気になったら、即行動がいいでしょう。
「えーっと、お兄ちゃんたちは二階の部屋に行ったから・・・・」
「ちょっ、ちょっと待とうよ、ね?」
「ダメ!私、伊織って人見てみたいもん!」
「うーん、でも・・・・」
私は、何とか玲菜ちゃんの足を止めようと必死になるけれど、玲菜ちゃんは一行に止まる様子を見せなくて、私は仕方なく観念することにした。
「どこにいるのかな?」
「多分、話し声が聞こえるのは向こうだから、向こうにみんないるんじゃないかな?」
「・・・・もしかして、葉月君もいるのかな?」
「多分、いるんじゃないかな?聖夜君、伊織君と仲がいいみたいだし・・・・」
私の言葉に、玲菜ちゃんの動きが止まる。私は、これはチャンスだと思って、更に色々言ってみようかと思ったんだけど、急に部屋の扉が開いて神羅さんが出て来たから、かなり驚いた。
「ん?お前らもやるか?」
「えっ、あっ、あの・・・・」
「よしっ、こい!」
私は断ろうとしたんだけど、中に入りたいって気持ちも少しだけあった為、神羅さんに中に入れてもらった時は嬉しかったけど、玲菜ちゃんも一緒に連れて来ちゃったからどうしようかと思った。
現に、急に連れて来られてしまった玲菜ちゃんは、凄く緊張してモジモジしてる。しかも、運がいいのかわからないけど、聖夜君の隣に座ってる。
「なんで二人を連れて来た?」
「ん?悪かったか?」
「悪くはないが・・・・まだ、七並べの途中だぞ?」
「それでも、仲間はずれにするのは可哀相だろ?」
「・・・・せっかく勝てると思ったのに・・・・」
「しかし、やると言っても何をやるんだ?」
伊織君の問いに、神羅さんは何かを必死に考えていた。私は、そっと、隣に座っている伊織君の方を見る。聖夜君は、ゲームを中断されて不機嫌そうだけど、伊織君は、むしろホッとしてる様子だった。それを見て、私もホッとする。
「うーん、じゃあよ、こう言うのはどうだ?まずは、二人一組のペアになってくれ」
神羅さんが言うと、聖夜君が玲菜ちゃんから離れるように動いたけれど、神羅さんが聖夜君の体を摑んで玲菜ちゃんのもとに連れて行く。
「離せ!僕は、修とペアを組むんだ!」
「わがまま言っちゃだめだぜ、修は友美とペア組むんだからよ、お前は玲菜とだ!」
「誰が決めた?」
「俺が決めたんだ」
「そんなこと・・・・」
「そっ、そうですっ!私、葉月君とは・・・・」
玲菜ちゃんが反発した時、神羅さんが玲菜ちゃんの耳元で何かをコソッと言った。すると、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。なんて言ったのかわからないけど、もしかしたら、聖夜君のことについて何か言ったのかもしれない。
「まぁ、とりあえずそう言うことでペアな?で、これからどうするかって言うと、まずは、カード配るから、それぞれ半分ずつ分けてくれ」
「なんでそんなことするんだよ?」
「とりあえず、俺の言うこと聞いてくれって」
「仕方ないな・・・・・」
伊織君は、神羅さんに配られたカードを半分私に渡してくれた。私は、ちょっとドキドキしながらそのカードを受け取ると、一枚一枚のカードがよく見えるように広げた。
「今配ったカードの中で、俺は一枚だけ抜き取った。カードの種類は四枚あるだろ?そのうち一枚を抜くってことは、残りは三枚で、一枚はペアにはならない訳だ。その、残る一枚を、自分達のチームに残さないようにするってことだ。でも、このままだとあまりにも情報が多過ぎて、抜き取ったカードの数字がなんなのか検討もつけない。だから、とりあえず、ペア同士で揃ったカードを捨てるところから始めよう」
何だか複雑そうな遊びだなと思いながら、私はチラッと伊織君の方を向くと、凄い真剣な顔でカードを見ていた。その顔を見て、つい、かっこいいなと思ってしまったのは事実。でも、そう思ってるのがバレないように、急いでカードに目を落とした。
「おい、カード見せろ」
「あっ、うん」
「なんか、複雑そうなゲームだな」
「そっ、そうだね・・・・」
私は何とかそれだけ答えるんだけど、伊織君との距離が近過ぎて気絶しそうだ。ゆっくりと玲菜ちゃんの方を向くと、玲菜ちゃんは聖夜君に背を向けていて、聖夜君がカードを分けてる状態だった。あれだと、ペアって感じじゃないだろうなと思っていながら、今度は神羅さんの方を向くと、有澤君にこのゲームのルールを一から説明していた。でも、有澤君はわからないみたいで、首をかしげてばっかり。
「おい、聞いてるか?」
「あっ、えっ、何?」
「お前の分だ。これ」
「あっ、ありがとう」
私は、震える手で何とかカードを受け取ると、ため息をついた。こんなんじゃ、ゲームどころじゃないなと思いながらも、少しだけ嬉しかった。
「みんな捨て終わったら、ここからが本番だ。シャッフルするカードと、自分の手元に残しておくカードに分けるんだ。シャッフルするカードには、現時点で怪しいなと思っているカードを使うといい。残しておくカードカードには・・・・」
神羅さんがそう言いかけた時、ついにしびれを切らしたのか、聖夜君がカードを床に叩きつけて立ち上がった。
「もう嫌だ!なんなんだ、この複雑なゲームは!訳がわからなくなって来たぞ!」
「そうは言ってもよ・・・・」
「僕は嫌だ!もうやめる!」
聖夜君はそう怒鳴ると、ため息をついて部屋から出て行ってしまった。
「・・・・はぁ、全くよ・・・・」
「仕方ない。あいつは短気だからな。でも、難しいのも事実だ。もっと簡単なゲームはないのか?」
「うーん、俺、あんまり遊んだことないからよ、今の遊びぐらいしか知らないぜ?」
「なんか、悪いな、せっかく遊びを提示してくれたのにな・・・・」
「族長が謝ることはないですよ、それよりも、聖夜のことはいいんですかい?」
「別に、大丈夫だろ?」
伊織君がそう言った時、ドンドンと、凄い勢いで階段を上って来る音がしたかと思ったら、聖夜君が慌てた顔をしてやって来た。
「宝石のありかが摑めたぞ!」
「ほんとか!?」
「ああ。噴水広場の近くにある展望台にあるぞ!」
「よっしゃ、行こうぜ!」
有澤君は、今までのしょんぼりとした雰囲気とは裏腹に、聖夜君の言葉を聞いた途端、水を得た魚のように元気になると、伊織君の肩をポンポンと叩いて、何か合図をした。
「とりあえず、色々と説明をしたいから、修、水斗、神羅は下に下りてきてくれ。友美と・・・・えーっと、お前は、ここにいろ。いいな?」
「えっ、えーっと、うん」
私がうなずくと、聖夜君は満足そうにうなずいた。そして、ついて来るようにとみんなに合図をして、階段を下りて行ってしまった。
有澤君と神羅さんは、その後を追いかけて行ったけど、伊織君だけはそれにはついて行かず、私の方に歩いて来た。
「約束はちゃんと守るつもりだが、もし遅くなったら悪いな」
そう言う風に伊織君は言うけれど、正直言って、私は伊織君がなんのことに対して約束と言っているのかがわからなくて、問いかけてみることにした。
「え?何のこと?」
「・・・・忘れてるならいい」
私の反応が嫌だったのか、伊織君は少し怒ったような顔をして行ってしまった。私は、どうしようと思ったけれど、伊織君の言っていた約束と言うのは、一緒に踊ってくれると言うことだとわかって、申し訳ないことをしたなと思った。
「お姉ちゃんの言ってた伊織さんって、今のかっこいいお兄ちゃんのこと?」
「・・・・うん」
「凄いね!私、水斗お兄ちゃんと並ぶほどかっこいい人みたことないからびっくりしたよ!でも、すごくモテるんじゃない?」
「・・・・うーん、多分」
「だよね、あれだけかっこいいんだもん。お姉ちゃん、がんばってね!」
「うっ、うん、ありがとう!」
「それじゃ、下に下りようか!」
「でも、聖夜君に来るなって言われて・・・・」
「そんなのダメだよ!私、堕天使にあってみたいもん!お兄ちゃんはエンジェルのファンだからさ、堕天使から宝石を奪おうとしてるんだよ!でも、私も堕天使やエンジェルに会いたいし、行こうよ!」
「でも・・・・」
「それじゃあ、私だけ行っちゃうね!」
そう言って階段を下りていこうとする玲菜ちゃんの手を、ギリギリのところで摑む。
「私もやっぱり行きたい!」
「うん。じゃあ、行こう!」
本当はダメってわかってたけど、私も、堕天使やエンジェルに会ってみたいのは事実だから、怒られちゃうかもしれないけど行くっきゃないよね!
私はそう思うと、玲菜ちゃんの後について階段を駆け下りて行った。