」
「へぇ・・・・凄いな!普通なら、パソコンでしかこう言うのは見れないんじゃないのか?」
「まぁ、そうだ。だけど、この際そんな細かいことはどうでもいいじゃないか。とにかく、僕のパソコンからそっちのヘッドセットマイクに情報を送ることも出来る。だから、もし、何か欲しい情報があったら僕に言ってくれ。可能な限りは答えよう。ちなみに、お前達のヘッドセットマイクにも発信機をつけてあるから、それぞれの居場所を知りたい場合も、僕に言ってくれ」
「ほぉ・・・・お前、天才なんじゃないか?」
神羅が皮肉ではなく、素直にそう言うと、聖夜はかなり嬉しそうな顔をしてうなずいたが、何を思ったか、急に慌てて首を振った。
「そっ、そんなことはない!とにかく、そう言うことだ」
「わかった」
「それじゃあ、早急に向かってくれ。今、お前達にも見えてると思うけど、展望台のところで目標は止まってるんだ。鬼ごっこになるよりも、相手の逃げ道を塞いで行った方が楽だろう?」
「そうだな・・・・んじゃ、俺ちょっと着替えてくるわ!」
水斗はそう言うと、一回俺達のいる部屋から出て行ったが、三秒も経たないうちに帰って来たから、これにはさすがに驚いた。早着替えってレベルじゃないぞ・・・・。
「さぁ、行こうか!」
「お前、着替えるの早いな。驚いたぞ・・・・」
「おおっ、めずらしいね。ツンデレ君が僕を褒めるなんて・・・・」
「お前、ツンデレ君はやめろって言っただろ?」
「あっ、ははは、大丈夫。もう言わないよ。さぁ、堕天使を捕まえに行きますか!」
「って言ったって、お前、どうやって外に出るつもりなんだよ?ここから外に出られる訳でもないだろ?」
「いやいや出られるのさ。でなきゃ、僕が怪盗ってバレちゃうじゃないか」
「どこからでるんだよ?」
俺が聞くと、水斗は、少し自慢げな顔をしながら歩いて行こうとする為、蹴ってやろうかと思ったが、何とかその衝動を堪える。
水斗の後について部屋の奥の方に歩いて行くと、何だか変なものの前にたどり着いた。
「なんだ、これ?」
「まぁ、とりあえず、上にのってみてよ」
水斗に言われ、仕方なく変な形の床の上に立った。すると、急にその床が上に向かって持ち上がって行くのだ。このままじゃ、天井にぶつかってしまうと思った時、面白いことに、天井が動き出して勝手に穴を作り、俺達は天井にぶつからないで済んだ。
天井を抜けると、そのまましばらく進んで行った。後どれぐらいかかるのかと思った時、やっと止まったかと思ったら、今度は後ろに向かって進んで行く為、慌てて飛び降りる。
「ここはどこなんだ?」
「家の裏側だよ。今のは、上下左右自由に動く便利なエレベーターって思ってくれればいいよ」
「ふーん」
「この先を出ると、普通の通りに出られるよ」
水斗の言った通り、扉を開けた先には普通の町が広がっていた。今まで俺達が通って来た通路が無機質だった為、自然と安心する。
「まぁ、無機質な作りは仕方ないよ。ほら、聖夜君がいるあの部屋って言うか、地下全体がそんな作りじゃない?」
「まぁな・・・・」
「それにしても凄いよな、俺、足竦んじまって、もう少し飛び降りるのが遅かったら、そのまま引き戻されると・・・・」
神羅がそう言った時、聖夜の声が聞こえて来た為、神羅が途中で言葉を切る。
《修、外に出れたか?》
「ああ、一応外に出ることは出来た」
《それじゃあ、堕天使を捕まえに行ってくれ。画面には、まだ、宝石の場所を位置づける地図は映ってるか?》
「ああ、大丈夫だ」
《それなら向かってくれ。もし、何か困るようなことがあったら僕に繋げてくれ》
「了解」
「わかった」
「頼りにしてるよ」
それぞれ、聖夜の言葉に返事をすると、堕天使を捕まえる為に噴水広場近くにある展望台に向かった。