やっぱり、子供にはみんな優しいようです
「はぁ・・・・みんな、浮かれ過ぎだっての」
ため息交じりに呟く。凛も明日夏も族長も、みんなしてクリスマスだぁ~!って叫んで楽しんでいる。
「俺は、凛の言葉に色々考えさせられてるって言うのによ・・・・」
再びため息をつく。そうだ。昨日、凛に言われた言葉・・・・。それが忘れられなくて、ずっとこんな感じなのだ。
そんな風にうじうじしている自分が情けなくて嫌になって来るし、凛の言葉も最もな為、自分ひとりでイライラしているのだ。
何度めかのため息をついた時、ふと後ろから気配を感じ、警戒しながら振り返ると、銀髪の妖怪がいた。
「お前は確か、珀って言ったか?」
「・・・・まあな。なんでこんなとこにいんだよ、お前。聖夜のパーティーに行かないのか?」
「あんまり好きじゃないんだ。そう言うの」
「そうなのか、気が合うな。俺も、そう言うパーティーとかゴタゴタしたのが嫌いでよ、水樹達も参加してるみてーだけど、俺はここで待ってることにしたんだ」
「そうか・・・・。お前も、水樹の護衛みたいなものか?」
「なんでだよ」
「だって、いっつも一緒にいるみたいなことを竜が言ってたからさ」
俺が、「竜」と言う言葉を発すると、途端に珀の機嫌が悪くなった。よっぽど仲が悪いと伺える。
「あいつの言葉はな、全部嘘だ。まぁ、水樹といっつもいるのは事実だけどよ」
「それじゃ・・・・全部が嘘とは言えないんじゃないか・・・・」
俺は、ボソッとツッコミをいれたけれど、聞こえないように、ちゃんと配慮はした。だってこいつ、かなり短気で、怒らせるとめんどくさそうだったからよ。
「と言うことはなんだ?今、俺達がいるこの建物の中に、族長達がいるってことか?」
「みたいだな」
「・・・・なぁ、お前、友達っているか?」
俺がゆっくりと聞くと、珀はため息をついた。きっと、皮肉と取ったのかもしれない。
「別に、そんなのいなくていいんだよ。俺は、水樹を友達だと思ってる。それでいい。お前だって、あのモデルみたいな奴と友達なんだろ?なら、それでいいんだ」
「・・・・なるほどな。わかった」
「は?」
「ん?いや、なんでもないぜ、よしっ、ちょっと族長達のところに行ってみるぜ。ありがとな」
「別に、お礼を言われるようなことはしてねーけどよ、とりあえず、どーも」
俺は、不思議そうな顔をしている珀を置いて、建物の中に入ることにした。パーティーとかは好きじゃないけれど、ちょっと、行ってみようかなと言う気になったのだ。
しかし、どこに族長達がいるのかわからなくて、色んな部屋を覗いていた時だった。ある部屋で、物音が聞こえたのだ。
「ん?」
俺は、閉めようとしていたドアを再び開けて、部屋の中を覗き込む。部屋の中は、倉庫か何からしくて明かりがついていない。しかし、確かに物音が聞こえたのだ。
「誰かいるのか?」
俺がそう問いかけると、部屋のどこかで物を蹴るような音が聞こえて、この部屋に誰かがいるのかもしれないと言うことがわかり、部屋の中に入って行くと、金髪の子供が、手と足、それから口を塞がれて転がっていた。俺が慌ててそいつを助けると、そいつは大きくため息をついた。
「ふぅ、助かった。どうして僕の居場所がわかったんだ?堕天使は、僕が隠れている場所は絶対に見つからないって言ってたのに・・・・」
「はぁ?堕天使?意味わからないんだけど・・・・どういうことだよ、それ?」
俺が聞くと、そいつは俺のことをジーッと見て来て、人違いだと思ったのか首を振った。
「すまない、僕はてっきり、修だと思ったから・・・・」
「修って・・・・族長のことか?ってことは、お前は聖夜って言ったっけ?」
「そうだ。よく覚えてたな。それより、どうして僕の居場所がわかったんだよ!」
「えっ、そりゃ、適当に部屋を覗いてたら、物音が聞こえたってことでよ、そんな難しいことはしてねぇよ?」
「そうか・・・・。とりあえず、修達のところに僕を連れてってくれ。勝負に負けちゃうからな」
「・・・・?」
俺は、全く話がわからないから、思い切り首をかしげるけれど、聖夜に思い切り蹴られて、仕方なく立ち上がる。こいつ、中々暴力的だ。そこも、族長そっくりだぜ。
「そう言われてもよ、俺だって、族長のことを探しててお前を見つけたんだぜ?」
「と言うことはなんだ?お前は、修の居場所がわからないってことか?」
「まあな」
「全く、役に立たない奴だな」
聖夜のその一言に、俺は本気でカチンと来た。そして、族長が妙に疲れていた理由がわかった。こいつの生意気ぶりに長い時間付き合ってたんだ。そりゃ、疲れるかもしれない。
「お前、それを言って、族長に殴られなかったか?」
「あいつに殴られたことはない。その変わり、でこピンされたぞ」
「・・・・族長でも、やっぱり子供には優しいんだな」
「うるさい!僕は子供じゃない!いつまでも子供扱いするな!それに、でこピンだって、結構痛いんだぞ!」
そうやってムキになって言い切る聖夜は、まだまだ子供に見える。しかし、本人は子供と言われるのは嫌なのか・・・・。でも、子供は子供だろ?何が嫌なんだ?
「まぁ、お前の無礼な言葉はとりあえずおいといて、どうしてそんなに慌ててるんだよ?」
「これだ!」
聖夜は、いそいそと紙を取り出すと、俺に見せて来た。そこには、「人質は返す。その代わり、宝石は頂いて行く。残念だったな、エンジェル」と書いてあった。
「エンジェルってなんだ?」
「とにかく、修達にこの事態を伝えて、宝石を取り戻してもらわなくちゃいけない!」
「・・・・意味がわからない」
「とりあえず、探しに行くぞ!」
聖夜はそれだけ言うと、子供とはとても思えないほど強力な力で俺を引っ張って行った。