大体の子は、ハンバーグが大好きです
「よぉ!」
「あっ、竜さん!ずっといたんですか?この会場に」
「いや、今さっき来たばっかりなんだけどよ、もうそろそろ終わるみたいだな」
「はい」
「一足先に、俺達は帰るか?」
「えっ?」
「いや、意味なんかないんだけどよ、ここにいたいなら、俺は先に帰ってるぜ?」
「いっ、いえ、そう言う訳では・・・・。帰りましょうか」
「じゃあ、帰ろうぜ!」
竜さんはそう言うと、僕の肩を叩いて歩き出す。僕は、それについて行くのが精一杯だった。多分、身長の差だと思う。僕と竜さんは、一応同い年だけど、身長は二十センチぐらい違うだろうし・・・・。
「悪い、速かったか?」
「えっ、あっ、いえ、大丈夫ですよ?」
「そっか、明日夏も宗介とおんなじぐらいの身長だしな、この速さじゃ速いか」
「凛君にも言われたんですか?」
「まあな、昨日のプレゼント配りの時にな」
「そうなんですか・・・・って、プレゼント配りってなんですか?」
「まぁ、そのまんまの意味だよ。昨日、子供達にプレゼントを配って回ったんだ」
「そうなんですか・・・・」
僕は、どうして竜さんがそんなことをしてるのかわからないけど、とりあえずは何も聞かないでおく。
「そう言えば、明日夏には、まだプレゼントやってないよな?なんか欲しいものあるか?」
そう聞かれて、僕は思い切り考える。今のところ、欲しいものはないし、やりたいこともない。今の生活で十分満足してる。逆に、そう聞かれると難しいなぁ・・・・。
「別に、そんなに考え込むんだったら、別にいいんだけどよ」
「あっ、じゃあ、僕、晩ご飯が食べたいです!」
「そう言えば、まだ食ってねぇもんな・・・・。でも、そんなんでいいのかよ?」
「はい!ご飯が食べられるだけで、僕は、とても幸せな気分になるんです」
「じゃあ、明日夏の好きなメニューにしてやるよ」
「じゃあ・・・・ハンバーグがいいです!」
僕がそう言うと、竜さんは苦笑いを浮かべた。どうしてそんな顔をするのか僕にはわからなかった。もしかしたら、ハンバーグが嫌いなのかな?
「いや、別に、俺もハンバーグ嫌いじゃねぇけどよ、みんなハンバーグ好きだなって思っただけだぜ?」
「そうですか!それならよかったです!あっ、でも、食材がないんですよね?」
「ああ、それは大丈夫だ。こっちに来る前に買って来たからよ」
「そうなんですか、それなら、急いで帰りましょ!」
「急に元気になったな、おい」
竜さんに笑われて、僕は、慌ててテンションを引き下げる。確かに、笑われたって仕方ないかもしれない。十五歳の子が、ハンバーグで喜ぶなんて、子供っぽ過ぎるよね・・・・。
「いや別に、いいと思うぜ?俺が笑ったのは、明日夏が子供っぽいからとかって意味じゃねぇし」
「そうなんですか?」
「ああ。ただ、いいなって思っただけだから」
「・・・・いいな?」
「まぁ、そんな難しく考えるなよ。ただ、馬鹿にして笑った訳じゃねぇってことだけわかってくれりゃいいからよ」
「はい・・・・」
何だか腑に落ちないけれど、とりあえずは口を塞ぐ。
外に出ると、雪が降っていることに気づいて、僕は、自然とテンションが上がって来たのを感じた。
「雪ですよ!雪!!」
「ああ、そうだな」
「竜君は、嬉しくないんですか?」
「ん?これでも喜んでるぞ?」
「あっ、そうなんですか・・・・」
「明日夏は、雪が好きなのか?」
「はい、クリスマスに雪が降ってくれるのは嬉しいです。雪自体が好きって言うか、ホワイトクリスマスが好きなだけですね!」
「そうか・・・・。なら、降らせてよかったかもな」
「はい!」
僕は、そう勢いよくうなずいてから、おかしいことに気づいた。
今、竜君、「降ってよかったな」じゃなくて、「降らせてよかったな」って言った?それって、まるで、自分で降らせたみたいな言い方だった。
僕は、ゆっくりと竜さんの方を向くと、竜さんは子供っぽい笑みを浮かべて、走り出した。
「あっ、ちょっと待って下さい!」
慌てて追いかけるけれど、竜さんはかなり足が速くて、家につくまで、竜さんに追いつくことは出来なかった。
「竜さん・・・・速いです・・・・死ぬかと思いました・・・・」
「明日夏もまだまだだなぁ~、ほら、早く家に入るぞ。でなきゃ、晩飯を明日食わなきゃならなくなるぞ」
「あっ、はい・・・・」
僕は、この時にはすっかり雪のことを忘れていて、息を整えながらよろよろと家の中に入った。