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想造世界  作者: 玲音
第五章 新しい出会い
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幸せを感じるのは中々難しいことです

しばらく待つと、竜君が走って来るのが見えたから、僕は大きく手を振って自分のいる場所を教える。


「おお、ここにいたのか・・・・。でも、なんでこんなところにいんだよ?」

「まぁ・・・・ご想像にお任せしますよ」

「ほうほう、なるほどな・・・・。とりあえず、これ」


そう言って竜君が差し出したのは、あんパンと牛乳。これは!


「そうだぜ、監視するのに必須なアイテムだぜ!」

「竜君、いろいろよくわかってる!」

「おうよ、伊達に心を読める訳じゃねぇぜ!」


竜君の言葉に、今まで高かった僕のテンションが一気に下がる。心が読めるってことは・・・・。


「ねぇ、もしかして、僕の今の気持ち、全部わかるの?」

「まあな。でも、言わないでおいてやるぜ。わかってるけどな!」

「ありがとう!」


僕は、竜君の優しさに感謝しながら、あんパンの袋をあけて、食べ始める。


「それにしてもなぁ・・・・まさか、宗介が栞奈のことが好きだったなんてな・・・・」


僕は、竜君の言葉を聞いて、飲んでいた牛乳を噴き出してしまった。


「うわっ、何やってんだ!?」

「それはこっちの台詞だよ!」


さっきは、竜君へ感謝の気持ちがあったけど、今は逆に、酷いと言う気持ちが渦巻く。


「さっき、それを理解してても言わないでおいてくれるって言うから感謝してたのに!」

「だってよ、俺が言わなくたって、普通はバレるだろうよ」

「でっ、でもさ、そんなんじゃないもん。別に、好きとか、そんなんじゃないもんね!」


「まぁ、そうだろうな」

「・・・・えっ!?」

「あんまり気にすんなって!」


そう言って笑顔で僕の肩を叩く竜君を見て、僕は、からかわれたんだなと言うことを理解した。そうなると、何だか凄く恥ずかしくなってきて、僕はため息をついた。


「おっ、なんだ?怒らねぇのか?」

「そんな気も失せたもんね!」

「いじけんなって!」


「いじけてないもん!それに、感謝もしてないもん!人の気持ちをもて遊ぶなんて最低なことだもん!」


「わっ、悪かったって」


僕が本気で怒ってるのに気づいたのか、竜君が慌てて謝って来る。でも、許してなんかやらないもんね!


僕は、プイッとそっぽを向くと、ため息をついた。そして、竜君に言われたことを考える。


栞奈ちゃんのことは、好きじゃない訳じゃないけど、そう言う好きとは違うと思う。でも、なんでこんな風に思うんだろうな・・・・。もしかしたら、本当は・・・・。


そこまで考えて、やっぱり首を振る。そして、こんな気分を変えたくて、僕は、竜君に話しかけた。


「そう言えば、昨日、『大人になったらみんな苦しむんだ』とか言ってたけど、それって、どう言う意味?」


僕がそう聞くと、竜君はため息をついた。それから、僕の頭をポンポンと叩く。


「・・・・どうしたの?」

「まぁ、色々あるんだな。うん」

「色々?」


「大人になると、自己犠牲をして、自分よりも弱い何かを守る為に働いたりするだろ?嫌なことも嫌と言えないで、自分のことは後回しにして。だから、大人になったら、みんな苦しむって言ったんだ」


「たっ、確かにそうかもね」


「ああ。だから、子供のうちに、精一杯幸せを感じて欲しいんだ。大人になったら、そうやって苦しんで辛い思いをする。それを乗り越える為にも、子供の頃に幸せを感じるのは大事なことだと俺は思うんだ。あっ、でも、お年寄りの人達も幸せになる資格があるぞ!その人達は、自分以外の人の為に精一杯苦労して大人と言う時代を生き抜いて来たんだ。後はもう、頑張らなくていい。精一杯頑張ったんだから、残りの余生は楽しんで暮らす必要があるんだ」


その言葉を聞いて、僕は、ただ呆然と首を縦に振り続けることしか出来なかった。僕にはよくわからないけど・・・・何だか、凄く納得する部分があった。


「あっ、でもさ、竜君、大人のことが嫌いじゃなかったの?それとも、僕の思い違いかな?」


「別に俺は、成人した人全員が嫌いな訳じゃない。『大人』が嫌いなんだ」

「・・・・ん?」


「中々難しいけどよ、なんつーか、俺の中で、悪人=大人って認識なんだ。だから、俺は大人と書いて、あくにんと読む。」


「と言うことは、成人した人全員が嫌いじゃなくて、大人(あくにん)が嫌いってこと?」

「そう。めんどくさいだろうけど、そう言うことだ」


「むっ、難しい・・・・。でも、なんでまた、大人=悪人って言う方程式が出来ちゃったの?大人全員が悪い人だけじゃないでしょ?」


「まあな。自分でもよくわからないんだ・・・・。でもまぁ、周りにいた大人が、みんな悪人だったからそう言う風に感じまったんじゃねぇかな・・・・」


「それってどう言うことなの?」

「まぁ・・・・色々あるんだよ」


竜君はそう言って言葉を濁すと、牛乳を飲み干して、近くにあるゴミ箱の中に入れた。


「そう言えばよ、栞奈のことを見張ってなくていいのかよ?」

「あっ!?」


そう言われて、僕は慌てて栞奈ちゃんの方を向いた。なんだか、上手く話を逸らされた感じがするけど、別にいいよね!


「そうそう。あんまり気にすんな。お前も、幸せになるんだぞ」


竜君はそう言うと、僕の頭をポンポンと叩いた。僕は、少し恥ずかしくなったけど、首を振った。


「僕は、このままで十分幸せだよ!だって、みんな、僕を否定しないで受け入れてくれる。それだけで、僕は幸せなんだから!」


僕がそう言うと、竜君は嬉しそうに笑ってうなずいた。


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