それは、明らかに・・・・
しかし、栞奈ちゃんを見守ると決めたものの、どうしたらいいのかと言う疑問が湧く。それに、そもそも僕は、買い物をする為に外に出て来た訳だから・・・・。
そう考えると、更に迷った。僕が買いに来てるのは、僕が食べたいと言ったハンバーグの材料で、そのうえ、夕飯なのだ。だから、僕が買い物をしないことによって起こる被害に、桜っちや竜君も巻き込まれることになる。それは、あまりよろしいことじゃないのでは・・・・。
「うーん、どうしようかな・・・・」
僕は、ため息をつきながら、噴水広場の近くにある時計を見上げる。時計は八時を指していて、僕のお腹も減って来た。
一番いいのは、亜修羅が早く栞奈ちゃんを迎えに来て、栞奈ちゃんとデートしてくれればいいんだけど・・・・。全く、何やってるんだい!
なんだか、亜修羅を悪者にしちゃった感じだけど、本人もいないし、別にいいよね!
僕は、勝手に自己完結すると、ため息をついた。亜修羅が早く来てくれればなぁ、僕もここでこんな風に栞奈ちゃんを見てなくて済むんだ。そうだよ、亜修羅が早く来てくれれば、僕は栞奈ちゃんのことを心配しないで買い物にいけるんだ!全部亜修羅が悪い!
自分でも、亜修羅に随分可哀相なことをしてるなと、ちょっとだけ思ったけど、そんなの関係ない!だって・・・・。
そこまで考えて、どうして、自分が、栞奈ちゃんのことをここまで心配しているのかが不思議になって来た。
確かに、知り合いの女の子が一人でいるのは危険だと思うことはあるだろうけど、それだけじゃない気がする。それに・・・・。
僕は、自分の胸に手を当てて、心臓の動きを確認してみる。いつもより早く動いていて、なんだか変だ。
僕は、慌てて首を振ると、ある考えを頭から放り投げた。そして、後ろを向く。そして、大きく深呼吸を二、三回した。
そして、もう一度栞奈ちゃんの方を向く。深呼吸をしたおかげか、大分心が穏やかになって来たけれど、ため息をつく。
「全く、亜修羅がいけないんだからね。後で、思いっきり愚痴言ってやるもん」
そう呟いて、僕は再びため息をつく。うん、全部亜修羅が悪い。亜修羅のせいで、僕がおかしくなっちゃったんだ!
そう心の中で叫んでみるものの、何だか空しくなって、ため息をつく。
ゆっくりと栞奈ちゃんの方を見ると、僕の視線に気づいたからか、栞奈ちゃんが僕の方を向いた。僕は、慌ててゴミ箱の陰に隠れる。
ここから噴水広場までの距離は結構あるから、栞奈ちゃんに僕は見えないとは思うけど、自然と体が動いていた。なんだか、変な感じだなぁ・・・・。
ゴミ箱の陰からこっそり栞奈ちゃんの方を見て、こっちを向いてないことがわかると、僕はため息をついて、ゴミ箱の陰から出て来た。
それを見ていたかのように、僕が立ち上がった途端、ケータイが鳴り出したから、僕は心臓が飛び出そうになったけれど、急いで電話に出る。
「もしもし!?」
「どうした?そんなに声を裏返して」
「なんだ・・・・亜修羅か」
「俺で悪かったな」
「じゃないよ!」
「なっ、なんだよ!?」
僕が突然怒ったからかわからないけれど、亜修羅が物凄くうろたえる。亜修羅に怒らなくちゃ、僕がおかしくなっちゃったのは、亜修羅のせいなんだから!
「全く、誰のせいだと思ってるんだい!?」
「・・・・は?」
「『は?』じゃないよ!亜修羅のせいでね、僕は、僕は・・・・!!」
そこまで言いかけて、僕は口を結んだ。
「なんだよ?」
「・・・・」
「おい」
中々しゃべらない僕に、亜修羅がたずねて来る。その声を聞いて、慌てて首を振った。言っちゃダメだ!
「あっ、えっと・・・・なんでもない」
「全く、急に怒鳴り出したかと思ったら、なんなんだ、一体?」
「なんでもないよ、で、どうしたの?」
中々話しを変えてくれない亜修羅に、僕は無理矢理話を変えさせた。あの続きを言わなくてよかった・・・・。なんだか、変なことを言いそうな雰囲気だったもん。
「ああ。お前、今暇か?」
「えっ・・・・」
そう聞かれて、今まで熱かった体の熱が一気に冷めて来る。そうだ、何だか一人で色々考えてるうちに忘れちゃってたけど、買い物に行かなくちゃいけなかったんだ。
「ひっ、暇じゃないよ!僕は、竜君から買い物を頼まれて、出かけてる途中だったんだから!」
「そうなのか・・・・。わかった。忙しいところ、電話して悪かったな」
「ちょっと待って!」
「ん?」
「亜修羅は、今何やってるの?」
「そんなの、関係ないだろ。じゃ」
亜修羅は、なぜか僕の問いに答えないまま電話を切ってしまった。僕は、何だか色々怪しいなとは思うものの、自分一人じゃ真実を摑めそうにないなと思って、僕は、竜君に協力を求めることにした。
「あっ、もしもし、竜君?」
「もしかして、またメモなくしたのか?」
「あっ、えっと・・・・ちょっと色々あって・・・・」
僕がそう言うと、電話越しに、竜君がため息をついたのがわかった。
「お前の言いたいことはわかったぜ。そう言うことなら協力してやるぜ!」
「本当!?」
「ああ、俺は、どこに行けばいいんだ?」
「えっとね、噴水広場の近くにいるからさ」
「噴水広場・・・・?」
「あっ、とっ、とりあえず、早く来てね!」
僕は、不思議そうな声を出した竜君を無視して、無理矢理通話を切った。うん、これで多分大丈夫。少しだけホッとした気持ちになると、栞奈ちゃんの方を向いた。